(ラジオ天理教の時間)
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第1216回2023年2月4日・5日

食べ物を通して感じること

岡先生(掲載)
岡 定紀

文:岡 定紀

第1132回

吉福家に春がきた

高校二年生の里子が「家を出たい、学校を辞めたい」と。会話も少なくなり、気持ちのすれ違いはあったが…。

吉福家に春がきた

岐阜県在住  吉福 多恵子

 

昨年9月、児童相談所から電話がありました。

「吉福さん、気を悪くしないで聞いてください。里子の実親さんから、『うちの娘が、里親宅でご飯を食べさせてもらっていないと言っているが、どうなっているのか』と問い合わせがありました。吉福さんのお宅のことはよく分かっていますし、そんなことは考えられないのですが、こういう申し出があると、児童相談所としては事実を確認する義務がありますので、申し訳ありませんがお電話させていただきました」

「そうなんですか。びっくりですね。どこからそんな話になったのでしょう。もちろんそんなことは絶対ありませんのでご安心ください」と、納得していただいて電話を切りました。

里親を長く続けていると、こうした思わぬ里子のジャブに合うこともあります。その時はあまり深くも考えなかったのですが、振り返れば、それが今回の騒動の始まりだったのかもしれません。

我が家の里子は高校二年生の女の子。青春真っ盛りです。やりたいことはいっぱいあるし、大人の入り口に差し掛かって色んなことに興味津々。親にしてみると、危なっかしくて心配でたまりません。

特に帰宅時間が遅い日は夜の10時、11時になったり、携帯電話の使い方には頭を悩ませました。注意すればするほど問題行動はエスカレートするばかりで、いつの間にか会話も必要なことを伝える以外ほとんどなくなってしまいました。

児童相談所や関係機関にも手伝ってもらい距離を埋めようとしましたが、なかなか思うようにいきません。実は、私は若いお母さん向けに子育ての講座を開いているのですが、さすがに家の中がこんなことでは講師の資格がないのではと、すっかり自信を失ってしまいました。

一方、その間にも彼女の不満はどんどん膨らんで、この家にはいたくない、どこか他へ移りたいということ、そして、仲の良かった友達とうまくいかなくなったので学校を辞めたい、という二つの問題を訴えてくるようになりました。

どうすればいいか悩みましたが、夫とも話し合い、私たちにとって良い道とは思えないことでも、自分でやってみなければ分からないのだから、彼女の意思を一旦受け入れてみようということになりました。

まずは住むところの問題です。わが家を出て、何にも縛られない一人暮らしに憧れるのはよく分かりますが、年齢からいっても思い通りにはなりません。保証人も必要だし、経済的なことも考えなければなりません。

児童相談所の方が、一人暮らしをすれば一体いくらかかるのかをシュミレーションし、図に書いて一目瞭然にしてくださいました。また、自立支援の施設へも見学に連れて行ってくださり、一人の人間が自由を得るのがどれだけ大変なことかを、本人も感じてくれたようでした。

もう一つ、学校の問題です。今の学校を辞めるとなると、高校卒業の資格を取るためには別の道を探さなければなりません。通信制の高校には、私も一緒に様子を見に行きました。

こうして多くの人たちが心を掛け、動いてくださったことが伝わったのでしょうか、今年の3月も尽きる頃、もう一年この家で頑張ってみること、そして学校は4月にクラス替えもあることだし、それに希望をつないで通い続けることを決意してくれました。

それを本人の口から聞くことができ、私は「長かったなあ。里子と私の200日戦争だった」と、ホッと息をつきました。ところが、親身になって相談に乗ってくださった方に報告したところ、「あぁ、吉福家に春がきた~」と喜んでくださったのです。ハッとしました。

よく、「問題のある子というのは、親に問題を出してくれる子だ」と言われます。里子のここが悪い、あんな生活態度だからうまくいかないんだと指摘するのは、それはそれで間違ってはいないかもしれません。しかし、「彼女の行動に対して、あなたは里親として何を思うのですか?」と、自ら問いかけることを忘れてしまっていたのではないかと反省しました。

天理教では、「世界は鏡」であると教えられます。目に映る様々な出来事は、良いにつけ悪いにつけ、自らの心を映し出している鏡のようなものであるという考え方です。

物事が調子よく進んでいる時はいいのですが、問題は自分にとって都合の悪いことや、腹立たしいことが起こった場合です。そんな時は、自分にもどこか非がなかったかと自らに矢印を向けて考え、気がついたことを改めていく。そうして心を澄ましていく中で、問題解決への光を見出すことができるのです。そもそも、今回の出来事を「戦争」に例えたこと自体、私の心にも非があったのです。

「吉福家に春がきた」

何と素敵な言葉でしょうか。嬉しい言葉をかけてくださり、心から感謝しています。

里子が決意を新たにしてくれた4月、周りを見渡せば、チューリップ、桜、菜の花、ボタンまで、春爛漫の景色が広がっています。私はあらためて「心の矢印を自分に向けることを習慣にする」と、誓いを立てました。

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