災救隊愛知教区隊 「ゲリラ豪雨」被災地へ(9・1)

■2008年10月20日

「ゲリラ豪雨」被災地へ

この夏、日本列島は予測不能な局地的大雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」に見舞われた。 8月28日から29日未明にかけて、関東・東海地方では、活発な前線と低気圧の影響で記録的な豪雨が発生。一時50万世帯に「避難勧告」が出された愛知県岡崎市と名古屋市などでは、床上浸水2千270棟、床下浸水1万1千202棟という甚大な被害を受けた。 こうした事態に災害救援ひのきしん隊(=災救隊)愛知教区隊(畑中正彦隊長)は29日午後、最も被害の大きかった岡崎市を視察。その後も市と折衝を重ね、9月1日に市のボランティアセンターの要請を受けて現地へ出動した。 7日間で延べ551人が、家屋に流れ込んだ土砂の搬出と、水に浸かった家財道具の整理などに力を尽くした。

被災者の声に耳を傾け  7日間100軒の復旧作業

「ゲ リラ豪雨」に見舞われた愛知県岡崎市へ出動した災害救援ひのきしん隊(=災救隊)愛知教区隊(畑中正彦隊長)は、9月1日から7日間にわたって実動した。 初日は、被災者からボランティアセンターへ依頼のあった作業に従事。翌日以降はセンターの信頼を得、独立した”別動隊”として一軒ずつ訪ね歩き、被災者の ニーズに応えるきめ細かな復旧作業を展開した。 8月29日未明、岡崎市の時間雨量は146・5ミリと県内での過去最多雨量を記録。市内の5河川が氾濫し、濁流が住宅街へ押し寄せ、床上浸水890棟、床下浸水1千610棟の被害が出た。 同日午後、仲川孝司・岡崎支部長(58歳)が現地を視察。事態を重く見た仲川支部長は、市へ災救隊の説明に赴き、出動を打診した。 しかし一部の被災地は、いまだ水が引いていないこともあり、行政は混乱状態にあった。 31日、市のボランティアセンターが立ち上げられた。休日とあって、一般ボランティアが大挙して駆けつけたため、愛知教区隊は待機状態に。 ところが午後5時すぎ、仲川支部長のもとへ「平日はボランティアの数が少なくなるので、天理教の方々で手伝ってもらいたい」と、センターから連絡が入った。 「レベルが違う」 翌9月1日、愛知教区隊133人は最も被害の大きかった市内の伊賀町や元能見町など6町へ出向いた。隊員たちは一般ボランティアに交じって、家屋に流れ込んだ土砂や水浸しの家財道具などを搬出した。 作業終了後、畑中隊長は各ボランティア団体が集まった会議に出席。このとき、災救隊の迅速かつ組織的な作業が高い評価を受け、翌日からは災救隊独自に被災者の要望を聞いて作業を進めることが決定した。 この席上、災救隊を”別動隊”として後押ししたのはNPO法人「レスキューストックヤード」の浦野愛・事務局長。今回、市のボランティアセンターの運営 に携わった浦野さんは「過去の実績でも明らかな通り、災救隊は災害現場の作業を熟知しており、一般ボランティアとはレベルが違う。センターの組織に属さ ず、独自に動いてもらったほうがいいと判断した」と話す。 「ありがたかった」 2日、隊員ら65人は伊賀町と元能見町で、前日の作業を継続する一方、手分けして住宅街を一軒ずつ訪ね歩いた。 伊賀町では、1階部分が冠水した住宅もあり、細い路地に泥まみれの家財道具が積み上げられ、異臭を放っている。 早速、この住宅地に暮らす老婦人(73歳)から依頼を受け、隊員たちは濁流に浸かった家具を運び出し、使えそうな物は水できれいに洗った。 その老婦人は「今回の水害で、自宅の裏に住んでいたおばあさんが亡くなって……。私の思い出の品も水に浸かって落ち込んでいたが、皆さんの優しい心配りに元気づけられた」と目を潤ませた。 元能見町では、比較的被害の小さかった住民からも次々と依頼が舞い込んだ。隊員たちは手分けして被災者の要望に応える作業に着手。大量のゴミの片づけを 依頼した40代の女性は「平日はボランティアの数が少ないので、被害の大きい家が優先されがち。うちは30センチほど水が溜まっただけだが、災害から5日 経っても片づけが終わらない。天理教の人が来てくれて、本当にたすかった」と胸を撫で下ろした。 2軒隣の男性(37歳)宅では、隊員二人が庭に流れ込んだ土砂をスコップで取り除いていた。「ボランティアセンターへ作業を申し込むにも、どの程度の被 害なら可能なのか判断に困っていた。ちょうどそこに皆さんが訪ねてくれて、実際に被害状況を見て判断してもらえたので、ありがたかった」と。 「心が救われた」 この日も時折、激しい雨が集中的に降った。そのたびに被災者は顔を強張らせた。 隊員の一人は「作業に全力を尽くすのはもちろんだが、被災者の心のケアも大事。声をかけ、話をする中で、少しでも気を紛らせてもらえれば」と語る。 休憩中、そんな隊員らと話し込んでいた女性(68歳)は「天理教の災救隊はすごいねえ。人のことを思いやり、嫌な顔ひとつせずに、どんな作業でも丁寧にしていただける」と笑顔を見せた。 翌3日も隊員らは元能見町の住宅を回り、地道な”ローラー作戦”を展開。そんななか、80代の老夫婦から、水害後ほとんど手つかず状態の家屋の清掃を依頼された。前日、隊員がこの家を訪ねたとき、夫(85歳)は頑なに作業を拒んでいたという。 隊員20人ほどが畳や家具の整理をはじめ、床板を外して床下の土砂を搬出するなど、一日がかりの作業となった。 終了後、妻(80歳)は「ボランティアの方が何人も『手伝いましょうか?』と言ってくれても、夫は断り続けて、時には暴言さえ吐いていた。夫は心身とも に限界に来ていたに違いない。天理教の皆さんに手伝っていただいて、夫もようやく笑顔を見せるようになった。今日は昼食もよく食べてくれた。肩の荷が下 り、心が救われたのだと思う」と、しみじみ語った。

なお、愛知教区隊は7日まで出動し、約100軒の復旧作業を引き受けた。

(立教171年9月14日号)