(天理教の時間)
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第1287回2024年6月21日配信

トイレのスリッパ

伊藤教江先生
伊藤 教江

文:伊藤 教江

第1175回

まま食べるのも月日やで

小さい頃に聞いた「まま食べるのも月日やで」という言葉。息子の手術でそれを実感し、感謝の思いが込み上げた。

まま食べるのも月日やで

京都府在住  辻 治美

 

私は小学一年生の時に、教会の鼓笛隊に入隊しました。音符の読み方や楽器の鳴らし方などまったく知らず、鼓笛隊が一体どんなものかさえ知らずに入りましたが、お友達と過ごす時間が楽しくて、すぐに大好きになりました。

鼓笛隊では様々な楽器を使います。太鼓やシンバルなどのドラムパート、ピアニカ、鉄琴などの鍵盤パート、メロディーを奏でる横笛はファイフパートと呼ばれ、中学生や高学年の子は大きな楽器を担当し、私のような低学年の子はほとんどが横笛のファイフパートでした。

初めてファイフを習った日のことを、今でもはっきりと覚えています。大きな模造紙に五線譜と音符が書かれていました。指導してくださるのは、鼓笛隊を立ち上げた教会の奥様で、優しい声で「この音がドです。指はこう押さえます」と、横笛の穴の押さえ方を教えてくださいました。

次に吹き方です。すぐに音が出る縦笛と違い、横笛の吹き方はとても難しく、息がうまく入らないと全く音が鳴りません。「ふー、ふー」と練習していると酸欠になりそうでしたが、だんだんとコツをつかみ、「ピー」と音が出た時は嬉しくて、すぐにファイフの虜になりました。

練習の合間の休み時間には、大きい子も小さい子も一緒になって「だるまさんが転んだ」や鬼ごっこ、あやとりなどで遊び、昼食はみんなでカレーを食べました。月に一度か二度の鼓笛隊の練習のおかげで音楽が好きになり、みんなで合奏して曲を奏でる感動を味わうことができました。今思えば、習い事などしていなかった子どもが多かった時代、鼓笛隊は素敵な習い事でした。

音楽を習う以外にも、パネルシアターや楽しい講話などで教えを学ぶ時間もありました。パネルシアターでは、「腹も立ったぞ、毛も立つぞ!」という歌に合わせて、腹を立てた子どもの髪の毛が一瞬で逆立つという演出があって、びっくりしました。

腹を立てると心にほこりが積もってしまうから、ほこりを払ってきれいな心になろうという歌で、そのあと箒が出てきて腹立ちの心を払うと、髪の毛は元に戻るというお話でした。他にも良くない心の使い方を、楽しい歌とイラストで見せてくれて、子どもながらに「良い心のほうがええなあ」と思ったものです。

また、別のお話名人のおじさんは、こんな言葉を教えてくれました。「まま食べるのも月日やで、物言うのも月日やで、これ分からんがざんねんざんねん」というお言葉です。おじさんは、「ご飯を食べられるのも、お話ができるのも、すべて月日親神様のお働きのおかげ。それが分からず、身体は自分のものだと思い、当たり前を感謝せずに暮らしているのが、神様は残念でならないという意味です」と、分かりやすく教えてくださいました。

そのお話を聞いてから、鼓笛隊の食事の時は、みんなで手を合わせ、声を揃えて「まま食べるのも月日やで」とこのお言葉を唱えてから、「いただきます」をするようになりました。

あれから40年以上が経ちますが、先日、この言葉が鮮やかによみがえる出来事がありました。

それは息子の手術の時でした。私には四人の子どもがいますが、11歳になる一番下の息子は重度の障害があり、痰の吸引や胃ろうなどの医療的ケアが必要です。

昨年末に胃ろうの手術をしました。それまで口からミキサー食を食べていましたが、成長に伴い栄養が足りなくなり、胃に直接栄養を届ける胃ろうが必要になったのです。また、逆流性食道炎になるのを防ぐため、胃の入り口を狭くする手術も併せて行われました。

手術に際し、担当医から説明を受けました。

「術後は小児の集中治療室に入ります。すぐに自発呼吸が戻ればいいのですが、戻りにくい場合はしばらく人工呼吸器をつけて様子を見ます。また、術後すぐに胃が動く人もいますが、三週間ほどしてようやく動き始める人もいます。動いているかどうか検査をしてから、胃ろうを使います」

それを聞いて、私はびっくりしてしまい、「お医者様でも動くか動かないか分からないんですか? 三週間も動かなかったら、もう二度と動かない可能性もあるんじゃないですか?」と思わず尋ねてしまいました。

すると、「医者でもいつ胃が動き始めるのか全く分かりません。でも、時間が掛かってもちゃんと動き出しますので安心してください」と答えてくださいました。

私はこの時、幼い頃に聞いた「まま食べるのも月日やで」のお言葉が頭を駆け巡り、言葉にならないほどの感動で胸がいっぱいになりました。

「人間の身体は何てすごいんだろう! 呼吸をすることも、胃が動いて食べた物が自然に消化されることも、当たり前と思って過ごしているけれど、何て素晴らしいお働きなんだろう!」

と、神様への感謝の気持ちが込み上げてきました。

手術当日、息子の身体におさづけというお祈りをし、身体のお働きに感謝して手術室へ送り出しました。術後すぐに自発呼吸が戻り、胃もすぐに動き出して胃ろうが使えると分かった時、有り難くて涙が出ました。

この素晴らしい身体をお貸し下さっている神様への感謝を忘れず、幼い頃、楽しいお話で心に宝を授けて下さったおじさんたちに代わって、子どもたちに大切なことを伝えていけたらと思います。

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