(天理教の時間)
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第1280回2024年5月3日配信

そこにある幸せ

山本達則先生 IMG_1557
山本 達則

文:山本 達則

第1167回

子育ての苦労

出生率は下がり続け、人口減少は避けられない日本。思えば、物のない時代はどの家族も子だくさんだった。

子育ての苦労

 

日本における2020年の合計特殊出生率は1.34で、五年連続で低下しています。少子化に歯止めがかからず、さらなる人口の減少は避けられそうにありません。

このまま少子化が進み、働き手が減ると、かつては胴上げ型、つまり多くの人数で上に乗っている高齢者を支えていたものが、やがて騎馬戦型、さらには肩車型と言われるような、一人の若者が一人の高齢者を支えなければいけない構図になってしまいます。

ある調査によれば、夫婦の理想の子どもの人数は2.32という結果が出ています。では、なぜ実際の出生率とかけ離れているのか。それは経済的な問題、言い換えれば子育てにお金が掛かり過ぎることが問題となっているのです。

戦後の復興期は、今よりはるかに子だくさんでした。物のない貧しい時代でしたが、その中を家族、きょうだい、親戚、さらには近所同士でたすけ合って、子どもは一人前に育つことができたのです。

だからと言って、今の時代に「子どもは多いほうが幸せだ。だから、どんなに貧しくてもたくさん子どもを作るべきだ」などと、精神論で片づけてしまうのは現実的ではありません。ただ一方で、決して豊かではなくても、夫婦がたくさんの子どもと共に家庭を営むということも、幸せの一つの形だと思うのです。

『天理教教典』には、「人の幸福は、その境遇に在るのではなく、人生の苦楽は、外見によって定るのではない。すべては、銘々の心の持ち方によって決まる」(第七章「かしもの・かりもの」)とあります。

客観的には大変な苦労のように見えても、本人たちは幸せに感じているという状況もあります。自ら歩むと決めたうえでの苦労なら、心はいつまでも前向きに、勇んで進むことができるでしょう。

多くの動物は、生後間もなく自力で立つことができますが、人間だけが立つのにさえ一年もかかります。本来は、もっと母親の胎内にいなければならないはずが、早く生まれてきてしまうのです。それはなぜか。子育ての大変さと、それを乗り越えた所にある喜びを、多くの人に味わってもらいたいという、神様からのメッセージではないでしょうか。

子育てほどの苦労はないかもしれません。しかし、それは親になったからこそ味わえる幸せな苦労なのです。

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