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第1405回2026年9月25日配信

伝えたい思いがある

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関根 健一

文:関根 健一

第1279回

欲しい愛情のかたち

夫婦や親子の間でも、相手がどんな愛情の形を求めているか、それを正確に知ることは実に難しい。

欲しい愛情のかたち

奈良県在住・臨床心理士  宇田まゆみ

 

先日、自営でカウンセリングをしている夫が、「背中や腰が痛い」と言って、しんどそうにしていました。仕事の依頼が以前より増え、疲れがたまっていたのかも知れません。さっそく夫の背中をさすりながら、ねぎらいの言葉をかけると、「普段からもっといたわって欲しい」と言われてしまいました。私としてはいたわっているつもりだったので、少し心外に思ったのですが、夫には「妻にこのようにして欲しい」と望む形がはっきりとあったのです。

それは「普段からマッサージをして欲しい」ということでした。振り返ってみると、私はこれまで頼まれた時にしかマッサージをしたことがなく、夫に言われるまでそのことに気が付きませんでした。私にとっては、夫の好きな食事を作ることが一番のいたわりだと思っていたのですが、それは夫が一番嬉しい形とは違っていたのです。

カウンセリングの現場にいると、夫婦間でも、親子の間でも、このように双方の大事に思う視点がズレているという話をたくさん聴きます。

誰しも自分の視点でしか世界を見ることはできませんが、それは決して悪いことではありません。先の私の例でも、夫の好きな食事を作っていたわってあげたいと思う気持ちや行い自体は、悪いことではないのです。大事なのは、それが相手の望んでいる形と必ずしも一致するわけではないと理解することです。

一緒に暮らす家族同士は、時間や空間を共有しているので、知らず知らずのうちに、相手も自分と同じように感じているものだと思ってしまいます。子供のために良かれと思っている親の愛情の形が、子供の欲しい形と一致する場合はいいのですが、往々にしてズレが生じるものです。

たとえば、子供が初めて一人で電車に乗る時、不安そうな子供を叱咤激励する親もいれば、優しく抱きしめる親もいるでしょう。あるいは何もせずに見守るか、そんなものだと気にしない親もいるかもしれません。

そのような子供への態度は、親自身が自分の小さい頃に親から与えられた愛情の形の影響を受けていると言われます。その形をそのまま我が子に与える場合もあれば、それが嫌だったので、自分のして欲しかった形を我が子に与えようとする親もいます。

子供は幼い頃には、親の与えてくれる愛情の形をそのまま受け入れます。たとえそれが欲しい形ではなかったとしても、時に反発しながらでも我慢して受け入れるのです。

それが自分の親だからであり、そこに愛情があるからです。これは夫婦も同じで、そこに愛情があると分かるので、受け入れることができるのです。

でも、家族が円満でより幸せになりたいと願うなら、相手の欲しい愛情の形があると気づくことが必要です。それは自分が思っている形とは違う場合が多いので、相手に聞いてみないと分からないものです。私自身も夫に言われて初めて気がつきました。

ただ、その時は「分かった!毎日マッサージをしてあげよう」と思ったのですが、それまでの習慣になかったので、日々のやることに追われて忘れてしまうことが多く、夫に「マッサージして欲しいな」と言われて、あらためて気づくこともありました。

愛情を形にするためには、ただ気づいただけでは不十分で、それまでの自分になかった視点を意識して、自分の心を向けることが必要です。そして実践してみて感じるのは、純粋に夫が何を喜ぶだろうかと意識することで、自分の心にゆとりが生まれるということでした。心理学では、人を思いやる気持ちを持つことで、むしろ自分に余裕ができると言われます。

時間を気にしてやるべきことを忙しくこなしている自分から、ふわっと視点を広げて相手の喜ぶ形に心を向ける自分になると、相手はもちろん喜んでくれますが、同時に自分も嬉しくなるのです。

こうして自分が喜びを与えられるようになると、相手からも喜びが返ってくるようになり、より円満で幸せな家庭が築けるのです。相手の欲しい愛情の形を知り、お互いに与え合うことのできる家族でありたい。そして、そんな家族円満の輪を周囲に広げていきたいと思います。

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