第1212回2023年1月7日・8日放送
愛情を求めてもよい唯一の相手
日常の夫婦関係はその場の感情に左右されやすく、不満も生じやすい。そんな中、どのように心を治めたら良いか。
愛情を求めてもよい唯一の相手
奈良県在住・臨床心理士 宇田まゆみ
今日も一日が始まりました。昨日の夜は呼吸をするのも忘れて眠ったのに、今朝はもう勝手に目が覚めて呼吸ができている。考えるとこれほど不思議なことはありません。
私という存在は、自分の力で生きているようで、実はそうではなく、生かされて生きているのだと感じることができます。その根本の事実を感じた時、自然と心に感謝が生まれます。とはいえ、私たちは日頃そのことを忘れて、目の前の出来事にばかり心を奪われて過ごしていることが多い気がします。
これは家族の存在、特に夫婦関係でも言えるのではないでしょうか。身近過ぎて、いるのが当たり前のようになっている。その中で色々と心が動いて、幸せを感じることもあれば、不満も生じてくる。目の前の感情に動かされて生きているように感じるのです。
カウンセリングの現場にいると、家族や夫婦の関係について悩みを抱えている方と出会う機会が多くあります。関係が上手くいかず、どうしたらよいのか分からずに来談される方の中には、まるで糸がぐるぐる絡まって、自分では解けなくなっているような心の状態の方も少なくありません。
特に夫婦関係は、感情面の動きが大きくなりやすいように感じます。それもそのはず、パートナーは、大人になってから愛情を求めてもよいとされる、唯一の相手なのです。
人が生きていく中で、愛情というものは欠かすことができません。子どもの時には皆、親や養育者がそばにいて、身の回りのお世話をしてもらい、目に見える愛情も見えない愛情もかけてくれたおかげで現在があります。十分な愛情ではなかったという場合もあると思いますが、これまで生きてこられたのは、親や養育者の愛情を少しでももらってきたからです。
私は人生の師匠から、人間が生きる過程で愛情を求めてもよいのは、親と伴侶だけであると教わり、心がとても楽になったのを覚えています。身近に存在する誰からも愛情をもらいたいという思いが、ストレスを作っていたことに気づいたからです。
ここで言う愛情には、自分を認めてもらいたいとか、わかって欲しい、自分の気持ちを汲んで欲しい、などと相手に求める思いも含まれています。
本来、我が子であったり、ご近所や職場で出会う人たちというのは、愛情を求める対象ではないのです。それを知らずに、いろんな人に自分の存在を認めてもらおうとして、その周囲の反応に振り回されていることが多いのではないでしょうか。
パートナーとの関係は一方的なものではなく、お互いに求め合い、満たし合う関係です。夫婦で心が満たされれば、外へ求めにいく必要がなくなり、常に安心して暮らすことができます。逆に言うと、夫婦関係がそれほど重要であることを知らないために、愛情を我が子や周囲の人に求めてしまい、自然なバランスを崩すのかもしれません。
天理教では、神様は、この世の天と地を象って夫婦を造られたと教えられます。天を表す男性、地を表す女性という性質の異なる存在がペアになって家族が誕生し、新たな命が生み出されます。
夫婦の間がいつも愛情であふれていて、お互いに求めるものが満たされる。そんな関係が死ぬまで続くとしたらどうでしょう? そんなことは無理だと言われる人が多いかもしれません。確かに自然にそうなることはまれで、そのためにはお互いに向き合うことが必要です。パートナーと向き合うと同時に、それぞれが自分自身の心と向き合うことが必要なのです。
夫婦関係では、相手に対する不満が募る場合が多いと思います。なぜこうしてくれないのか、いつも自分ばかりが努力している。もう少し考えてほしい、などと、表面的な感情に動かされてしまいがちです。そのような不満や不安が出てきた時に、私はその時の自分の感情は喜怒哀楽でいうと何だろうかと、あらためて眺めてみることにしています。
人間の持つ喜怒哀楽の感情には良いも悪いもありません。ですから、相手に対する不満で怒りが激しくなった時に、無理にそれを抑えようとか、なくそうとするのではなく、その怒りを抱いている自分自身に好奇心を持つのです。なぜそんなに怒っているのか?と。
お勧めは一人でお風呂に入って、ゆっくりと湯船に浸かりながら、怒りを持つ自分を眺めることです。そうすると感情がフラットになってきて、怒りの奥にある自分の本当の気持ちが見えてきます。もっと分かって欲しいとか、もっと大事にして欲しいなど、自分の素直な気持ちがあることに気づきます。
そうして自分と向き合って、そうか、私はただ自分の気持ちを大事にしてもらいたいだけなんだ、ただ幸せになりたいだけなんだ、と認めるのです。そういった自分の本当の気持ちに気づいて、その思いを素直に伝えることで夫婦関係は大きく変化します。夫婦円満になるための鍵は、相手ではなく、実は自分が握っているのです。
今日も当たり前のようにそばにいてくれるパートナーの存在に感謝して、素直な思いを言葉や態度で表したいものです。
HOME

