(天理教の時間)
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第1279回2024年4月26日配信

欲しい愛情のかたち

宇田まゆみ
宇田 まゆみ

文:宇田 まゆみ

第1114回

家族の「記念日」をつくろう!

世間は「〇〇の日」という記念日だらけ。自分だけが心から味わえる〝記念日〟を私たちは持っているだろうか。

神様からの宿題 -家族の『記念日』をつくろう!-
 (「人間いきいき通信」 2001年4月号より)

 
「おまえ、チョコレート何個もらった?」
「誰からもらった?」

毎年2月14日はご存じのように「バレンタインデー」。
女性が好きな男性にチョコレートを贈って、愛の告白をする日だ。毎年この日が近くなると、どこのお菓子売り場もチョコレートが山積みになって大盛況だ。

「本命チョコ」だけでなく、そんなに好きでもない上司や同僚に贈るための「義理チョコ」なるものも手ごろな値段で大売り出し。一カ月後には「ホワイトデー」というチョコのお返しキャンペーンが開催され、たくさんの男の人が店に並ぶのである。お菓子メーカーにしてみれば、この時期だけで年間収益の四割を売り上げる、自社の存亡をかけた闘いだそうだ。

たしかバレンタインデーは、ローマ皇帝から死刑に処されたバレンタイン司教をしのんで、ヨーロッパで始められた記念日だったと思う。当のバレンタインさんにしてみれば、自分のいわば命日に、この日のいわれも知らない日本の男女が、愛を語るならまだしも、「もう、毎年お金がかかって大変!」などとグチっている姿に、さぞかし複雑な心境だろう。

ほかにも最近、いやに「〇〇の日」という記念日が多いような気がして調べてみた。「耳の日」「瞳の日」「歯の日」から、「風邪の日」「頭痛の日」、「天ぷらの日」に「アンパンの日」「煮干しの日」、さらには「爪切りの日」などなど、「いつから決まったの?」と聞きたくなるような名前がめじろ押し。完全に〝早く制定した者勝ち状態〟である。

亡くなった映画評論家の淀川長治さんは、誕生日に友人からお祝いに誘われると、いつもこう断ったという。

「私は自分の誕生日は母と一緒に過ごします。もう亡くなって、そばにはいないけれども、この日一日は母のことだけを想い、母に心から感謝する日にしたいのです」

淀川さんにとって、誕生日は母親とのかけがえのない思い出の記念日だったのだ。

このような心のこもった記念日が人生のなかにたくさんあったら、とても素敵なことだと思う。本当の記念日は外側から与えられるものではなく、自分の心の内側から創り出していかなければ意味がない。

大切なのはカレンダーの日付ではなく、その日が自分の人生のなかで意味することを心でじっくり噛みしめ、味わうことなのだと思う。

できれば一度、家族でわが家の年表をつくって、話し合ってみると面白いかもしれない。結婚、誕生、家族旅行、受験、病気、親しい人との別れなど、家族で経験してきた出来事に、それぞれがいろいろな思いを持って生きてきたはずだ。うれしい思い出も悲しい思い出も全部含めて、いまの家族が成り立っていることを忘れてはならないと思う。

めいめいが自分勝手な考え方にとらわれたり、忙しさにかまけて、たくさんの記念日の積み重ねのなかに生きていることに鈍感になったとき、家族の絆が弱くなっていくのではないだろうか。

「そんな過去のことを振り返っても……」という人もいるが、きちんと正面から過去を見据えられない人に、いまの自分の姿は見えにくいし、これからの未来も開けていくはずはない。過去、現在、未来と三つがそろった時間の流れこそが、私たちの「いのち」そのものなのだから。

人間の本当の生きる喜びは、感謝の心からしか生まれてこないものだ。家族が力を合わせて「感謝の記念日」をたくさん創っていくことが、真実の幸せに向かう道なのだと思う。

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