
初めて本格的なハンバーグを食べたのは、小学4年生のときでした。
洋食店を営んでいた同級生の家へ遊びに行ったときに、厨房の中で”おやつ”として食べさせてもらいました。焼きたてのハンバーグをひと口大に切り分けて、塩と胡椒を振りかけたシンプルな味つけです。
このときのジューシーで柔らかな食感は、40年経った現在でも忘れられません。あまりにおいしかったので、帰り際にハンバーグの作り方を教えてもらいました。簡単なメモを書いてもらった記憶があります。
「日々八つ/\のほこりを諭して居る。八つ諭すだけでは襖に描いた絵のようなもの」
とはいえ、家へ帰って母にハンバーグの調理法を説明しても、実物をよく知らないので、なかなか理解してくれません。この日の夕方、ようやく完成したハンバーグは、むしろお好み焼きに近いものでした。
たとえ作り方のメモはあっても、実物を知らなければ同じ物は作れません。また、本物の味わいを知らなければ、おいしい料理はできないでしょう。絵に描いた餅は空腹を満たせないばかりでなく、味わいや香りも伝えられないのです。
でも、母はどこかで調理法を学び、後日、手作りのハンバーグを焼いてくれました。このときは、最初に食べたハンバーグよりも、もっとおいしく感じたような気がします。
やはり大切なのは、心を込めて実践することなのですね。(岡)