(天理教の時間)
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第1276回2024年4月5日配信

人生最大のラッキー

目黒和加子先生
目黒 和加子

文:目黒 和加子

第1100回

家族という名の星座

家にも学校にも居場所がないと、孤独感を抱える子供たち。家族が本来の安心感を与える存在になるためには。

神様からの宿題  -家族という名の星座-
 (「人間いきいき通信」2002年1月号より)

私の弟は時々、一人で星を眺めに出かけていく。聞けば、冬に観る星が一番きれいに輝いていて好きだそうだ。特に深深と冷え込んだ夜は、空気がピーンと張りつめて、星たちの光り方が違うそうである。

正直、寒い夜にわざわざ寝袋持参でご苦労なことだと思っていたのが、最近、リバイバルで流行った坂本九さんの「見上げてごらん夜の星を」を聴いて妙に感動して以来、私も時たま、そっと夜空を見上げるようになった。

まぁなんと影響されやすい性格かと、苦笑いしながら観る夜の星々は、形や大小、光の強弱など一つひとつに個性があって、確かに見飽きないものである。特に冬の夜空にはたくさんの一等星が現れて、オリオン座などの星座を美しく輝かせている。

それにしても、一見バラバラに見える星々を見えない線でつないで、さそり座や北斗七星など、ロマンチックな名前をつけた人たちは、素晴らしい感性の持ち主に違いないと、あらためて感心してしまう。

以前、シンナーの吸引や家出を繰り返していた高校生に話を聞いたことがある。
彼は「家でも学校でも、俺には居場所がない。誰からも必要になんかされてないし、かえって邪魔だと思われてるよ」と、よく話していた。

当時放映中の学園もののテレビドラマの話題になったとき、ドラマの中で熱血教師が生徒に向かっていつも口にする「一番星になれ!」というセリフに、「そんなに簡単になれたら苦労しないっちゅうの! 俺はハズレ星なんだよ、先生。それか、ただの星クズかもね」と皮肉りながら寂しそうに笑っていた表情が、いまでも心に残っている。

またある子は、両親はじめ周囲の大人たちの期待を一身に背負い、趣味や友達付き合いも一切犠牲にして勉強に没頭し、一流校に合格したにもかかわらず、不登校と引きこもりの状態になってしまった。

「いつも自分は、いい子でピカピカに光っていなくちゃいけなかった。でも、もう疲れちゃったんです。みんなの期待が重くて苦しい」

「いまは自分の生きてきた意味も、生きている意味も、生きていく意味も分からない。学校に行く行かないの問題じゃないと言っても、誰も分かってくれない。僕の言うことが、まるで宇宙人の言葉のように、みんなが不思議そうな顔をする。それがたまらないんです」

その子の深く傷ついた心が癒やされ、立ち直っていくまでには、長くつらい時間が必要だった。

キラキラ輝く「一等星」のような子でも、自らを「ハズレ星」と名づけて輝きをなくしてしまっている子でも、共に危険なのは、周囲の誰もが気づかないうちに、「自分のことなど誰一人分かってくれない」という孤独感が、その子の内面で徐々に力を増しているときだ。
人が生きていくうえで常に必要なエネルギーは、誰かと自分はしっかりつながっている、いつも見守られているという、心の一番底にある信頼感や安心感なのである。

一つひとつの家族は星座に似ている。たとえ親子、夫婦、兄弟といっても、みな人間としての個性や心の使い方は別々だ。その一見バラバラの個性がつながり合って一つの家族を形作るところに、大きな深い意味がある。

一つの星だけに気を取られずに全体を見つめることで、星座としてのつながりが浮かんで見えてくるように、時には自分の家族も広い視野から眺めてみることが大切だ。

家族の一人ひとりが、互いを結ぶ見えない線を心で感じ取れなくなったとき、その大切な「絆」の存在を強めるべく、神様の思いが何らかの問題としてその家族に現れるのではないかと、最近つくづく感じている。

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