(ラジオ天理教の時間)
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第1216回2023年2月4日・5日

食べ物を通して感じること

岡先生(掲載)
岡 定紀

文:岡 定紀

第1164回

おいも掘り

伯父の畑で、義父と一緒にさつまいもの収穫のお手伝い。これは私にとって、大事な親孝行の一つだ。

おいも掘り

奈良県在住  坂口 優子

 

「神様にお供えする芋、堀りに来てくれる?」と、伯父から一本の電話が。

義理の父の兄である伯父は、毎年三千本も収穫できるサツマイモの苗を植え、地域の子どもたちを芋掘りに招待したりしています。毎年教会のお供えにと声を掛けてくれるので、早速準備をして、会長である義理の父と二人で畑を訪ねました。

私は大阪府羽曳野市の住宅街育ち。畑に何かを植えて収穫したことがあるのは、小学生の頃に学校で栽培したじゃがいもだけです。お嫁に来た奈良の教会には畑がありますが、両親が留守の時にきゅうりを収穫に行くぐらいで、畑は私にとって知らない世界がいっぱいです。

それでもお嫁に来て21年、伯父の畑には子どもたちと一緒に何度も行ったことがあるので、芋掘りの手順も何となく分かっていました。

芋を掘る前には、まず蔓を切りますが、畑に着くと義父が何も言わずにその作業を始めました。

「私はこのビニールを外せばいい?」と聞くと、「せやな」と義父。ところが、ちゃんと切れていない蔓があって、ビニールが所々引っ掛かります。「もう、ここちゃんと切れてへんやん!」と、心の中で文句を言いながらも、量が多く重労働なことは分かっているので、黙ったまま、切れていない蔓に鎌を入れながらビニールを外す作業をしました。

ふと隣の義父を見ると、「さあ、掘ろ」と独り言を言いながら、スコップ片手に何か考え中の様子。これはきっと、無知な嫁でも出来ることはないか探しているな? 義父の心の内を察し、こちらも「よし、掘ろ!」と、伯母に借りた大きなシャベルを得意気に手に取ってみせました。

すると義父は、そんな私の心の内を見透かすように、「掘れるか?」とニヤリ。その顔は、「そんな簡単なもんじゃないで」と語っています。でも私には自信がありました。

実はこの一週間前、末娘が通う保育園が招待を受け、少しでも伯父と伯母の力になれたらと、私もお手伝いに来ていたのです。と言っても、実際は失敗の連続でした。

「芋はねえ、遠くから掘るねんよ」と伯母からアドバイスを受け、芋の苗の遠い位置から、土を段々緩めていきます。

園児の可愛い手にも気をつけながら、芋を傷つけてしまわないように、大きなシャベルをゆっくり土に…ところが次の瞬間、シャベルを刺したそこに芋がまともに当たってしまい、見事に真っ二つ。

「わあ!でっか!」
姿を現した大きな芋に、園児は大喜びしてくれたのですが、伯父が冗談交じりに言った「おっちゃんの心も真っ二つになって泣いてんねん」との声に、申し訳ないことをしてしまったと深く反省したのです。

この経験があったので、今回は芋を切らないように頑張ろうと決意していました。それと、この日どうしても芋掘りをしたかった最大の理由は、何とか義父の力になりたいという思いでした。

お嫁に来て21年経ち、義父はまだ現役の教会長ですが、だんだんと年を重ね、最近身体に無理がたたることが多くなってきました。義母(はは)も近ごろ膝が痛み出し、以前のようには動けなくなっていますが、そんな中でも、私たち夫婦の未熟さゆえになかなか頼ってもらうことができません。ですからこの日ぐらいは、義母にゆっくり留守番をしてもらい、少しでも両親の力になりたいと思ったのです。

義父はこれまでも、私がやりたいと思ったことは何でもやらせてくれました。「今日は失敗できないぞ」と自分に言い聞かせ、黙々と掘っている義父を遠目に観察しながら、いざ、芋掘り!

ドキドキしながらシャベルを入れ、ゆさゆさと周りの土を緩めていくと、お芋たちが綺麗に並んでお出ましになってくれました。なんとも愛おしく、大事に引き上げて「見て!掘れたよ!」と義父に見せると、「お!うまいこと掘れたやんけ!」と、威勢のいい大和弁が返ってきました。それはそれは嬉しくなって、夢中で次々に掘りました。

「見て!めっちゃ大きいの掘れた!」と私が声をあげると、義父も負けずに「おい、見てみ!これが今までで一番大きいで」と、いつの間にか始まった「どっちが大きい芋掘ったか選手権」。

負けてられない!と再び集中していると、「ほいっ!」と突然大きな声を出す義父。「何?」とたずねると、無言で私の足元を指します。「ん?」よく見ると、そこには大きな芋虫が! 「いや!何すんの!これ、なに!?」私は大パニック。義父の作戦通りです。

「そんなん見たことないやろ?」と大笑いの義父。やられました…。自然に関して無知な私を、こうして時々驚かせたり可愛い嘘をついたりして、楽しませてくれるのです。

天理教では、「親への孝心は月日への孝心と受け取る」と教えられます。親へ尽くす真心は、神様への孝行に通じるとの教えです。

「うまいこと掘るやんか~!全然切れてないやん」。様子を見に来た伯母が、きれいに掘れたたくさんの芋を見て褒めてくれました。茶色い畑に、鮮やかな紫色の芋が並んでいる光景を一緒に見ながら、私は「神様、喜んでくださるやろうねえ。ありがとうございます」と答えました。

けれど、神様は芋が収穫できたことよりも、きっと芋に囲まれて笑い合っている義父と私の姿を喜んでくださっているのでは? 温かい陽の光を浴びながら、そんなことを思うと、胸がいっぱいになったのでした。

一緒に昼食を食べながら、「お前もええ戦力や」と笑う義父。少しは親孝行できたかなあ…。一生忘れられない、おいも掘りの一日でした。

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