(天理教の時間)
次回の
更新予定

第1280回2024年5月3日配信

そこにある幸せ

山本達則先生 IMG_1557
山本 達則

文:山本 達則

第1133回

子供は誰もが天才

双子の娘が高校受験を迎えた。性格の全く違う二人が、揃って同じ高校を受験することに。

子供は誰もが天才

青森県在住  井筒 悟

 

我が家には、双子の娘がいます。容姿も性格も全く違います。今年高校受験を迎えましたが、二人は地元青森の高校ではなく、奈良の天理高校を志望しました。

天理高校では、毎朝の登校前の神殿参拝など、信条教育に基づく規則正しい寮生活が待っています。それでも娘たちは、多くの先輩たちが口を揃える、「天理では、勉学やスポーツの技術もさることながら、人生を生きていく上で大切なことを教えてもらった」との声に心を動かされたのでした。

妹はがんばり屋で、将来は看護師になりたいとの夢を描き、コツコツ勉強に励んでいます。私はよく彼女に、長所伸展の法則について話をします。自分の得意なところを徹底的に伸ばすことによって、苦手なところが気にならなくなるという考え方です。勉強だけに限らず、何事にも明るく前向きな彼女に、私は「神様からいただいた才能だと思って、思いっきり伸ばしていこう」と声を掛け、励ましています。

一方の姉は、なかなか机に向かいません。ギターを弾いたり、絵を描いたり、自分は受験生だという自覚が全くないようです。

親としては、「このままでは志望校には入れない。厳しい態度で強制的に勉強させたほうが本人のためなのか?」と葛藤しながらも、ふと思い出したことがあります。

少し前になりますが、土を使わずに水と液体肥料を使った「水耕栽培」によって、一粒の種から一万数千個のトマトの実がなった巨木を見学したことがあります。遺伝子操作もせず、特殊な肥料も使っていません。大切なのは、成長の初期段階で、「水と栄養は十分にあるから、いくら大きくなってもいいんだよ」という情報をトマトに与えることだと言います。そして、育てている当人がトマトに心を通わせ、賞賛してあげることも大切らしいのです。

人間も同じかもしれません。幼い頃から愛情に包まれ、「自分の持っている力をどんどん伸ばしていっていいんだよ」という情報を与えられ続けると、子供は安心して、自分の力を伸ばしていくことができます。「あなたには素晴らしい才能がある」と、親は我が子に、先生は生徒にメッセージを送り続けることで、持って生まれた才能が花開くのかもしれません。

私はかつて教員を目指していたことがあり、母校の中学で教育実習をした経験があります。任されたクラスで「皆さんには、もともと持っている素晴らしい才能がある」と、実習期間中ずっと言い続けていました。最初はまとまりのなかったクラスでしたが、授業中も静かに話を聴いてくれるようになり、最終日にはクラス全体が笑顔にあふれていました。

受験が迫っても一向に勉強しない姉を見ながら、そんな昔の出来事を思い出していました。

「子供の存在を丸ごと受け止め、否定しない。あなたはあなたのままでいい」。そう決めた私は、彼女にとやかく言うのをやめました。

奈良での受験が終わり、青森に帰ってきた彼女たちに、二通の茶封筒が届きました。一つはA4版で分厚いものでした。妹の合格通知と入学案内です。興奮気味に喜ぶ妹の横で、姉は自分宛に来たもう一通の薄い封筒から、たった一枚の用紙を取り出しました。そこには「不合格」と書かれていました。

受験の時は、大雪の影響と新型コロナ感染予防の上から、公共の交通機関をあきらめ、急遽、青森から奈良まで軽自動車で往復2400キロの移動になりました。道中の苦労も思い出され、受験に向かって頑張った二人の姿を思うと胸が詰まります。

姉はそんな親の気持ちを察してか、「勉強してないから当然の結果だよね」と、笑顔で答えてくれました。私は「点数は取れなかったけど、お姉ちゃんには誰にも負けない優しさがあるから大丈夫だよ。屈託のない笑顔も素敵だからね。点数では表せない財産がたくさんあるんだから、自信を持って頑張ろう」そう伝えました。

その後、姉は同じ天理高校の定時制に合格。姉妹揃って入学の日を迎えることができました。

小さい時から何かと比べられてきた双子の娘を見ているからこそ、本来人間というのは、比べられない尊い存在なのだということに気づきます。いつの頃からか、人と比べ合い、人から抜きん出ることを目指すのが教育であるという考え方が定着してしまったように思えてなりません。

神様からお借りしているこの身体の、一つひとつの器官は皆、他の器官のために存在しています。何一つとして、自らのためだけに存在している器官はありません。私たち人間も同じです。「人」の「間」と書くように、人とたすけ合い、人に喜ばれ、人と人の間で生きて初めて「人間」としての存在理由が見えてきます。

子供に対しても、比べないことが大切だと双子の娘から教わりました。トマトの一粒の種が、素晴らしく成長を遂げる力を元々持っているように、子供たちも計り知れない力を持って生まれてきているのではないでしょうか。それを周りにいる私たち大人が信じることが大切です。

天才とは、天から授かった才能です。天から授かった才能には、数字で表せないものがたくさんあります。一人ひとりの子供たちが持って生まれた、その子にとってかけがえのないものが、温かい愛情によって引き出され、みんなが楽しく生きていける。そんな世の中でありますようにと、神様にお願いする毎日です。

 


 

くにさづちのみこと

 

神様は、人間が陽気ぐらしをするのを見て共に楽しみたいと、この世界と人間をお造りくだされた、私たち人類の親であります。そして今も昼夜を分かたず、この世界の隅々から私たち一人ひとりの身体に至るまで、一切のご守護をくだされています。

教えでは、この神様のご守護を十に分け、それぞれに神名をつけて説き分けられていますが、そのうちの「くにさづちのみこと」については、「人間身の内の女一の道具、皮つなぎ、世界では万つなぎの守護の理」と教えられています。

世界における「つなぎ」のご守護としては、金銭や縁談といったものがあげられます。金銭は人と人とをつなぐ道具であり、縁談は夫婦となる男女をつなぐためのものです。いずれも、人間が孤立せずに、協力し合い、たすけ合いながら生きていくために生み出されたものと言えるでしょう。

また、「つなぐ」という言葉を聞いて、チームスポーツを連想する方も多いかもしれません。サッカーやラグビーでボールをチームメートにつないで得点を目指す、また駅伝で一本のタスキに思いを込め、懸命につないでゴールを目指す。一つの目標に向かって、一人ひとりが持ち味を発揮しながら力を合わせる姿が、大きな感動を生むのです。

スポーツにおける、お互いがたすけ合う姿勢は「チームワーク」と呼ばれますが、家族においてもチームワークが重要なのは言うまでもありません。

チームワークを築く上でいちばん大切なのは、相手を信頼することです。自分は偉いという高慢な心や、俺が俺がという我が身中心の心遣いは、チーム作りにおいて最も大きな支障となります。人と人とをつなぐには、何より謙虚な低い心が大切です。そうすれば相手の持ち味がはっきりと見えて、お互いの信頼関係は高まっていきます。

人との関係を言葉でつなぎ、心でつないでゆく。そのような姿勢が、和やかな家族、安定した社会を生み出す原動力になるのではないでしょうか。

(終)

天理教の時間専用プレイヤーでもっと便利にもっと身近に天理教の時間専用プレイヤーでもっと便利にもっと身近に

おすすめのおはなし