第1217回2023年2月11日・12日放送
谷足加重
スキーの斜面では、前のめりに体重をかけることが大切だと教わったが、それは人生においても然り。
おさしづ春秋『谷足加重』
春の理を始めたるなれば、静かの心を持ちて、静かの理を始め聞くという。(M23・5・15)
痛いような風の冷たさに、ふと、若い頃に仲間と行ったスキー場を思い出す。私はいつもへっぴり腰で、ついに上手くはならなかったが、はるかな雪原は気が突き抜けるように爽快で楽しかった。
初めてスキーを履いた日、スキーは「谷足加重」が基本だとおそわった。初心者は急な斜面でスピードが出はじめると、つい怖さに腰が引けて斜面の山側に体重がかかる。そうなるとスキーはコントロールを失い、止まることも曲がることもできずに暴走してしまう。
斜面では常に進行方向である谷側の足に体重をかけて前のめりになること、すなわち「谷足加重」によってスキーがコントロールできるのだという。と、いうは易しで、実際にやってみるとどうしても足腰がおじけづいて、〈スキーとは恐怖との闘いである〉と悟ったような断案を下す始末である。
もうスキーに行くことはないだろうが、人生も「谷足加重」が大事だと思う。安きに流されぬよう、しんどいほうにしっかりと体重をかけて、前のめりに生きてこそコントロールを失わずにいられるのだろう。勝ち負けなどではなく、いい人生にするためのコントロールである。
惨たる闘病生活を綴った『病牀六尺』の中で正岡子規は、「悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であった」と記している。
お言葉の「静かの心」とは決して楽々の局面ではないだろうと思う。重心をドンと神様のほうにかけて、急な斜面にさしかかるのである。
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