
短い春があっという間に過ぎ去り、すっかり初夏の陽気となりました。それでも山間では、まだ遅咲きのサクラを見かけます。わが家の近辺でも、ようやく満開を迎えたサクラの木が美しい花を咲かせています。
花見のシーズンに散りゆくサクラを眺めるときは、風に運ばれる無数の花びらに、華やかさと同時に生命のはかなさを感じます。でも、本数が少なく、花の色も濃いこの季節のサクラの木には、むしろ生命をつなぐ力強さを感じます。
もちろん、この時期のサクラの花も、風が吹けば瞬く間に散ってしまいます。それでも、ひと月遅れでようやく開花した桜色の花びらには、生命のはかなさよりも、来年も花を咲かせるという力強さが宿っているように見えます。
「人一代と思うからならん。深い理続く/\又続く」
サクラの花が咲くのは、一度きりではありません。全く同じ花がもう一度咲くことはないでしょうが、来年もまたこの季節には、どの木にも美しい花が咲きます。もっと言えば、花が散りゆくのも、さらに生命をつないでいくためでしょう。
今日という日は、昨日の終わりを始点としますが、今日の後にはまた明日が続いていくのです。
花の散ったサクラの木には、すでに新しい葉がたくさん芽を出していました。
もうすぐ、この辺りも新緑の季節です。(岡)