(ラジオ天理教の時間)
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放送予定

第1216回2023年2月4日・5日

食べ物を通して感じること

岡先生(掲載)
岡 定紀

文:岡 定紀

第1104回

10年後、5才の君に伝えたいこと

五才の孫が、知らぬ間に丸坊主になっていた。どうやら近所の美容院へ一人で行ったようなのだが…。

10年後、5才の君に伝えたいこと

  岐阜県在住  吉福 多恵子

ピンポーン。「はーい!」

玄関にいたのは、すぐ近くの児童センターの先生でした。そして、もう一人。我が家の三人目の孫、たいようくんが先生に手を引かれて…。

応対に出たたいようくんのお母さんは、もうびっくりです。さっき幼稚園へお迎えに行って、家の中で遊んでいるとばかり思っていたたいようくんがそこにいたのですから、頭の中にはクエスチョンマークがいっぱい浮かんでいたと思います。

児童センターの先生の話はこうです。
「たいようくんが一人で遊びに来たのですが、ご承知のようにうちの施設は就学前のお子さんは保護者付きでないと遊べないんですよね。家もお近くなので、ちょっと送ってきました」。

お母さんはすっかり恐縮して、丁寧にお礼を述べました。先生はたいようくんに「今度はお母さんと一緒に来てね」と声を掛け、帰っていかれました。

さて、お母さんにはもう一つ疑問がありました。たいようくんの頭がきれいな坊主頭に散髪されていたのです。
「ねえ、たいよう、もしかしてルビーさんの所へお散髪に行ったの?」
「うん、行ったよ」
我が家の三軒筋向かいには、長らくお付き合いしているルビー美容院があり、孫たちもそこで散髪してもらっているのです。

「あのね、勇人(ゆうと)にいちゃんみたいな髪型にしてくださいって言ったんだ。それからお礼に紙芝居を読んであげたよ」
お母さんの頭の中も少しずつ整理されてくると、たいようくんの足取りや行動の理由も想像がついたようです。美容院へ散髪代を支払いに出かけ、そこで聞いた何とも楽しいお話を私に聞かせてくれました。

お話の登場人物となる家族を紹介しましょう。我が家は三世代、主人と私、息子とその嫁、そしてその子供たちが男の子三人。このお話の時には、小学六年生、四年生、年中さんでした。加えて、里子としてお預かりしている二才の男の子と高校一年生の女の子が家族として暮らしています。

さて、その頃我が家では、教会長が主人から長男に代わる代替わりの大きな行事が迫っていて、その準備でみんなが大忙しの日を過ごしていました。

その日、たいようくんは幼稚園から帰ってきて、お母さんも遊んでくれないし、一人で寂しかったのでしょうか、「そうだ、髪の毛を切りに行こう」と思いつきました。

実は、里子の二才の男の子、通称「四男くん」は、たいようくんより三つも年下なのに、ものすごくヤンチャで、何かというとたいようくんの方が泣かされることが多いのでした。
四男くんに髪の毛を引っ張られ、痛い思いを何度もしているたいようくんは、「そうだ、勇人にいちゃんみたいに丸坊主にしたら、髪の毛を引っ張られないで済むかも」と考えました。

けれど、問題はお金。たいようくんは、いつも散髪してもらった後で、お母さんがお金を払っているところをちゃんと見ていたのです。

「僕はお金ないなあ…、そうだ、ひらめいた! この前借りてきた紙芝居、もう読めるようになったから読んであげよう」。
思いついたら即実行のたいようくんなのでした。

そして、ここからはルビー美容院の奥さんの話です。
「こんにちは」って、たいようくんが一人で入ってきた時はびっくりしましたよ。しかも、「お兄ちゃんみたいに丸坊主にしてください」って言うんです。
「お母さん、来ないの?」って聞いたら、「お母さんは忙しいから」って…。事情は分かってますし、大丈夫だろうと思って、丸坊主にしてあげました。
散髪している間、たいようくんは楽しいお話をいっぱいしてくれましたよ。

「はい、できました」と言って着せていたマントを取ってあげたら、たいようくんが「お礼に紙芝居を読んであげるね」って。思いもしないハプニングでした。ちょうど来ていたお客さんと二人で楽しませてもらいました。

読み終わったら、「じゃあね、僕、これから児童センターへ行って紙芝居読んであげるんだ」って、元気良く出ていきました。久しぶりに紙芝居なんか見せてもらって楽しかったですよ。

分かってみたら、みんなが笑顔になれるような出来事でしたが、移動の途中で事故もなく、多くの人に温かく見守られていたおかげだと胸を撫でおろしました。

思えば、小さな子供の心といえども立派に考えがあるものなのですね。話を聞いて、おばあちゃんとして嬉しかったことが二つありました。

一つは、四男くんにいつも髪の毛を引っ張られ、泣いているだけだったたいようくんですが、仕返しに暴力を振るおうとするのではなく、自分の髪の毛を短くして、引っ張られないようにしようと考えたこと。

そしてもう一つは、散髪代というほどの意識があったのかは分かりませんが、お礼に相手を喜ばせてあげようと紙芝居を持っていったこと。

買い被りかもしれませんが、人のことを思う気持ちが育っているように思えて有り難く感じました。これも、教会で神様中心の生活をしているおかげであり、神様のご用を懸命につとめるお父さんやお母さんの背中を見て育ってきたおかげだと思っています。

ところで、こんな小さな生活の一コマ、10年後には誰もが忘れていることでしょう。でも、一瞬一瞬を積み重ねて人として成長していく姿、どこかに留めておきたいなあと切に思います。

10年後、中学生か高校生になったたいようくんが、この文章にふれた時、どんな顔をするかな。楽しみです。

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