第1119回2021年3月27日・28日放送
おやさまの情景
教祖の逸話を四コマ絵本の形にした新刊『おやさまの情景』。その中から一篇をご紹介します。
『おやさまの情景』
たすけを求め寄り来る人々を、常に温かい親心をもって導かれた天理教教祖・中山みき様「おやさま」。その尊い道すがらの中には数々の逸話があり、今も語り継がれています。その逸話から十二篇を厳選、イラストを添えて「4コマ絵本」の形で一冊にまとめた、『おやさまの情景』。今日はその本から一篇をご紹介します。
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子供が親のために―神様がお受け取りくださる真実の心―
元治元年、一八六四年ごろのこと。十五歳の桝井伊三郎(ますい・いさぶろう)少年は、夜の明けるのを待ちかねて、およそ五・五キロの道をお屋敷へ急ぎました。病気で危篤の母キクさんのことを、教祖にお願いするためでした。
「どうかお救けくださいませ」
すると教祖は、こう仰せになりました。
「せっかくやけれども、身上救からんで」
ほかならぬ教祖のお言葉です。伊三郎さんは、家に戻ることにしました。
しかし、苦しむ母の姿に、「どうでも救けてもらいたい」との思いで胸がいっぱいになり、再び、お屋敷へ行きました。けれども、教祖は、「気の毒やけれども、救からん」と、重ねて仰せになりました。
「ああ、やむをえない」
伊三郎さんは、その場では得心したものの、家に戻ると、じっとしていられません。またトボトボと歩いて、お屋敷に着いたときには、夜になっていました。
「ならん中でございましょうが、何んとかお救けいただきとうございます」
すると教祖は、
「救からんものを、なんでもと言うて、子供が、親のために運ぶ心、これ真実やがな。真実なら神が受け取る」と仰せくださいました。
こうしてキクさんは命をたすけていただき、八十八歳まで長生きしました。
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人間の親である親神様のお心は、子供をたすけてやりたい思いでいっぱいです。けれども、たすけていただくには、親神様のお心にかなう真実の心が大切なのです。キクさんは、教祖のことを本当の親のようにお慕いし、足しげくお屋敷に通っていました。伊三郎さんは、その姿を見て〝親を思う心〟を自然に身につけていったのでしょう。
日ごろから親孝行を心がけ、周りの人も思いやる。そんな姿を子供の心に映したいものです。