第1113回20121年2月13日・14日放送
一粒万倍
時間に追われ、点数によって評価され…。数字とは切っても切れない関係にある私たちの拠り所になる教えとは。
一粒万倍
テレビで、アメリカのある有名大学での人気講義が放送されていました。「リーダーシップとは何か」と題したその講義で、世界中から集まってきた学生たちに向かって、教授は「私たちは数値化の世界に住んでいる」と話します。
「君たちは、ありとあらゆる種類の数値化のツールを学ぶだろう。会社や国家、組織、学校や家庭でさえも予算なしで経営することはできない。しかし、数値化に慣れてしまうと、私たちは数字が真実を表していると思うようになりがちだ。数値化できない真実はたくさんある」。そして、教授はこう強調しました。
「善、すなわち善い行いは数値化してはならない」。
「人は自分が達成したいと願うことを、すべて達成することは出来ない。一国の大統領を務めた人で誠実な人は、誰でも絶望した状態で職を辞す。何故なら、成し遂げたかったことを成し遂げられなかったからだ。一人の子供の目に光を灯すことが出来たのならば、君は数では表せない善を行ったことになる。一つの命を救うことは世界を救うことだ」。
思えば、人は生まれた時から数字というものと切っても切れない関係にあります。年月を数え、時間に左右されながらの生活、学校に上がればテストの点数で評価は数値化され、仕事につけば成果によって報酬が決まります。人生とは、数字との格闘の連続だと言っても言い過ぎではないかもしれません。
天理教教祖・中山みき様「おやさま」は、ある時、一粒の籾種をお持ちになり、このようにお諭しくださいました。
「人間は、これやで。一粒の真実の種を蒔いたら、一年経てば二百粒から三百粒になる。二年目には、何万という数になる。これを、一粒万倍(いちりゅうまんばい)と言うのやで。三年目には、大和一国に蒔く程になるで」(教祖殿逸話篇 30「一粒万倍」)
数をめぐる様々な問題が世の中から消えることはないでしょう。私たちの日常においても、数に悩まされる現実が途切れることはありません。
そんな中、「数を生み出す元は、一粒の真実の種である」との教祖の教えは、私たちに勇気を与えてくださいます。
忘れてはならないのは、日々、地道に真実の種を蒔き続けること。その延長に、数え切れないほどの「善」にあふれた世界が現れてくるのではないでしょうか。