(天理教の時間)
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第1280回2024年5月3日配信

そこにある幸せ

山本達則先生 IMG_1557
山本 達則

文:山本 達則

第1167回

水の心で家族を紡ごう

二度の流産、里親登録、長男の誕生…。神様の親心にお応えしようと夫婦で歩み、今や11人の子ども達に囲まれる日々。

水の心で家族を紡ごう

滋賀県在住  池戸 剛

 

夜寝ていると、「お父さ~ん、おしっこ~」と、私の枕元で三男が言います。しばらくすると、今度は「お父さ~ん、のど渇いた~」と次男が言います。

子どもたちは、なぜだか寝ている親を起こす時、「お父さ~ん」と呼んできます。「なんでお母さんじゃないの?」と、妻と子どもたちの寝顔を見ながら思うこともありますが、子どもたちとの、このちょっとしたやり取りの積み重ねが、家族を紡ぐ上でとても大事だと思うのです。

私たち夫婦は、結婚して数カ月後に子どもを授けて頂きましたが、お腹の赤ちゃんの成長が進まず、二度の流産に見舞われました。夫婦にとって残念な思いはもちろん、妻が心と身体に受けたショックも大きいものでした。

神様は、

  たいないゑやどしこむのも月日なり
  むまれだすのも月日せわどり(「おふでさき」六 131)

と仰せになり、この世の全てのものは神様からの借り物で、夫婦が子どもを授かり、無事に産まれてくるのも、全ては神様のご守護だと教えてくださいます。

妻の心身の回復を神様にお願いさせて頂く日々の中で、私たち夫婦にこうしたことを見せてまでも成長させてやりたいという神様の親心はどこにあるのか、二人で少しずつ思案しました。

「子どもを授かりたいという思いだけでは、神様が私たち夫婦に望まれる思いに叶わないのかもしれない」。そう思い、「いずれは」と前から考えていた、里親になることを夫婦で心に決めました。そして、教会に来てくれる里子たちを、「神様からお預かりするんだ」との思いで育てさせて頂こうと決意したのです。

そうして、里親登録が完了して三カ月後に、不思議なご縁とタイミングで女の子をお預かりすることになりました。ちょうどその頃に妻の三度目の妊娠が分かり、初めて赤ちゃんの心音を聞くことができ、夫婦で今までにない喜びを味わいました。そして、待望の長男が誕生しました。

その後、次男、三男、四男を授けて頂き、同時に里子たちも次々にお預かりすることになりました。今では里子や元里子などを合わせて11人の子どもたちに囲まれ、教会生活は賑やかそのものです。なるほど、神様のなさることやそのタイミングには、寸分の狂いもないのだと深く感じ入るのです。

けれど、そんな喜びを忘れてしまうこともちょくちょくあります。すると神様は、その折々に必ずお知らせをくださいます。

ある日、いつものように四人の息子をお風呂に入れていました。子どもたちがお風呂から出ると、妻が脱衣所で待っていて四人の身体をバスタオルで拭き上げてくれました。

湯舟で一人になった私が、ゆっくりつかってから脱衣所に出ると、「このバスタオルを使ってね」と言わんばかりに、四人の身体を拭いたびしょびしょのバスタオルが置いてありました。
「これでオレも拭けってことか?」と、なぜだか急にものすごく腹が立ってきたのです。

「お風呂から出たら、ちょっと文句を言おう」と思い、別のタオルを手にとりました。その時ふと、「今ものすごく腹が立ってるけど、この状況で喜べることなんてあるかな?」と自分に問いかけてみました。

「そうだなあ。バスタオルがびしょびしょになったということは、四人ともみんなお風呂に入らせてもらえたということ。元気に過ごさせて頂いている証拠か。それって神様のご守護のおかげや。あ~っ、ありがたいやんっ!」

そう思ったとたんに、心がスーッと治まりました。そして、びしょびしょのバスタオルで身体を拭きながら、「神様ありがとうございます」とお礼を申し上げました。

お風呂から出たら文句を言うところだったのが、逆にびしょびしょのバスタオルを使ってこんなに嬉しい気持ちになったと、お風呂上がりに話すと、「私はいつもそのタオルで拭いているから平気だけど、あなたの心を揺さぶってしまったのね」と妻。二人で笑い合い、喜び合うことができました。

天理教では、男性は水の徳分、女性は火の徳分を神様がお与えくださっていると教えて頂きます。水の潤いと火の温みのバランスがとれて私たちの生活が成り立つように、家庭でも男性と女性のバランスが大事だと思うのです。

水が器によってその形を変えるように、男性にはその場の状況に応じて柔軟な心を使える徳分があります。一方、女性は火の温かさで、家族みんなにぬくもりと安心を与えるような徳分を持っています。そうした夫婦のバランスのとれた働きが、家族に喜びの姿をもたらすのです。

以前、私自身、水のような心づかいや行動ができずに、夫婦や親子の関係がかみ合わなかったと感じたことがあります。「オレにはやるべき仕事があるんだ」と言い訳をして、家事を妻に任せきりにしていたのです。

教会で同居していた両親が離れて暮らすことになり、妻はそれまで母と二人で分担していた仕事を一人で請け負い、精一杯こなしていました。ところが、ある日、突然崩れるように「もうできない」と泣いて訴えてきたのです。

そこで妻と相談して、任せきりだった家事の中から、洗濯物を取り込んで畳むこと、子どもの保育園の送迎、夜、子どもたちを寝かしつけることを私が担当することになりました。

夕方は、家族の夕食の準備で妻は大奮闘しています。その時間に居間で私が洗濯物を畳んでいると、里子たちが次々に帰ってきます。そこで学校のことを話したり、宿題の音読を聞いたり、漢字ドリルを見たり、日々の子どもたちの様子を知る上で大事な時間となっています。

洗濯物を畳んでタンスにしまうのも、ずいぶん上手くなったと思います。私の帰りが遅くなると、妻が畳んでおいてくれることがあり、そんな時に「洗濯物畳んでくれたん!ありがとう」と妻に感謝し、お礼を言えることも、私たち夫婦にとって大事なことだと感じています。

さて、最近子どもたちを寝かせるいい方法が見つかりました。それは、誰の寝たふりが一番上手いかを競う「寝たふり合戦」。頑張って寝たふりをしている間に、全員寝てしまうという仕掛けです。今夜は「お父さ~ん、おしっこ~」と起こされないことを願いつつ、私も一緒に寝たふりです。

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