おやのことば 8月18日

今回の原稿は、旅先で書いています。

昨日、移動中の電車内で、通路を挟んだ反対側に幼い子供を連れた母親が座っていました。線路を走る鉄道の振動が心地よく、少しうとうとしていると、子供がむずかりました。

何かが気に入らないのか、それとも何かに驚いたのか、まだ言葉をほとんど話せない幼子は、母親の問いかけには答えません。戸惑っている母親を尻目に、子供は大きな声で叫び続けています。果たして何が気に入らないのでしょう。

「安心して居よ\。どんな事あろうが、こんな事あろうが、道の上ならどんな事あろうが、理が残る」

しばらく様子を見ていると、困り果てた母親は子供に問いかけるのを諦め、最後は両手で優しく抱きしめていました。すると、子供は安心したのか、気に入らない何かを忘れてしまったのか、急に大人しくなり、車内に静けさが戻ってきました。

たとえ自分の問題は解決していなくても、母親の胸に抱かれた幼子は、安心して静かに眠っています。親の懐に抱かれた安心感が、慣れない電車内で感じていた不安や不満を上回ったのでしょうか。

スヤスヤと寝息を立てる幼子の姿を見ていると、すべてを包み込んでくれる親の存在のありがたさを感じます。さあ、旅先でもまず遥拝して、一日を始めることにしましょう。(岡)

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