(天理教の時間)
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第1279回2024年4月26日配信

欲しい愛情のかたち

宇田まゆみ
宇田 まゆみ

文:宇田 まゆみ

第1168回

未来への旅人

姪が結婚を機に、古民家に移住した。〝皆の心のふるさとに〟との思いでリノベーションするという。

未来への旅人

岐阜県在住  吉福 多恵子

 

昨年6月、教会で和やかな結婚式が挙げられました。花嫁は夫の姉の一人娘、私の姪に当たります。長く海外生活をしていた彼女が、日本に帰ってきて、次のステージを共に歩む伴侶を見つけられたことは、私たち周りの家族にとって本当に嬉しく、心からの祝福を送りたいと思いました。

とは言え、この結婚式が実現するには、ちょっとした紆余曲折がありました。当初、姉からはこんな話を聞いていました。

「結婚式はやらないんだって。88日に二人で富士山に登って、頂上で指輪を交換しようと計画しているみたい。そして、色々と落ち着いてから、世界中にいる二人の友達を招待して、自然の中でみんなでわいわいバーベキューパーティーをしたいって言ってたわ」。

最初に聞いた時はびっくりしましたが、「なるほどー、そんなお祝いの仕方もあるのね」と、今までの固定概念にとらわれない姪たちのアイデアを、それもまた楽しいだろうなと受け止めることができたのは、二人の人柄あってのことでしょう。

しかし、姉が自分の結婚式の写真を姪に見せながら、「式は挙げなくてもいいから、せめて二人の記念写真だけでも撮ってくれないかな」と切り出したのは、親なればこその心境であったと思います。姪も了承し、教会で写真撮影をすることになりました。

姉は、姪とそのお相手の気持ちを慮って、「本当に着物を着て写真を撮るだけでいいのよ」と言っていましたが、会長である私の息子が、「せっかく神様の前で写真を撮るんですから、神様にもご報告して、これからも見守っていただけるようにご挨拶してはどうでしょうか」と提案し、二人も「なるほど、それはそうだね」と快諾し、式を挙げることになりました。おかげで、家族総出で楽しい会場設営に取り掛かることができました。

式前日に到着した二人の主役は、孫たちが大活躍して作った折り紙の飾り付けやメッセージに、「わぁ、想像以上にえらい大ごとになってる」と驚きながらも、とても喜んでくれました。当日は、近しい人たちが何をおいてもと大勢集まってくださり、笑顔いっぱいの結婚式になったことは言うまでもありません。

さて、前置きが長くなりましたが、今日のお話は、そんな二人のその後です。姉から、「あのね、最近二人で田舎暮らしを計画しているみたいなのよ。築百年の古民家と出会って、ワクワクが止まらないと言ってたわ」と聞いて、またまたビックリです。

まったくその後も次々入ってくる情報は加速度がついて、二人の行動力には脱帽でした。応援している家族や多くの友人はもちろんのこと、古民家の持ち主や行政の方々からも知恵と力をお借りして、二人の古民家移住計画は、みんなの大きな渦になっているのを感じました。

そもそも、二人が田舎暮らしをしたいと志すにはどんなきっかけがあったのかしらと思い、聞いてみました。

「田舎暮らしを決めたきっかけの一つは、自然と調和しながら、可能な限り自給自足の生活を営んでみたいという思いがあったこと。それに、二人でよく話すんだけど、今、親と子どもだけで住む核家族が何代も重なってきて、「ふるさと」って呼べるところがなくなってきている気がするのね。「ただいま~」って帰ってきて、「おかえり~」って言ってもらえたら、もうそれだけで心が落ち着くでしょ。ふるさとってそんなものだと思うの。

『私たちの家が、みんなの心のふるさとになったら最高だね』って、話はいつもそこに落ち着くのよ。人種、性別、肩書きなどなど、人と人を比べて争うのって、何だか悲しいよね。ここに来てくれる人たちは、みんなまん丸。まん丸家族でつながりたいな。

今の時代、何でも簡単に壊して新しく作り変えるのが主流だけど、昔の人たちの知恵が詰まった古民家と全く同じものを再び作ることは不可能なの。残せるものを残しつつ、現代の技術も上手く併せて再生することで、ご先祖達が残してくれた知恵や暮らしの中の工夫を、実際に肌で感じられるような場所にできればいいな」

私たちの家ではあるけれど、みんなが集まって楽しめるような場所であったらいいなあという大らかな気持ち。今私たちがここにあるのは、有形無形の人や物に支えられているからという感謝の気持ち。これからも、この二つの気持ちを大切にして、明日へ、未来へとワクワクした生き方を発信し続ける旅人であってほしいなと思います。

さて、古民家には、もうすでに毎日のようにゲストが訪れて、リノベーションに関わったり、近くの名所を散策したりと、賑やかな様子がSNSを通して伝えられてきます。広い庭に畑を作ろう、木を植えようと提案し、すでに準備をしている人たちもいっぱいいるそうです。

大人も子どもも、未来への旅人と一緒に、陽気ぐらしの生き方を楽しめたらいいですね。さあ、私も何かできることを探してお手伝いしたいと思います。

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