第1237回2023年7月7日配信
救われた命に喜びを
重篤な入院患者さんが「こどもおぢばがえりのパレードが見たい」と。看護チームで綿密に計画を練り、いざ実行。
胸の奥にこの花あるかぎり
「救われた命に喜びを」
「憩の家」の医療は、治療や救命だけがゴールではない。最高の医療で救命した方々に、陽気ぐらしに向かっていただけるよう支援することも重要な使命である。
毎年「こどもおぢばがえり」が始まると、ある男性患者さんのことを思い出す。その方は、六十代で急性骨髄性白血病を発症し、緊急入院された。入院直後、重い肺炎を併発し、人工呼吸器を装着することになった。
熱心な若い主治医を中心に、医療チームの懸命な努力の甲斐あって、一カ月後には人工呼吸器を取り外せるまでに回復した。しかし、この間に、すっかり体力が衰え、食事も取れなくなり、点滴注射で栄養を補い、一日中ベッドで寝たきりの生活となってしまった。昼夜が逆転し、夜になると大声で叫び、昼はウトウトするといった日が続いた。
わずかでも元の自分を取り戻してもらいたいと願い、看護師たちはさまざまな働きかけをしていた。昼間はケアをしながら話しかけ、リクライニング機能付きの車椅子に座って過ごす練習も始めた。
ちょうどそのころ、「こどもおぢばがえり」が始まり、病室の外から、元気な鼓笛隊の演奏が聞こえてきた。すると、患者さんが「パレードに行きたい」と呟かれた。付き添っていた奥さんに伺うと、この方は毎年、信者さんの子供たちを連れて「こどもおぢばがえり」の夜のパレード見物に来ていたとのこと。きっと、パレードには特別の思いがあるに違いない。看護師たちは「懸命の治療で、やっとここまで回復された患者さんだから、ぜひとも望みを叶えて差し上げたい」と強く思った。
みんなで主治医に相談をした。
「ええっ! パレード見物ですか?」
と戸惑う主治医に、
「必要な手配や準備は、全部われわれがやります。診療部長に許可を取ってください。このままの状態では、何のためにここまで頑張ってこられたのか……」
と熱い思いを伝えた。
その勢いに押され、主治医も意を決して診療部長のところへ掛け合いに行ってくださった。
部長からは、「もし外で呼吸が止まっても、対応できるように責任を持つこと」という条件付きで許可が下りた。
緊張して、ぎこちなくなってしまった主治医を励まし、万が一に備えて、酸素ボンベのほかに、気管内挿管セットや人工呼吸に使う器材を準備して、リュックに詰めた。
まず、日勤の勤務を終えた看護師数人が場所取りに走った。計画を聞きつけ、夜勤明けや休日の看護師も駆けつけてきた。みんなで手分けし、患者さんの体力が消耗しないよう、安全が守れるよう万全の準備を整えた。時間のロスがないように、車を出す時間も綿密に計画した。現地では車の侵入は禁止されているので、リクライニングの車椅子に移ってもらって移動した。
到着後、奥さんの姿が急に見えなくなったので心配していたら、総勢十一人にもなったスタッフに、アイスクリームを買ってきてくださった。一気に気分がはじけて、みんな笑顔になった。
パレードはすぐに始まった。いつもは車椅子に二十分も乗っていられなかった患者さんが、この日は一時間も座ることができた。出し物が通るたびに手を振りながら、パレードを楽しんでおられた。
状態も悪化することなく、病院に戻った患者さんは、「楽しかった! また行きたい」と話し、その夜から、ぐっすりと眠れるようになった。小康状態が続き、笑顔や会話も増え、奥さんと穏やかな日々を送られた。
その後、男性が亡くなられた折、奥さんから
「あの日、素晴らしいひと時を過ごさせてもらえて、本当にありがたかった」
と感謝の言葉を頂いた。
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