(天理教の時間)
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第1333回2025年5月9日配信

自分は自分でいいんだと思える子供に

末吉喜恵先生
末吉 喜恵

文:末吉 喜恵

第1332回

メグちゃん、「ようぼく」になる

結婚するまで、天理教のことを何も知らなった夫。そんな彼が「ようぼく」になるまでのプロセスを紹介します。

メグちゃん、『ようぼく』になる

 助産師  目黒 和加子

 

『ようぼく』。リスナーの皆さんには聞きなれない言葉ですよね。天理教教会本部で神様のお話を聴くことを「別席を運ぶ」と言うのですが、その別席を九回運び、おさづけの理を戴くと、ようぼくにならせて頂くことが出来ます。天理教が目指す「陽気ぐらし」に向け、教祖の手足となって働くのがようぼくです。

私の夫、メグちゃんは結婚前、天理教を全く知らない人でした。

「天理教?そんな宗教があるんだ。信教の自由は日本国憲法で保障されているから、結婚してからも遠慮なく信仰を続けてね。けれど、僕を勧誘しないでね」と言っていた彼。その彼が、ようぼくになるまでのプロセスを書いてみます。

あるお産の現場で重症仮死で生まれてきた赤ちゃんがいました。心臓はわずかに動いていますが、産声を上げません。直ちに新生児集中治療室に救急搬送したのですが、搬送先から戻ってきたドクターは思いつめた顔で、「かなり厳しい状況です…」とがっくり肩を落としています。

「こうなったら神さんしかない!」ロッカールームに飛んで行き、近所の鶴湘南分教会に電話をしました。

「赤ちゃんが重症仮死で大きい病院に運ばれました。大至急、神様にお願いしてください!」

「分かった。直ぐにお願いづとめにかかるから!」と、会長さんの力強い声。仕事が終わるや否や、車をぶっ飛ばして鶴湘南分教会へ。財布の中身を全部お供えして、赤ちゃんのたすかりを一心に祈りました。

帰宅するとメグちゃんが先に帰っていて、「今日は遅かったね。何かあったの?」と訊ねます。

「赤ちゃんが重症の仮死状態で産まれてきて、大きい病院に搬送になってん。どうでもたすかって欲しいから、鶴湘南さんに行って神さんにお願いしてきた」

「また財布をひっくり返して賽銭箱に入れてきたの?」

「だって、こうなったら神さんしかないやん」

「和加ちゃんがエラーしたから仮死状態になったの?」

「ちゃうよ。へその緒が首に三重に巻きついてて、産道通過の時に引っ張られて低酸素状態になったからやで」

「へその緒が三重に巻きついたのは和加ちゃんのせいなの?」

「ちゃうちゃう。私のせいでも、お母さんのせいでも、赤ちゃんのせいでもない。子宮の中で、たまたまそうなってん」

「それなら、どうして和加ちゃんが自分のお金をお供えするの?」

「だって、昔からのご縁があるから私が取り上げさせてもらったんやで。これは、たまたまとちゃうねん」

「昔からのご縁ってどうゆうこと?」

「前生からのご縁があるねん。今世では私が助産師としてお世話させてもらってるけど、前生では私が産婦さんや赤ちゃんにお世話になった御恩があると思ってるから。だから出来ることを精一杯させてもらうねん」

「前生?今世?御恩?よく分からないなあ。それと和加ちゃんはいつも自分のことより人を優先するのはどうして?」

「教祖がそうしてはったから」

「おやさま?おやさまって誰? こないだも大出血した産婦さんのお願いに、ボーナス全部お供えしてたよね。自分が働いたお金を他人のために使うってどういうこと?」

「他人とちゃうって。お産でかかわる産婦さんや赤ちゃんは、前生からのご縁のある人やねんって」

「う~ん。僕が生きてきた中で初めて聞く考え方と行動なんだよ。和加ちゃんを理解するには、天理教を知らないといけないようだね」

そんなことを言い出した彼は、天理教基礎講座を受講し、別席も運び始めましたが、途中で足踏み状態に。うるさく言えば運んでくれるでしょうが、自ら求める気持ちになるまで待つことにしました。

そんなある日のこと、東京のT分教会から講演依頼がありました。今回はノートパソコン、プロジェクター、スクリーンを使い、『稿本教祖伝』の「をびやためし」についてお話をするのですが、私はこういう機器類の操作が苦手。システムエンジニアのメグちゃんについて来てもらうことにしました。

広い会場で「をびやためし」のお話をしていた最中の出来事です。前方の左手からすすり泣く声が聞こえます。どなたかしらと見回すと、なんとT分教会の会長さんでした。

教祖は44歳の時、妊娠七か月目で流産となり、自らのお体を通して「をびやためし」をされました。それについての私の考察を聞き、男性の会長さんが涙をポロポロ流して鼻水をすすり、子供のように泣いておられるのです。その姿をメグちゃんも見ていました。

会長さんは「読むだけで終わっていた『をびやためし』の中の教祖の親心が胸に迫って。途中から泣けて泣けて…」と、目頭を押さえておられます。

帰りの車中、メグちゃんは「天理教の人は教祖のことが大好きなんだね」と呟き、何か考えている様子。そして「和加ちゃんの人生の指針となっている教祖のことを、もっと知りたい。来週、天理に行って神様のお話し聴いてきます」と言い出したのです。

結婚して13年が経ち、メグちゃんは「ようぼく」になりました。それから数か月後、メグちゃんもようぼくになったんやなあと、確信する出来事が起きたのです。

その日、メグちゃんは帰宅するなり真剣な顔をしていました。

「今朝、電車で座席に座って本を読んでたら、急に周囲がざわざわし始めて。どうしたのかなと様子を見ると、ドアの近くに男の人がうずくまって、顔面蒼白で胸を押さえて苦しんでて。けれど、周りにいる人はスマホを見てたり、外を見てたり、見てみぬふり。誰も声をかけない。ほっとけないと思って次の駅でその人を降ろして、駅員さんに連絡して。救急隊が到着するのを見届けてから出勤したら、遅刻してね。もちろん会社に電話してあったけど、上司から『お節介もほどほどに』って苦笑いされた」

私は「メグちゃん、ようやったなあ。お節介とちゃうで。おたすけやで。教祖、めっちゃ喜んではる。わたしも嬉しいわあ♡」といっぱい褒めました。

ようぼくとして年々、頼もしくなるメグちゃん。今は夫婦で教祖のカバン持ち。重さは半分、喜びは2倍になりました。

 


 

だけど有難い「安らぎの場所」

 

フランスでは、「パックス」と呼ばれる未婚のカップルが多いようです。そのカップルから生まれる子供が、子供全体の50%を超えたというニュースを見ました。背景には、フランスでは離婚の際に財産分与が非常に厳しいなどの諸事情があるとのことですが、正式な夫婦よりもパックスのほうが一緒にいる期間が平均して短く、違う人と一緒になるケースが多いということです。子供から見れば、正式な家族ではない両親がいて、その多くが、別れてまた別の親と一緒に暮らすようになるということです。

アメリカでは以前から離婚率が50%を超えていて、互いに離婚歴のある者同士が子連れで再婚する「ステップファミリー」が増えています。それにより、子供が大きなストレスを受けることが社会問題になっています。また、実の親による子供の誘拐まで起こっています。動機は、別れた相手が幸せになることへの妬みや、自分の子供が別の親と一緒にいるのが耐えられないということです。

つらい目に遭うのは子供たちです。お父さんとお母さんが勝手に別れてしまったと思ったら、また違うお父さんやお母さんができる、違う兄弟ができる。以前は児童養護施設に入る子供というのは、親を亡くしたケースがほとんどでした。しかし、いまは親がいるにもかかわらず、何らかの理由で育てられないからと施設に預けられる。

家庭は本来、安らぎの場所です。その家庭がなくなったり、ストレスのたまる場所であったりするのですから、子供たちにとって受難の時代です。日本でも離婚率が37%、都会では40%を超えているということです。フランスやアメリカの話は決してよそごとではありません。

もちろん昔も今も、たとえ別れたくなくても、生別、死別するカップルはあります。添い遂げたくても添い遂げられない人がいるのです。そして、大変な思いをしている子供たちがいる。その子供たちをたすけるのは誰か、家庭の温もりを伝えるのは誰かと考えたときに、教会、そしてお道の者の役割は非常に大きいと思います。

教会は昔から、身寄りのないお年寄り、行き場のない若者や子供たちを預かってきました。血のつながりがなくても、一れつ兄弟姉妹という教えに基づいて、大家族として一緒に生活してきたのが教会なのです。すでに里親として預かる子供の一割以上を、お道の教会が担っています。

アルバート・ロトというピアニストがいます。この人はウクライナのユダヤ人村の出身で、子供のころ親と一緒にアメリカへ移住したそうです。のちに一度だけ故郷の村を訪れましたが、旧ソ連の時代に潰されて跡形もなかったそうです。それを見て、二度と行きたくないと思ったという話でした。

そんななかで天理教と出合い、教えを聞き、おぢばに帰ると、みんなが「おかえりなさい」と迎えてくれる。自分にも〝ふるさと〟があったと大変感激したそうです。こんな素晴らしい教えはないと、先祖代々のユダヤ教徒からお道のようぼくになりました。

私は、人間にとっての温かい家庭やふるさとは、なくてはならないものだと思うのです。お道では、夫婦が一番大切な陽気ぐらしの基本です。夫婦が互いにたすけ合い、親神様のお目に適う夫婦となり、明るく陽気な家庭を築き上げて、これを世に映していくことが大切なのです。

(終)

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