(ラジオ天理教の時間)
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第1206回2022年11月26日・27日放送

せっちゃんとの出会い

辻さん01
辻 治美

文:辻 治美

第1190回

心を通して見えるこの世界

家族との関係がうまくいかず、うつ状態の婦人が相談に来た。彼女は「母親に愛されずに育ちました」と過去を語るが…。

心を通して見えるこの世界

青森県在住  井筒 悟

 

青森には、全国的に有名な弘前公園の桜があります。公園内にはソメイヨシノを中心に、シダレザクラ、八重桜など、およそ50種類、2600本の桜が植えられています。

リンゴの木の剪定技術を応用しているため、一般の桜よりも花つきが良いとも言われています。雪深く厳しい冬があればこそ、雪国津軽の人々は、桜咲くうららかな春を心待ちにしています。一年で最も心躍る季節と言っても過言ではありません。

そんな頃、隣り町に住むAさんが、相談に乗ってほしいと、若いご婦人のK子さんを連れて訪ねてきました。K子さんは、私とは初対面です。「こんにちは!」とあいさつをしても、K子さんはニコリともせず下を向いたままです。何か尋ねても口を開かず、目も合わそうとしません。

おたすけ熱心のAさんが言うには、K子さんは普段から何事にもやる気が出ず、うつ状態だといいます。夫とも別居状態とのこと。Aさんからひと通り話を聞いた後、「お話の通りなんですか?」とK子さんに尋ねましたが、軽くうなずくだけで言葉が出てきません。部屋には重苦しい空気が流れていました。

その時、妻がお茶を持って部屋に入ってきました。普段からAさんと仲の良妻は開口一番、「笑顔でトイレ掃除をしていると不思議なことが起こるのよ。この間も思わぬ臨時収入が入ってきてねえ」と、最近お金の回りがいいのはトイレ掃除のおかげかもしれないと、話し始めました。

それまでの重い空気が和らぎ、笑いに包まれていきます。「お金は、人に喜ばれる方向にどんどん使うといいわよ。水とお金は貯めると腐るの。だからね、流れていることが大切なの。トイレ掃除をすると、水と一緒にお金の流れも良くなるみたいなのよねー」

妻が初対面のK子さんに笑顔で話すと、ふさぎ込んでいたK子さんにも、かすかな笑みがこぼれました。笑いが固くなっている心を少しずつ溶かしていくようでした。

すると、今までうつむいていたK子さんが突然、話し出しました。

「私、母親に愛されて育ちませんでした。だから旦那にも子どもにも、どう接したらいいか分からず、イライラする毎日なんです。そうしているうちにどんどん苦しくなって…」

それを聞いて、日頃から熱心に心の勉強をしているAさんが、「会長さん、K子さんは承認欲求が満たされずに、苦しんでいるのではないでしょうか」と言います。最近よく聞くようになった「承認欲求」とは、他者から認められたい、自分を価値ある存在として認めたいという願望です。親から愛されたいという気持ちでもあります。

Aさんは続けます。「K子さんは母親から愛されたいという気持ちが満たされずに、気分が落ち込んでしまうのだと思います。そのことが、旦那さんとの関係にも影響を及ぼしているのかもしれません。会長さん、小さい頃、愛情を受けられずにポッカリ開いてしまった心の穴を、大人になってから埋めることって出来るのでしょうか?」

果たして解決方法はあるのかと、Aさんは身を乗り出して迫ってきます。承認欲求や、幼少期の親子関係の解決方法が、精神科医でもない私に分かるはずもなく、まして悩んでいるK子さんとは今日が初対面です。私は、「今日はお話を聞くだけにしておきます」と答えるのが精一杯でした。

ただその時に漠然と感じたのは、「大切なのは、過去の原因探しではないのでは?」ということでした。仮に過去に原因があったとしても、タイムマシーンがない限り、その頃に戻ってやり直すことはできません。それに、もし過去の出来事だけで今が決定づけられるなら、教育やおたすけの入り込む余地はなくなってしまうのではないでしょうか。

後日、K子さんのお母さんとお会いする機会を作っていただきました。お母さんは教育者で、とても明るく元気な方でした。これまでのいきさつをお伝えすると、自分なりに娘に愛情をかけて育てたつもりだったが、そのような辛い思いをさせて申し訳ないと、涙ながらに話してくださいました。

数週間が過ぎ、再びAさんとK子さんが訪ねて来ました。K子さんは驚くほど元気になっていました。開口一番、「この間のお話が面白かったので、今日も楽しみにしてきました」と言います。深刻になるのを避け、冗談を交えて面白おかしく話したのが良かったようです。

K子さんは、妻の話を聞いてから、毎日トイレ掃除を続けているそうです。

「立派な人間になろうなんて思っていません。私もお金回りが良くなればいいなあと思って」と明るく答えてくれます。

私はK子さんに、お母さんから聞いたことを伝えました。

「お母さんは、あなたを愛情を持って育てたと話してくれました。親子ですから、色々ないきさつがあったのでしょう。でも、今あなたは、相談に乗ってくれたAさんをはじめ、たくさんの仲間に囲まれています。みんながあなたを応援してくれています。

大切なのは今現在の心のあり方です。あなた自身の心が、これからのあなたの人生を作っていきます。どんな時も明るく積極的な心を持っていれば、必ず道が開けていきます。先が楽しみですね。お母さんのことを受け入れられる時が、きっと来ますよ」

そう伝えると、彼女の目からは涙がこぼれていました。

その後、K子さんは素直な気持ちでお母さんを受け入れるようになり、ケンカの絶えなかった親子関係は劇的に改善されました。と同時に、K子さんのうつの症状も回復していったのです。

私たちは、起こってくる不都合な出来事に対して、外に向けて責任を転嫁していることが多々あるのではないでしょうか。問題の原因はいくらでも挙げることができますが、最も大切なのは今の心です。自らの心を通して見えてくるこの世界です。

どんな時でも、心の持ち方によって自らの運命を切り開く力が生まれてくるのです。

 


 

誠真実

 

幼い子供が川でおぼれているのを見て、飛び込んでたすける人がいます。その人の心には、我が身をかばおうという思いは微塵もありません。その瞬間、我欲の一切ない、誠真実の心があらわれたのです。

こうした誠真実こそ、人間として最もうるわしい姿であって、私たち一人ひとりは元来、こうした行いの出来る魂を神様から与えられているはずなのです。ところが、実際にこの魂の特性をいかんなく発揮する人はそれほど多くありません。これは、心の奥底で輝いているはずの誠真実が、その本来の明るさを失っている状態なのです。

この誠真実を曇らせるものを、神様は「心のほこり」という言葉でお教えくだされています。「をしい・ほしい・にくい・かわい・うらみ・はらだち・よく・こうまん」と、八つのほこりを示されていますが、これすべて、元をたどれば我が身中心、我が身勝手の心遣いに行き着きます。

天理教教祖・中山みき様「おやさま」の直筆による「おふでさき」に、

  めへ/\にハがみしやんハいらんもの
  神がそれ/\みわけするぞや(五 4)

とあります。

見抜き見通しであられる神様は、それぞれの心遣いを見分け、その心通りに守護すると仰せられます。我が身思案を捨て、誠真実の心をもって、神様のお働きを十分にいただくことが、私たちにとって一番肝心なことです。

では、誠真実とはどういうことか。お言葉に、「人を救ける心は真の誠一つの理で、救ける理が救かる」(おかきさげ)とあります。ずばり誠真実とは、「人を救ける心」であり、その「人を救ける心」によって、自分もまた真にたすかっていくのだと仰せられています。

さらには、「一名一人の心に誠一つの理があれば、内々十分睦まじいという一つの理が治まる」(おかきさげ)とのお言葉によって、誠真実の心は家族や周囲の治まりにもつながるものであると、お教えくだされています。

(終)

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