おやのことば 4月16日

「おさしづ」を拝読して気が付くことの一つは、現在の自分を過去から未来へと続く時間の流れの中で、見詰め直すことの大切さが強調されていることです。当たり前のことのようにも感じますが、意外にこれが難しい。特に、大きな身上や事情に直面したときには、目の前の痛みや悩みにとらわれて、ゆっくりと過去を振り返り、将来のことを考える、そんな余裕はないのが普通でしょう。

「今の楽しみ、先の細道。今の細道、先の楽しみ。先の道を見て居るがよい」

原文は、お道の将来についてのお言葉ですが、「先の楽しみ」という表現は、しばしば身上の伺いにも見られます。

時間を過去にさかのぼって意識することは、そんなに難しいことではありません(もちろん、「おさしづ」で頻繁に説かれている「前生いんねん」のさんげは別ですが……)。しかし、「先の楽しみ」を意識して、そこからきょうを生きる力を得ることは本当に難しい。将来のことを考えると、逆に不安になることが少なくないからです。この不安の心が、新たなトラブルを生じさせる原因になることもあるでしょう。特に、現在の状況が苦しいときには、先の不安ばかりが募ります。

こうした人間思案を超えて、目の前にある苦労や悩みの向こうに、現在は見えない将来の楽しみを実感する。「今の細道、先の楽しみ」。こうした境地になれば、どのような困難な状況にあっても、絶望することはないでしょう。はるかな昔から続く、生命の連鎖に現在の自分を位置付け、すべてを受け容れて先を楽しむ。このような生き方を可能にする信仰が伝えられているのです。(岡)

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