(天理教の時間)
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第1405回2026年9月25日配信

伝えたい思いがある

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関根 健一

文:関根 健一

第1393回

お下がりのセーラー服

娘が高校入学早々、セーラー服を盗まれてしまった。小中とお下がりの制服で、やっと新品を着られたのに…。

心に吹く風「お下がりのセーラー服」

 

大切なことを人に伝える、その瞬間は、いつも何の前触れもなく突然にやって来ます。

私はある教会をお預かりしている教会長です。うちの長女は、近所の子供さん方のお下がりの制服で小学校、中学校と通わせていただきました。別に教会だから辛抱しなければならない、新品を買ってはいけない、というルールはないのですが、事実、少し不自由なくらいが子育ての環境には適しています。私はそう思って、子供たちにあえて不自由な暮らしを強いてきました。

娘が高校に進学したときの話です。さすがに高校の制服は、近所に通っていた人がいなかったので新品を買うことにしました。

入学式で着用するために、合格者招集のときに採寸しました。娘は「いままでずっと人のお下がりだったよね」と言って、たいそう喜んでいました。やがて用意ができたと店から連絡があり、真新しいセーラー服を取りに行きました。制服が届いた日、娘はよほど嬉しかったのでしょう。枕元に置いて寝ていました。

そして迎えた入学式。晴れの舞台に新品の制服で立つわが娘は、ひときわ晴れやかな表情をしていたように覚えています。

授業が始まり、テニス部に入部し、娘の高校生活は順風満帆に船出をしたと、そう思った矢先の六月のある日のこと。部活動の最中に、その制服をバッグごと盗まれてしまったのです。外部の犯行か、内部のいたずらか、いまだに真相は分かりません。

学校から連絡があり、駆けつけた私は当惑しながら校長先生の説明を聞きました。警察に届けて真相究明に努力はするが、外部の犯行の場合は見つかる可能性は低い、という説明でした。

娘の落胆ぶりはいかばかりだったでしょう。すぐに新しい制服を買い与えるには時間的にも余裕がなく、次の日、娘には体操服で登校させました。

そのとき、ある女子大学生が教育実習に来ていました。ご存じの通り、教育実習は原則として母校へ行く場合が多く、その実習生もそうでした。そして偶然にも、自分が高校生のとき着ていたセーラー服を、誰かに着てもらおうと持ってきていたのです。それを丸ごと娘に下さるということになりました。

頂いた制服を家に持って帰った娘が、その制服の入ったビニール袋を見つめながらポツリと、静かに笑って言いました。

「やっぱり、お下がりだね」

おそらく悔しさ、残念さを噛みしめてのひと言だったと思うのです。

親として、ここで何と答えるか。私はここが勝負のような気がしました。いろんな答えが頭を駆け巡りました。

「誰が盗んだんだろうね。頭にくるね」と、子供と一緒に怒る。これも一つの答え。「やはり新品は、縁がなかったのかもしれないね」と諭す。これも一つの答えでしょう。

私はとっさに思案しました。天理教の教祖、中山みき様なら何とお答えになるだろう。誰かを悪者にして、子供と一緒に腹をお立てになるだろうか。教祖の教えに、そんな教えがあるだろうか。また、うなだれている人の背中に向かって、「縁がなかった」と突き放すような言葉をかける教えがあるだろうか。そのどちらでもないような気がします。

そこで、私の口をついて出てきた言葉は、「な、これで人さまの真実が分かっただろ」でした。

この答えが正解だったのか、いまでも自信はありません。もっと正しい答えがあったのかもしれない。しかし、直前までうなだれていた娘は、この言葉を聞いてハッと顔を上げ、目を輝かせました。そして、嬉しそうに「うん」とうなずいたのです。

その娘は、縁あってある教会に嫁ぎました。願わくは、人に対していつも喜びの言葉を出せる人であってほしい。親としてそう願っています。

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