おやのことば 5月1日

日常生活の何げない瞬間に、ふと、かつて経験した出来事が脳裏に浮かんでくる、そんなことはありませんか。

この間も雨の日に街中を歩いているとき、突然、6、7年前の雪の日の出来事を思い出しました。

その日は、この辺りでは珍しく、昼間から雪が降り積もり、市内の交通は少し停滞していました。そのため、小学校の低学年だった娘を自動車で学校へ迎えに行ったのですが、どうやら入れ違いになったようです。何度も学校と自宅の間を行き来し、通学路を捜しても見つかりません。そのうちに、だんだん不安と焦りが膨らんできました。

「心から不安と思えば不安、確かと思えば確か」

このくらいのことで心配するのは、少し神経質だと思うかもしれません。でも私には、かつて長女を突然に亡くした経験があり、当時は、いったん不安になると、どんどん悪いほうへ考える傾向がありました。焦る気持ちを抑えながら、もう一度引き返すと、公衆電話ボックスの前で娘が待っています。どうやら、こちらが待ち合わせ場所を勘違いしていたようです。

ずっと待っていた娘には怒られましたが、心の底から無事を感謝する気持ちが湧いてきて、思わずその場で両手を合わせました。

あのとき両手を合わせたのは、娘が見つかったからではなく、きっと毎日家族が無事に暮らせることの喜びに、あらためて気づいたからだと思います。(岡)

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