(天理教の時間)
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第1279回2024年4月26日配信

欲しい愛情のかたち

宇田まゆみ
宇田 まゆみ

文:宇田 まゆみ

第1154回

あの菓子をお買い

陽気ぐらしへのひながたを示された教祖。そのご態度は、警察に拘留された時でも何ら変わることはなかった。

あの菓子をお買い

 

常に人を喜ばせ、勇ませる、真に明るい通り方。陽気ぐらしへとつながるひながたを、身を以てお示しくだされた天理教教祖・中山みき様「おやさま」。そのご態度は、警察に拘留されるという厳しい場面においても、何ら変わることはありませんでした。

教祖の道すがらを記した『教祖伝』には、次のように記されています。

 

厳しい徹夜(よどおし)の取調べが済んで、まどろまれる暇(いとま)も無く、やがて夜が明けて、太陽が東の空に上った。が、見張りの巡査は、うつらうつらと居眠りをしている。巡査の机の上につけてあるランプは、尚も薄ぼんやりと灯り続けている。

教祖は、つと立って、ランプに近づき、フッと灯を吹き消された。この気配に驚いて目を醒ました巡査が、あわてて、婆さん、何する。と、怒鳴ると、教祖は、にこにこなされて、

「お日様がお上りになって居ますに、灯がついてあります。勿体ないから消しました」と、仰せられた。(教祖伝第九章「御苦労」より)

 

たとえわずかな明かりであっても、神様の大いなるご守護によるもの。そのご恩を片時も忘れてはならないと、優しくお示しくだされています。

また、同じ拘留の場面では、付き添っていた孫のひささんとの、こんなやりとりも伝えられています。

 

ある日、菓子売りの通るのを御覧になって、

「ひさや、あの菓子をお買い」
と、仰せられた。何なさりますか。と、伺うと、

「あの巡査退屈して眠って御座るから、あげたいのや」
と、仰せられたので、ここは、警察で御座りますから、買う事出来ません。と答えると、

「そうかや」
と、仰せられて、それから後は、何とも仰せられなかった。(教祖伝第九章「御苦労」より)

 

この時の十二日間の拘留は、明治十九年、教祖八十九歳の年。しかも、三十年来の寒い冬のことでした。そんな厳しい状況の中、見張りの巡査に対してさえ、いたわりの心を忘れることはありません。それもそのはず、教祖は次のようなお言葉を残されています。

この家へやって来る者に、喜ばさずには一人もかえされん。親のたあには、世界中の人間は皆子供である」(教祖伝第三章「みちすがら」より)

いつでも誰にも、尽きない親心。教祖こそ、私たち人類の親であらせられるのです。

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