(天理教の時間)
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第1278回2024年4月19日配信

東京スカイツリーから、こんにちは ~母と子の絆は永遠です~

吉永先生
吉永 道子

文:吉永 道子

第1157回

短い言葉や会話の中で

大事な会議に向かう途中に車がパンク。気が滅入っている時、ロードサービスの若者との何気ない会話に元気をもらった。

短い言葉や会話の中で

北海道在住  高橋 太志

 

先日、教会から約50キロ先の場所で会議があり、乗用車で移動していました。あと10分ほどで到着という辺りでコンビニが見えたので、飲み物を買おうと立ち寄りました。

お茶を買って戻ると、何か車に違和感を感じ、外観を見回すと、なんと左の前輪タイヤがパンクしていました。コンビニに入るまで、まったく問題なく走っていたのにどういうことだろう。不思議に思いましたが、まずは会議に遅れると連絡を入れ、それからタイヤを交換することにしました。ところが、トランクの下に収納されていたスペアタイヤは、ボルトが錆びていて取り出すことができません。近くのガソリンスタンドやカーディーラーに頼んでも、忙しいと断られてしまいました。

そこでロードサービスを呼び、コンビニの店員さんにもそのことを伝え、待つことにしました。私はパンクのせいで会議には遅れるし、どうして大事な時にこんな目に合うのだろうと、ただただ不満に思っていました。

少し経って、ロードサービスのトラックが到着しました。車を降りてきた若い男性は、「遅くなりました。お困りでしたね」と頭を下げると、テキパキとパンクの修理を始めました。作業中、私がすぐにでも会議に行きたいことや、近くのガソリンスタンドやカーディーラーに修理を断られたことなどを話すと、「失礼ですが、不幸中の幸いですね」と言うのです。

男性は手を動かしながら、「ここはコンビニの大きな駐車場なので、作業用のトラックも他のお客さんの迷惑になっていませんし、昼間なので安心安全に作業ができます。お客さんにとっては辛い状況ですが、作業は思ったよりも早く終わると思うので、もう少し待ってくださいね」と、マスク越しからもわかる笑顔で作業を進めてくれました。

そう考えると、確かに前日には峠を走っていましたし、夜間の高速道路も使用していました。もし、そんな時だったらと思うとゾッとしました。前触れもなくパンクしてしまったことを不思議に感じていましたが、ロードサービスの男性との何気ない会話の中で元気をもらい、滅入っていた心も修理してもらったような気がしました。

そうしている間に作業は終わり、無事に会議へと向かうことができました。予期せぬトラブルではありましたが、とても心に残る出来事でした。

それから数日後、高齢の女性信者さんから、遠方にある実家まで車で送ってほしいと電話がありました。車で2時間半ほどの道中、信者さんはしばらく見られなかった窓の外の景色を眺めていました。間もなく実家に着くという時、私はロードサービスの方が短い言葉で励ましてくれたことを思い出し、信者さんに話しかけました。

「久しぶりに実家に戻れて良かったですね」。すると彼女は、「来年はもう来れないかもしれません」と答えるのです。
「来年も機会があれば送りますよ」と言っても、「今年が最後かもしれない」と言います。

「そうであれ、今日実家に戻れたことを喜びましょうよ。久しぶりに皆さんに会えるんですから」と言っても、最後まで明るい表情にはなりませんでした。

実家に無事到着して、「会長さん、ありがとうございました」とお礼の言葉をもらい、信者さんと別れました。教会に戻る最中、なにか気に障ることでも言ったのではと振り返ってみたのですが、思い当たる会話はありません。

少し気になったのが、高齢の弟さんが入院していることでした。また、彼女自身も脊椎の圧迫骨折で一時入院していたことを思い出しました。実家に帰れることを喜んでいるのだろうと思い、色々とお話をしたのですが、それ以上に不安が大きかったために、会話の中で心が通じ合わなかったことに気づきました。

天理教教祖・中山みき様「おやさま」は、どんな職業や身分の方に対しても「御苦労さま」とやさしく声を掛けられ、小さな子どもさんのことも決して呼び捨てにせず、「さん」付けで話されました。また、病人さんに対しては「かわいそうに」とお慈悲をかけられ、遠方からはるばるお越しになった方には、あたたかい労いの言葉を掛けられたと聞きます。

その人の心の状態に合った励ましや慰めの言葉を掛けることは、難しいことかもしれません。しかし、ロードサービスの男性は、初めて会った私に「遅くなりました、お困りでしたね」と、短いながらも私の気持ちに寄り添った言葉を掛けてくれました。それは、思いやりの心があったからこそ発せられた言葉であって、私にはそこが足りなかったのだと反省しました。

辛く悩んでいる方に対して、たとえ短い言葉や会話であっても、励まし、勇気づけ、喜びを伝えることは素晴らしいことです。そのような人を思いやる心が、人から人へとうつるよう心がけたいと思うのです。

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