(天理教の時間)
次回の
更新予定

第1280回2024年5月3日配信

そこにある幸せ

山本達則先生 IMG_1557
山本 達則

文:山本 達則

第1246回

東京スカイツリーから、こんにちは~てんかんは、大当たり!~

テレビ局の突然の取材に、喜んで自宅を案内するゆうちゃん。おうちにはたくさんの自慢できることがあるのだ。

うらみのほこり

 

天理教教祖・中山みき様「おやさま」は、私たち人間の間違った心遣い、神様の望まれる陽気ぐらしに沿わない自分中心の心遣いを「ほこり」にたとえてお諭しくださいました。

教祖は、ほこりの心遣いを掃除する手がかりとして、「おしい・ほしい・にくい・かわい・うらみ・はらだち・よく・こうまん」の八つを教えられていますが、そのうちの「うらみ」のほこりについて、次のようにお聞かせいただいています。

うらみとは、顔をつぶされたとて人を恨み、望みを妨げられたとて人を恨み、誰がどう言ったとて人を恨み、根に持ち、銘々、知恵・力の足りないことや、徳のないことを思わず、人を恨むのはほこりであります。人を恨む前に、わが身を省みることが大切であります。

自分に不快なこと、不利益なことをした人に対して、不満や憎しみを持ち続ける心情が「うらみ」です。根に持つというように、長年にわたって人に対する憎悪の念が抜け切らない、非常に厄介なほこりです。

世の中には、いつも愚痴や不平を言っている人がいます。私は本来、こんな所で、こんなつまらない仕事をしているような人間じゃないんだ。あいつのせいでこんなことになった、世の中の仕組みが悪くてこんな羽目になったんだ、という具合に。

しかし、いつまでも過去の事柄にこだわっていては、今現在を楽しく生きることはできず、これから開かれるであろう運命をもつぶしてしまいます。ましてや、そのように人や世間を恨んで通る毎日は、非常にストレスのたまる生活であり、それが身体に障らないはずはありません。

人を恨みたい気持ちになった時には、まず自分自身を振り返ってみる。果たして自分がするべきことをしてきただろうか、自分にそれだけの徳分があるのか。そうすれば、何かしら自分が努力を怠ってきたと思い当たる節があるはずです。

また、人を恨んだり世を恨む前に、まずは身の回りの事柄に対する恩を感じることも大切です。心ない仕打ちを受けたり、不運な目に遭ったとしても、大きな目で見れば、多くの人のおかげで今があり、何より親神様の大いなるご守護によって生かされていることは間違いのない事実なのです。

教祖は、「なんぎするのもこゝろから わがみうらみであるほどに」(「みかぐらうた」十下り目 七ッ)と、難儀不自由するのも、自らの心によるのであるから、常に心遣いを反省しながら通るようにと諭されています。


 

東京スカイツリーから、こんにちは
 ~てんかんは、大当たり!~

吉永 道子

 

東京スカイツリーのある東京都墨田区。下町の小さな天理教の教会で、「かぁかのおうち」という子育て広場をやっています。ここを利用するママさんと子どもたちが、私たちスタッフと織りなす「わくわく・ドキドキ・うるうる」をお伝えします。

今日は、五人姉妹の四番目のゆうちゃんのお話をします。ゆうちゃんは小学二年生。てんかん発作の持病があります。病院での定期検査は時間がかかるので好きではありません。でも、病院が終わってからのママとの二人きりの時間が、ゆうちゃんは大好きです。

そんないつもの定期検診の帰り道。駄菓子屋さんでお菓子を買っている時のことです。カメラを持ったテレビ局の人に声を掛けられ、ゆうちゃんとママはびっくり。「家、ついて行ってイイですか?」というテレビ番組の撮影でした。

名前の通り、突然自宅を訪ねて取材をするという番組です。戸惑うママの横で、ゆうちゃんは嬉しそうに「きてきて!」と答えました。ゆうちゃんが迷いもなく来て欲しいと言ったのは、おうちに自慢できるたくさんのことがあるからです。

ゆうちゃんのおうちには、玄関が二つあります。ゆうちゃんはまず一つ目の玄関を開け、「ここは何ですか?」と聞かれると、「かぁかのおうち!」と笑顔で答えます。そして、「こっちこっち!」とカメラさんの手を引いて、かぁかのおうちを紹介していきます。

かぁかのおうちの一階は、子育て広場スペースになっています。子どもたちが安心して遊びながら、お母さんや、時にはお父さんたちも交えて、何気ない会話が弾む場所です。英語教室や誕生日会などのイベントでは、二階の神殿のスペースを使います。

ゆうちゃんも小さいながら、子どもスタッフの一員として小さい子の面倒を見てあげることがあります。ゆうちゃんは、かぁかのおうちにくる子みんなを、自分の弟や妹のように可愛がります。

次にゆうちゃんが紹介したのは、三階の部屋にいる85歳のひぃおばあちゃん。奈良県天理市のおぢばや、大阪の教会までゆうちゃんを連れて行ってくれる、いつも元気な自慢のひぃおばあちゃんです。

そして、その隣の部屋にいる三人のお姉ちゃんと妹は、ケンカもするけど、ゆうちゃんの健康状態を常に気にかけ、毎日の薬の管理などもしてくれる、とても頼りになる存在です。

最後にテレビ局の方が、「でも、病気は辛くない?」とゆうちゃんに質問しました。すると、ゆうちゃんは「てんかんは、大当たりだよ!」と答えたのです。

テレビ局の方は驚きました。いつ発作が起きるかも分からないし、毎日の薬の服用や定期健診など、大変なことがたくさんあるのに、どうしてこんなに嬉しそうなんだろう…。

 「てんかんは、神様から与えられたご褒美なんだよ。
 だから、ママと二人だけの楽しい時間もあるの」

それを聞いてテレビ局の方は確信しました。ゆうちゃんの病気を特別なものではなく、家族みんなで明るく受け止め、大切にできるのも、神様のおかげなのだと。ゆうちゃん自身が、家族を大切に思い、広場に来る小さい子たちを可愛がっているのも、そこに理由があるのです。

ゆうちゃんが主役となったこの取材の様子は、後日テレビで放送され、そこからまた新たなつながりが出来ていくのでした。

さて、かぁかのおうちで、救急・救命講座というイベントを開いた時のことです。普段よく広場を利用しているナオ君が、家族で参加していました。ナオ君は、講座の最中ジッとしていることができず、走り回っています。たくさんの人の中で大人しくするのは、特に苦手なのです。

それを見たゆうちゃんは、「こっちおいで」とナオ君を誘い、一階の子育て広場スペースで一緒に遊び始めました。二人は息がピッタリ合っていて、とても楽しそうです。

その姿を微笑ましく見ているスタッフの横で、ナオ君のお母さんはとても心配そうな様子です。ナオ君は発達障害と診断されていて、そのことでお母さんは悩んでいます。

「どうしたら、みんなの中でジッとしていられるんだろう」と、いつもお母さんは考えています。でも、かぁかのおうちに来ると、ナオ君はゆうちゃんと安心して楽しく遊ぶことができます。

「てんかんは、大当たりだよ!」そんな言葉が自然に出てくるゆうちゃんだからこそ、みんなが気になってしまうナオ君の特徴も、特別に感じることなく心から寄り添うことができるのです。

漢字で「優しい」と書いて「優(ゆう)」。名前の通り人に優しく、病気を神様から授かった贈り物であると素直に思えるゆうちゃん。人と人との心をつないでくれる、とても大切な存在です。

今日も、いつも通り、ゆうちゃんが「おかえりなさい」と、広場にやってくる子どもたちに声を掛けます。優しく、あたたかい空気になりました。

(終)

天理教の時間専用プレイヤーでもっと便利にもっと身近に天理教の時間専用プレイヤーでもっと便利にもっと身近に

おすすめのおはなし