(天理教の時間)
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第1406回2026年10月2日配信

9年目のランドセル

yamasaki
山﨑 石根

文:山﨑 石根

第1243回

必サツ!小言封じ

せっかくの徳積みも、不足を言ってしまえば差し引きゼロ。妻の指摘に、まったく返す言葉がない。

必サツ!小言封じ

岡山県在住  山﨑 石根

 

今年の一月末頃でした。十年に一度の大寒波が日本列島を襲った日、雪道の中を帰路に着いた私は、大急ぎで車から荷物を降ろしていました。

その時、慌てていたからでしょうか、自分で開けた車のドアに、自分の顔をぶつけてしまいました。それが思いのほか痛く、うずくまっていると、妻が心配そうに駆け寄ってきてくれました。

「わあ、痛そう」と言う妻に、「それがさあ、今日、これで三回目なんよ」と、私はその日にあった出来事を伝えました。

朝、天理市の宿泊施設でトイレに入った時、便器の横にトイレットペーパーの切れ端が落ちているのを見つけました。

「こんなん、落とした人がその時に拾ったらいいのに…」

私はぶつぶつ不平を言いながら、しゃがんでそれを拾い、立ち上がろうとした時、トイレの壁にある台に頭をぶつけてしまったのです。これが思いのほか痛くて、この時も声を出してうずくまったのでした。

また、その日の午後にも、作業中に事務所のカウンターで頭を打ったのです。この時も私は、「せっかく親切でしている作業なのに、割に合わないなあ」と、心の中で小言をつぶやいていました。

それがあっての極めつきの三回目だったので、私はついていないその日の出来事を妻に聞いてもらったのでした。

すると妻は間髪入れず、「小出しで良かったやん!」と私に言ったのです。きょとんとする私に、「ホンマやったら大きな事故か病気で大変な目にあうところを、神様が三回に分けて小出しにしてくれはったんやんか~」と言うのです。

そう言われてみると、ハッと気づくことがありました。トイレの時も、事務所の時も、そして荷物を降ろす時も、全部私がぶつくさ文句を言った後の出来事でした。三回目の時も、雪で急いでいる中、玄関にあった子どもの荷物が邪魔だったので、「ちょっと~、ちゃんとしまってよ!」と、子どもに注意をした後のことだったのです。

何だか不足を言う度に神様からお叱りを受けていると感じ、落ち込んでいる私に対して、妻は一回のきついお仕置きではなく、小出しにしてくださって良かったじゃないかと言うのです。

なるほど、悟り上手、思案上手、喜び上手だなぁと、そのような指摘をしてくれる妻のことを、同じ信仰を持つ者として何だか頼もしく感じたのでした。

ずいぶん前にも、次のようなことがありました。ある夏の暑い日に、私が天理市に向かって山道を運転している時のことです。

見るからに今、交通事故が起きたばかりの状況で、乗用車同士が正面衝突し、進行方向の車線をふさいでいました。事故を起こした側の運転手と思われるお年寄りは、呆然と車の前に立ち尽くし、もう一台の方の運転手と思われる若い男性が、自ら交通整理をしていました。

私も暇だった訳ではありませんが、時間に多少余裕があったので、協力した方が良いと思い立ち、車を脇にとめ、反対車線の交通整理を始めました。

それから10分ほどしてパトカーが到着しました。降りてきたおまわりさんが、「ありがとうございます!どんな事故でしたか?」と尋ねてきたので、「僕は当事者じゃないんです。片側一車線になっていたので交通整理をさせて頂いています」と伝えると、「暑い中、ありがとうございます!すぐに応援を呼びます!」と、とても誠実に対応してくださいました。

ところが、同じく10分ほどして応援に駆けつけてきた今度のおまわりさんは、どこか不愛想に、「はい、もういいですよ」とだけ私に伝え、すぐに交通整理を始めたのです。

別にお礼を言ってもらうためにやった訳ではありませんが、当然感謝されるものと思い、何なら「いえいえ、とんでもございません」という返事を心の中で準備していた私は、拍子抜けをしてしまいました。

そして、少し腹が立ってきて、車に戻るや否や妻に電話をし、今起こった出来事についての愚痴を吐き出しました。

「暑いのを耐えながら一生懸命やったのに、お礼の一言もないんやで!どう思う?」と語気を強める私に対し、妻は、「あぁ、石根君。積んだ徳が勘定済みやなあ」と、笑いながらため息をついたのでした。

妻が言うには、せっかく良い行いをしても、最後に小言を言ってしまうと、積んだ徳が不足をした分で差し引かれ、勘定がゼロになってしまうとのこと。

これもまた、私たちの信仰でよく耳にする悟りの一つなのですが、自分事になるとつい忘れてしまう恥ずかしい有り様に、返す言葉がありませんでした。

妻はいつでも、絶妙のタイミングで神様のお話をしてくれるのです。

さて、今回、災難を小出しにしてもらうというご守護を頂戴した私は、それからしばらくの間は、ことある度にこの話を蒸し返されました。

思い通りにならずに腹を立て、「もう、どうして?」とか「何でやねん」と私が小言を言おうとする度に、「ほらほら、石根君。また、頭打つで! 積んだ徳が勘定済みになるで!」と妻が返してきます。

これぞ妻の必サツ技!「小言封じ」なのです。

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