(天理教の時間)
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第1407回2026年10月9日配信

転んで見えたもの

家族円満 花田浩美
花田 浩美

文:花田 浩美

第1389回

思いは誰かに届く

親神様は人間創造において、談じ合いを経て、様々な道具をお引き寄せになった。そこに私たちの歩みのヒントが。

心に吹く風「思いは誰かに届く」

 

私は天理教の教会長ですが、それ以外にもいろんな活動に関わっています。宗教家としての熊本刑務所教誨師、行政では主任児童委員、そして学校ではコミュニティー・ティーチャーという立場を頂いて、たびたび小学校の英語の授業にアシスタントとして入っています。

あれは六年前のことでした。私の受け持っていた小学校六年生のクラスで、ちょっとした問題がこじれて、学級崩壊寸前まで追い込まれてしまいました。授業中も数人の児童が席を立ってうろつき、妨害してまともな授業になりません。先生は一生懸命に授業を立て直そうとしますが、子供たちは全く言うことを聞きません。先生の根気も限界に近づいていました。

卒業式が近くなったある日、こう申し出ました。

「一時間、私に道徳の授業をさせてくださいませんか。この子たちに伝えたいことがあるのです」

クラスの様子に手を焼いていた校長先生は、すぐに快諾してくださいました。

私はスライドを用いて、阪神・淡路大震災と東日本大震災の被災地へ、ボランティアに行ったときの写真を子供たちに見せました。

「人間とは、自分がつらく悲しいときにでも、もっとつらい思いをしている人を思いやることができる。そんな人間本来の、美しい心が現れる場面をたくさん見てきた。君たちにも、つらいことや嫌なことがあるだろう。もうどうなってもいいや、と思うことだってあるかもしれない。でも、そんなときに今日の話を思い出してほしい。もっとつらい人はいないかな。もっと苦しんでいる人はいないかな。自分もそうやって他人を思いやれる、美しい人間の一人であることを信じてほしい」

これで学級崩壊が見事に解決し、子供たちが立ち直った、となれば格好いいのですが、現実は、そう甘くありません。もちろん、真剣に聞いてくれている子もいましたが、相変わらず数人の子供は全く話を聞かず、うろうろするばかり。サポートに入ってくださった校長先生、教頭先生は、申し訳なさそうに目を落とされました。

私は「ああ、徒労に終わった」と、自分の力が足りないことを痛感しました。その後も苦い思い出として、ずっと心に小さな痛みを感じていたのです。

さて先日、息子が通っていた高校のPTA役員のOB会がありました。そこで、一年だけ役員をご一緒したある保護者の方が、私のところに来て、こうおっしゃいました。

「あなたは私の息子の運命を変えた人なんです」

 私は突然の話に驚きました。

「息子は今年、〇〇大学の理学部地球科学科を受験します。なぜだか分かりますか?」

「分かりません」

「息子は〇〇小学校の出身です」

はっとしました。そうです。あの学級崩壊寸前の小学校でした。あれから六年。あの、あどけなかった小学生たちは、もう大学を受験する年齢になっていたのです。

「あなたは最後の道徳の授業で、息子たちに震災の話をしてくださったそうですね。あの晩、すごく感動したと、息子が私に話してくれました。それ以来、息子は地震に興味を覚えまして、中学校でもずっと、独学で地震のことを勉強していました。そして、いつの日か日本を、地震に負けない災害に強い国にしたいと思うようになったようです。そのために、大学でもっと地震について学びたいと猛勉強を重ね、今日まで頑張ってきたんです」

「そうでしたか。あの中にお子さんが…」

私は、子供たちに思いが全く届かなかったと心を倒していましたが、そうではありませんでした。あのときのつらい思い出も手伝って、思わず目頭が熱くなりました。

一生懸命に何かを伝えようとすれば、心に響く人がどこかにいるのですね。思いは誰かに届きます。決して無駄にはならないのです。

そして、一生懸命に伝えようとした真心を一番ご存じなのは? そう。すべてを見抜き見通しておられる神様ですよね。

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