(ラジオ天理教の時間)
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第1216回2023年2月4日・5日

食べ物を通して感じること

岡先生(掲載)
岡 定紀

文:岡 定紀

第1099回

人の心が分かるんですか?

心理学は人気の高い学問だ。しかしそれを学んだからといって、〝人の心が分かるようになる〟というわけではない。

人の心が分かるんですか?

奈良県在住  金山 元春

私は大学で心理学を教えています。臨床心理士というカウンセラーの資格も持っています。私の職業を知った人の中には、「心理学の先生だったら、人の心が分かるんですか?」と興味深そうにたずねてくる人もいます。また、大学でも心理学専攻は人気が高く、毎年多くの高校生が受験します。こうしたことから、世の中の心理学に対する関心の高さがうかがわれます。

人の心というものは形がなく、見えないものです。それだけに不思議で、多くの人が興味や関心を持つのでしょう。また、人間関係は複雑ですから、誰もが「あの人の本心が知りたい」と思っていたり、「あの人は本音ではどう思っているのだろう?」と、心のどこかで不安を抱えていたりするのではないでしょうか。世の人々は、心理学がそうした思いや興味・関心にこたえてくれると期待しているようなのです。

しかし、残念ながら、大学に入って心理学を学んだからといって、人の心が分かるようにはなりません。むしろ、心理学を学び、人の相談に応じるための専門的な訓練を受けた者は、「人の心は簡単に分かるものではない」ということを骨身に染みて分かっています。
だからこそ、そうした専門家は、簡単に人を決めつけることなく、相手の理解に努め、良好な関係を築くために、自らコミュニケーションを工夫することに力を注ぐのです。

神様のお言葉に、

 ひとのこゝろといふものハ
 ちよとにわからんものなるぞ (「みかぐらうた」十下り目 一ツ)

とあります。
神様は、「あの人は〇〇な人だから」と分かったつもりになったり、「あの人は〇〇と思っているに違いない」と決め付けたりしがちな私たちに、人の心というものはそんなに簡単に分かるものではない、と教えてくださっているのです。

また、このお言葉は、相手に対して「どうして分かってくれないの?」と不満を抱えやすい私たちに、人の心は複雑なので、なかなか分かってもらえるものではない。相手を変えようとするよりも、こちらの思いが届くよう、まずは自らを省みるように、と教えられているようにも受け取れます。

とりわけ家族については、身近であるだけに、お互いに分かったつもりになっていることが多いと思います。「きっとこうしてくれるだろう」と勝手な期待をしたり、「みなまで言わなくても分かってほしい」と甘えが出たりして、相手を理解しようとすることを怠りがちです。

このことについても、神様は、

 をやこでもふう/\のなかもきよたいも
 みなめへ/\に心ちがうで (「おふでさき」五 8)

と、やさしく諭してくださっています。
家族であっても、それぞれの心で思っていることは違います。分かったつもりになって相手のことを決めつけたり、分かってほしいと相手に求めたりする前に、こちらから相手の理解に努めることが大切なのではないでしょうか。

これは、子育てにおいても大切な心構えだと思います。私も子供を育てる親ですが、子育ては悪戦苦闘の連続です。幼い時には勉強を見てあげたりしても、なかなか要領をつかんでくれません。
すでに教えたはずのことなのに、「え~、分からん…」とまごつかれることもあります。
そうすると、「何でこんな簡単なことが分からないの!」と厳しい口調で叱ってしまい、あとで後悔することもあります。

また、大きくなって思春期を迎えると、子供は親にとって心配になることや気になることを沢山するようになります。その都度言って聞かせるのですが、子供の態度はなかなか変わりません。
「あんたって子は、これだけ言っても分からないの?」と叱りつけても、子供の態度はかえって頑なになるだけです。
そうなると、「もう、この子は何を考えているのか分からない」とさじを投げたくなります。

こうした悪戦苦闘の渦中にいると、
「よその家はもっとうまくやれているはず」
「うちだけおかしいんじゃないか」
「こんなことじゃ、父親失格、母親失格だ」
などと自分を追い詰めてしまいそうになりますが、安心してください。子育てに悩んでいるのはどこも一緒です。もちろん、私もそうです。

「この子はどうして分からないの!」とイライラしたり、「この子の心が分からない」と悩んだりするのは、「親子なんだから分かるはず」という前提に立っているからです。
まずは、その前提を変えましょう。親子でも人間同士ですから、一緒にいるだけで何もかも分かり合えるわけではありません。

何しろ神様が、「親子であってもそれぞれの心は違う。人の心というものはちょっとには分からないものだし、そんな簡単にこちらの思いを分かってもらえるものでもない」と仰っているのですから。

こうして、お互いになかなか分かり合えないのが当然、という前提に立てると、むしろ心に余裕が生まれて、相手の思いにじっくりと耳を傾けたり、こちらの思いを丁寧に伝えたりすることができるようになります。
そうした関係を続けていると、やがて「この子はこんなことを思っているのではないかなあ」と相手の気持ちを察することができるようになったり、「もしかして、こう思っているんじゃないの?」などと、相手の腑に落ちる言葉を伝えることができるようになったりします。

家族の中でカウンセラーのように振る舞うのは不自然ですし、その必要もありませんが、まずは食卓で家族の話を丁寧に聴くことから始めてみてはいかがでしょうか。

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