第1269回2024年2月16日配信
マリーゴールド
娘の卒園記念にマリーゴールドの株を頂いた。花の知識が全くない私だが、これは何としても枯らすわけにはいかない。
マリーゴールド
奈良県在住 坂口 優子
教会の門を入ると、色とりどりの花が可愛らしく咲いています。私が花を育てることにはまったのは、末娘の保育園の卒園記念で、マリーゴールドの株を頂いたことがきっかけでした。
私は小学校の理科の授業以来、まともに花を育てたことがなく、知識も全くありません。でも、このマリーゴールドは、生後六か月から六歳になるまで、娘を育ててくださった先生方に頂いたものですから、何が何でも枯らすわけにはいかないという気持ちになりました。
最近はとても便利な時代で、知識がなくても、携帯電話で写真を撮って検索すれば、花の名前から育て方まで知ることができます。早速色々と調べて、株を植え替えました。
玄関に並んだ小さな植木鉢はとても可愛くて、ずっと見ていられるほど愛おしくなりました。娘も大喜びで、小さなじょうろで水をあげてくれます。
保育園で先生に教えてもらったのでしょう、「お水はお花じゃなくて、土にあげるねんで」と得意げに言いながら、上手に水をあげている姿を見て、先生方への感謝の思いがあふれてきました。それからは、親子での毎日の水やりの時間が、とても楽しみになったのでした。
しばらくたったある日、友人が私を訪ねてきました。玄関の鉢を見ながら、「花植えたんや。可愛いなあ」と言ったかと思いきや、唐突に「この花、摘んだ方がいいよ」と言うのです。
彼女曰く、「もったいないと思うやろうけど、先に付いた花を摘んでおけば、脇芽が出て株がしっかりするんよ。そうすればこの先、花はなんぼでも咲くから」とのこと。私は彼女の言うとおりに株を育ててみることにしました。
ところが娘は、「え~、せっかく咲いたのに可愛そうやん」と悲しそうな顔。するとその様子を見た伯母が、「摘んだ花は別に生けたらええねん。ほら、これにどうぞ」と言って、生け花に使うオアシスを持ってきてくれたのです。
こうして小さな花を生けて飾ると、廊下や食卓が明るくなり、心が豊かになったようでとても幸せな気持ちになります。前を通りかかる度に、「可愛いねえ」と思わず話しかけてしまいます。
そんな幸せな毎日を送る中、梅雨が明けた頃、マリーゴールドの葉に蜘蛛の糸のようなものがかかっていました。こんな所に蜘蛛がいるのかな?と探してみても見つかりません。するとある日、前の日まで元気だったマリーゴールドが、半日ほどで突然枯れてしまったのです。
私はショックで大慌て。花に関する知識がないので、何が起きているのか分かりません。娘も「え~」と悲鳴をあげ、「ちゃんとお水あげてたし、何でやろう?」と信じられない様子。
ところが、葉をよく見ると白い斑点があるのを発見しました。すぐに携帯で写真を撮って検索すると、「ハダニ」であることが分かりました。ハダニは葉の裏に寄生する害虫で、対策が遅れると大量発生し、植物を枯らしてしまうのです。
大急ぎでハダニの駆除剤を買いにホームセンターへ行ったのですが、店員さんに「その状態なら、もう手遅れかもしれませんね」と言われてしまいました。
それでも諦めたくない。この花だけは、絶対枯らせたくない。娘が大きくなった時、この花を見て保育園の楽しい思い出がよみがえるように。そして私自身、娘にたくさん愛情をかけてくださった先生方へのご恩を忘れないように。ただその一筋の思いで、枯らしてたまるものかと、私のマリーゴールドに向き合う日々が始まりました。
枯れたり傷んでしまった葉に、「ごめんね、ごめんね」と声を掛けながら、丁寧に一枚ずつ切り取っていきました。そして、残ったわずか数枚の葉に駆除剤をかけ、「お願い、元気になって。神様、どうかお願いします」と祈りながら、水と肥料をやりました。
次の日も、また次の日も「おはよう。お願い、がんばって!」と声を掛けながら水やりをしました。娘も横にしゃがんで、「がんばれ!」と応援してくれます。
するとある日、緑色の生き生きとした葉が顔を出したのです。「やったあ!」嬉しくて視界がにじみました。私がそれまで掛けてきた「がんばって」という言葉も、いつしか「ありがとう」へと変わっていきました。やがて、それまでの寂しい姿が嘘のように、傷一つない緑の葉が森のように茂り、オレンジ色のマリーゴールドの花をたくさん咲かせたのです。
天理教では「声は肥」つまり、言葉は肥やしであると聞かせて頂きます。私たちの出す一つ一つの言葉は、周りに良い影響を与えられるということですが、植物に対しても愛情をかけ、言葉をかけ続けたことが栄養分となり、いい結果を生んだのかも知れません。
昨年、そのよみがえったマリーゴールドから取れた種を植えました。可愛い新芽が顔を出すと、「ママ見て!芽出てるで!」と娘も大喜び。すると父が、「それ、ここに植えたらええわ!」と大きなプランターを用意してくれました。
今日も、オレンジ色のマリーゴールドが元気よく咲き、お日様に向かって輝いています。水をたっぷりやるのはもちろん、「おはよう!今日も可愛いね」と、言葉の栄養もたっぷりかける毎日。神様の恵みを頂いて、いつまでも咲き続けてくれますように。
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