(ラジオ天理教の時間)
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第1216回2023年2月4日・5日

食べ物を通して感じること

岡先生(掲載)
岡 定紀

文:岡 定紀

第1089回

母恋うる詩

親からの深い愛情を受けずに育った里子たち。それでも、「お母さんが嫌い」という子に出会ったことは一度もない。

母恋うる詩

岐阜県在住  吉福 多恵子

毎年5月の第2日曜日は、母の日。今年の母の日も、SNSはカーネーションや紫陽花の鉢植え、きれいにラッピングされたプレゼントの数々や、幸せそうな家族の写真などであふれていました。
幼い字で書かれた辿々しいお手紙には、ほのぼのとした気持ちになりました。子供からお母さんへ感謝を込めてのプレゼント。素敵な習慣ですね。

我が家は里親として、親と一緒に暮らせない子供たちをお預かりして育てています。今年で18年目になりました。これまでに、我が家を居場所として育っていった子供たちは11人います。23日や1週間ぐらいの滞在だった子も含めると、20人ぐらいになるでしょうか。

私はこの子たちに、たくさんのことを学ばせてもらいました。その中の一つが、「お母さんを嫌いな子は一人もいない」という気づきでした。これまでの思い出を集めながら、お話ししたいと思います。

小学二年生で我が家に来たA子ちゃん。確か5月の初め頃でした。
まもなく学校へ通い始めると、「もうすぐ母の日だから、お母さんに手紙を書きましょう」という授業がありました。クラスに里子がいると分かっているのに、今なら少し問題になりそうなものですが、その頃はあまりやかましく言われることもなかったのです。

A子ちゃんは一生懸命書きました。
「お母さん、元気ですか。会いたいです。私を産んでくれてありがとう」。大きな字が躍っていました。

B子ちゃん。この子は小学四年生でした。母親のパートナーから酷い虐待を受けていたと聞きました。教科書もランドセルも捨てられていたので、学校で必要なものを準備してくださいました。ところが、どうしたことか社会の副読本が抜けていたのです。気がついた時は、副読本の授業が始まってすでに3カ月が経っていました。

「今までどうしてたの?」と聞くと、「忘れたと言って、友達に見せてもらっていた」と言います。
「教えてくれたら、もっと早くに準備できたよ。どうして教えてくれなかったの」と聞いても、貝のように口を閉ざして答えようとしません。

B子ちゃんの寝顔を見ながら考えました。
あぁそうか。「お母さんは、これも捨ててしまったのね」と言われたくないんだ。子供ながらに精一杯お母さんを守ろうとした「への字口」だったのかと思うと、涙がこぼれました。

A子ちゃんもB子ちゃんも、決して愛情いっぱいに育てられたわけではありません。運動会や遠足の日でもお母さんは起きてこず、お弁当を作ってはくれませんでした。季節に合った服装を教えてもらったこともなかったので、真冬にノースリーブで登校したこともあり、先生たちをびっくりさせました。空腹に耐えきれず、財布からお金を盗んだのを見つかり、ひと晩犬小屋に寝かされた日もありました。

「何という親だ」と誰もが言うでしょう。
しかし、そんなお母さんが初めて面会に来てくれた日、彼女たちは会えた喜びに涙し、別れる寂しさに涙が止まらないのでした。

切なく、いじらしい彼女たちを前に、新米里親である私は、「子供たちの前で、絶対にお母さんの悪口は言わない」と、頭では理解していたことを、改めて強く心に誓ったことでした。

月日は巡り、最近は委託される子供のほとんどが、中学生、高校生です。母親に対する辛辣な言葉を出す子もいて、想像を超える辛い日々を過ごしてきたのだろうと胸が痛みます。

やがて母親となるであろうこの子たちには、胸に抱く我が子を心から可愛いと思って育てて欲しい。虐待の連鎖を止めるのはあなたたちしかいないんだよと、折に触れ話しています。

先日、ある講演会で素晴らしいお話を聞きました。講師の先生は、娘さんに重度の障害があると分かり、どうしていいか分からなかった時に、恩師からこのような言葉を掛けられたといいます。

「この子には、親孝行をさせてあげないといけないよ。親孝行とは、子供の成長を親が喜ぶこと。『この子は障害があって何もできない』と思うのではなく、『私はこの子のおかげで親にしてもらったんだ』と喜ぶこと。どんな小さな成長でも、親が喜べば、この子は親孝行をしたことになる。親孝行な子に未来が開けないわけがない」。

そうなのですね。先生のお話を聞いて、我が家の里子たちを思いました。この子たちにも親孝行をさせてあげたい。大きく未来を開いてあげたい。そう強く思いました。

実の親との関係がどうであれ、里親である私が、毎日の小さな変化を受け止め、心の声を聞いてあげること。変化が見えない時は、次の成長への準備期間なのだと大らかに構え、じっと待とう。
何より、「あなたを認めているよ」と笑顔を向けてあげよう。ついつい、悪いことにしか目が向かない私自身が変わらなければと感じました。

そういえば、もうすぐ母を偲んで教会で年祭をつとめます。結婚して43年、少しだけ親孝行させてもらえたように思っていましたが、それは母がいつも喜んでくれていたから。お母さん、あなたのおかげだったのですね。
心からの「ありがとう」を込めて、年祭の日を迎えます。

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