第1118回2021年3月20日・21日放送
妻が一段と優しくなりました
働き者の妻が、腹痛を訴え入院。その時、心と身体に関連した「疾病逃避」という現象を思い起こした。
妻が一段と優しくなりました
青森県在住 井筒 悟
去年の暮れ、妻が激しい腹痛を訴え入院しました。虫垂炎が原因で、毒素が体中に回り、敗血症の状態だったのです。
私が県外から帰宅したばかりだったので、配偶者である妻は、新型コロナウイルス感染防止のため、まず病院の駐車場でPCR検査を受けました。結果は陰性でしたが、それまでは診察してもらえず、その間一日中、ひたすら痛みに耐えていました。感染防止のため仕方ないとはいえ、夫が県外に仕事に行っただけで、自分が感染者のように扱われたことにショックを隠せない様子でした。結果、手術はせず、点滴での治療となりましたが、一週間ほど入院することになりました。
妻はとてもよく働きます。朝5時に起き、掃除洗濯、子供たちの弁当を作ると、朝食の準備。大家族ですから、自分がゆっくり食事をする時間がほとんどとれない毎日です。毎度の食事を楽しみにしている両親のために、どんなに忙しくても自分以外の献立に手を抜くことはありません。
また、神様へのお供えものとしていただく野菜や、青森の名産であるりんごやぶどうなどを、ご近所にお配りしたり、全国各地のお世話になった方々へ配送したりします。
さながらわが家は青果市場のようですが、これらはすべて妻が責任を持って行います。新鮮なうちに食べてもらいたいという気持ちから、寸分のいとまを惜しんで作業をするため、身体には当然無理がかかります。
「少し休んだほうがいいと思うよ」と言っても手を休めることはなく、また次から次へと他にやるべきことが舞い込んできます。
そんな妻ですから、入院という事態を目にした子供たちの反応は、「お母さん、やっと休めるね!」というものでした。母親の病気を心配するより、安堵感のほうが大きかったのでしょう。妻が休むためには、病気になるほかなかったのかもしれません。
話は少し変わりますが、最近、親戚の若い女の子が、ひどく苦しんでいた腰痛から解放されました。彼女は頭脳明晰で、何でもそつなくこなす能力の高い女性なのですが、腰痛のためにたくさんの夢や、やりたい仕事を諦めざるを得ませんでした。心の辛さを感じる余裕もないほどの、強烈な痛みに襲われる毎日だったといいます。
そんな彼女に不思議なことが起こります。手術当日の朝、突然痛みが消え、異常が見当たらなくなりました。入院し、仕事のプレッシャーや対人関係から解放され、心の重りが軽くなったことで、腰の激痛がなくなったのです。結局、手術の必要がなくなり退院となりました。彼女の母親は、驚きを隠せない様子で教会にお礼に来られました。
心と身体に関連した「疾病逃避」という現象があります。心が受けた痛みや、これから受けるであろう痛みを潜在意識が察知し、心が壊れることを避けるために、身体に働きかけ疾病を生み出すのです。
私たちの心には、普段意識されている部分の他に潜在意識、いわゆる無意識層というものが広がっているといいます。自分の中にいる、自分では気づかない潜在意識が身体に異常を表し、警報を鳴らす。それが「疾病逃避」です。心が病気を作るとも言えるし、病気になることで心を守っているとも思えてきます。
妻が患った虫垂炎、いわゆる盲腸であっても、心が原因で起こるというお医者さんもいます。妻の場合も、対人関係においていわれのない非難や中傷を受け、心に辛さを抱えていました。
「もっと頑張れる。今やらなければ」と張り切る姿の影で、もう一人の自分である潜在意識が「休みましょう、そうしないと心が壊れてしまいますよ」と訴え続け、腹痛を起こしたのかもしれません。
入院中、絶食が七日間続きました。その間、カロリーを一番必要とする脳を休めたおかげか、何も考えない時間が作れたといいます。そして、「素直になった気がする」とも言いました。加えて、コロナ感染防止で、一切の面会や差し入れが禁止されていたために、外からの情報が遮断され、心を休める環境下にあったことも幸いしました。
さまざまな要因が重なって、あれこれ抱えていた悩みが消え、心の状態が鏡に映るがごとく、身体から毒が消えていきました。そして、妻は一段と優しくなって帰ってきました。
天理教教祖・中山みき様「おやさま」は、
やまひのもとハこゝろから(みかぐらうた十下り目10)
みなせかいのむねのうち
かゞみのごとくにうつるなり(みかぐらうた六下り目3)
とお教えくださいました。
心がもたらす不思議な世界にあらためて感激し、胸が熱くなりました。