(天理教の時間)
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第1291回2024年7月19日配信

「生き方が分からない」と嘆く少年

家族円満 中臺眞治
中臺 眞治

文:中臺 眞治

第1160回

ムカデ事件簿

長女を刺したムカデを家族一丸となって退治。チームがまとまるには「共通の敵を作る」のが一番だと聞いたが…。

ムカデ事件簿

岡山県在住   山﨑 石根

 

昨年の9月初旬のある夕方のことでした。帰宅すると、小学5年生の長女と3年生の三男がきょうだいゲンカをしていました。

聞くと、その朝、私がご褒美で買い与えたお菓子の味でケンカをしているとのこと。それは、朝から教会の掃除を一生懸命頑張った二人に、珍しく私が買ってきたお菓子なのですが、二種類の味を準備したのが仇となったようです。片方の味は二人とも嫌いなようで、「私がそっち!」「僕のほうがそっち!」と取り合いになっていました。

しかし、お金を出した私からすればいい気はしません。
「買ってもらっといて、何やその態度は!いらんのやったら、もう二度と買わんわ!」と、大人げなくつい感情的になってしまいました。

弟のほうは、それでも「だって…、嫌いな味なんじゃもん」と泣きながら抵抗してきますが、姉のほうは私が怒っている空気を察して、サッとその場を離れ、取り込まれた洗濯物をたたみ始めました。この辺りの動きは、さすが長女です。

ところが、その時、「痛~っ!」突然の悲鳴と共に、長女が激しく泣き出しました。

「何かに刺された! 何か分からんけど、痛い!痛い!痛い!」

「蜂かも?」と思った私は、すぐさま長女を洗面所へ連れて行き、血が出ている指先に流水を当てながら、毒を絞り出すようにつまみました。

「こうやりながら、ずっと水に当てとくんで」と指示した私は、犯人を捜すために洗濯物の所へ引き返しました。そこにあったのは、奇しくも私のお気に入りのTシャツ。私のTシャツを畳もうとしてくれていたのか…と思うと、何だか怒りが込み上げてきます。

私は犯人は蜂だと思い込んでいるので、側にあった座椅子で何度もTシャツを叩きました。やっつけたかなあと思いながら、そっとTシャツを持ち上げると、何物かがスルッと絨毯の上に落ちてきたのです。

それは、ムカデでした。しかも大物です。犯人は、お前だったのか…!

「ムカデや!」
と私が叫ぶと、すぐに側にいた次男と三男が走り出しました。

最初に火ばさみを見つけたのは三男だったようですが、「僕のほうが早い!」と次男がそれを受け取り、猛ダッシュで私のところへ持ってきてくれました。私はすぐに火ばさみでヤツを掴み、渡り廊下まで移動し、地面の上でムカデを退治しました。

余談になりますが、その渡り廊下では、大きな衣装ケースを改良した手作りの虫かごの中で、カブトムシが6匹飼われています。

「同じ虫なのに、この対応…。えらい差やなあ」と、どこか同情が湧きつつも、可愛い娘の指を傷つけた犯人を、私はようやく成敗したのです。

再び洗面所にいる長女の元に戻ると、一番下の次女が絆創膏を手渡してきました。彼女も何かしなくちゃ…と、救急箱から探してきたのでしょう。

「確か、ムカデに効く塗り薬があったと思うけど…」と私が言うと、タイミングを同じくして、三男が台所にいた妻を連れてきました。「薬はここやで」と。やっぱりお母ちゃんはさすがです。

しかし、まぁ、何というチームワークなんでしょう。

学生の頃、たしか心理学の授業で、次のような話を聞いたことがあります。

チームをまとめる最も簡単な方法は、共通の敵を作ること。チームの中で仲の悪いメンバーがいたとしても、共通の敵がいればまとまりやすいそうです。まさしく、ムカデという共通の敵が表れた時、それまでケンカをしていた家族は一つになりました。

しかし、敵をやっつけるために一つになるというのは、何だか信仰的ではありません。それこそ、今は新型コロナウイルスという人類共通の敵がいるわけですが、教会では、その敵を退治するというよりは、この事情が治まり、罹患した方が少しでも良くなるように、毎日祈りを捧げています。信仰者たる者、神様に願う心で一つになりたいものです。

コロナ時代に入り、それまでずっと続けていた子どもの行事である「教会おとまり会」が出来なくなりました。一年近く止まってしまいましたが、現在では「教会こども会」と称して、宿泊や食事をしない行事を、感染対策を講じながら再開しています。

その行事で必ずしていることがあります。それは「お願いづとめ」と言って、新型コロナウイルスの感染拡大の収束をみんなで祈るのです。もちろん、天理教の教理の深いところまで子どもたちは分かりません。それでも、祈るみんなの眼差しは、いつでも真剣そのものです。

教会の行事を通して、子どもたちとこのような形で一つになれることに、いつも熱い思いが込み上げてきます。やっぱり共通の敵より、共通の目標のほうがいいに決まっています。

神様のお言葉に、

 をやこでもふう/\のなかもきよたいも
 みなめへ/\に心ちがうで(「おふでさき」五 8)

というお歌があります。
だからケンカが起こるのは当然です。でも、共通の目標があれば一つになれるというのが私たちの教えです。それは「陽気ぐらし」という目標なのだと思います。

翌朝、「もう痛くないよ」という長女の笑顔に、ホッとしました。
「でも、私がこんなに大変だった時にお兄ちゃん、おらんかったんで~」
と、その時不在だった長男を責めていました。

「そんなこと言われても…」

家族と一つになれなかった長男が、ボソッと呟きました。

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