(天理教の時間)
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第1279回2024年4月26日配信

欲しい愛情のかたち

宇田まゆみ
宇田 まゆみ

文:宇田 まゆみ

第1150回

「縁」の下の力持ち

どんな仕事も人との「縁」がなくては始まらない。その縁を頂くカギは、素直で前向きな心だと思う。

しあわせデッサン「『縁』の下の力持ち」
 「人間いきいき通信」2019年12月号より

諸井 理恵

 

「縁の下の力持ち」という言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。「目立つことなく大変な仕事をする、損な役回り」「表には出ないけれど、頼りになる陰の仕事人」。こんなイメージが一般的でしょう。きちんと仕事をする人は、ほとんどが「縁の下の力持ち」と呼べるかもしれません。

私の尊敬する人に、日々、縁の下にもぐって仕事をしている方がいます。どんな仕事かというと、家を支える大事な柱などを守る、シロアリ駆除の仕事です。この社長さん、依頼主とのコミュニケーションを楽しむ方で、その人柄からか、次々と仕事の依頼が舞い込んできます。狭い縁の下でほふく前進するので、身にこたえる仕事ですが、それ以上に、人との縁を楽しんでいる姿に、私はすごく共感するのです。

学生時代、私は演劇を学んだ経験があり、映像の世界で演じる機会を頂きました。それは、大好きな特撮ヒーローの世界でした。そこには、子供たちのヒーローの着ぐるみを着てアクションをする、いまではスーツアクターのレジェンドといわれる方がいました。窮屈なマスクとスーツを時折外しながらのリハーサルに本番にと、細かくアクションシーンを撮影していくのですが、その姿は、実に楽しそうに私の目に映りました。「子供たちの憧れのヒーローは、こうしてつくられていたんだ」と、陰の仕事人に感動したものです。

私は、園長を務める幼稚園の入園式や説明会などで、よく「縁あって」「縁があれば」という言葉を使います。それは、人がどういった環境や人間に出会うのかは、縁がなくては始まらないと思うからです。

この目に見えないご縁を頂くカギは、一人ひとりの思い、つまり心にあると思います。そして、その心が素直で前向きであれば、最も縁が得やすくなると感じています。幼稚園や学校は、そういった人々の「縁」によって成り立っています。その「縁」が育つ土壌をつくるのが、経営者であり教職員です。そしてその縁の姿は、経営者や教職員の心通りの姿を、そこに映し出しているように思います。

私は卒園児や地域の子供を対象に、バトントワリングのクラブを主宰しています。踊ることが大好きだった長女の姿をきっかけに「踊りたい子が踊れるクラブをつくる!」という思い一つで始めました。

私自身にバトンの経験はありません。小学生だった長女と次女に学ばせて、自分にできる裏方の仕事だけをやってきました。それでも代々活動してきた子供たちは楽しんでくれたようで、忙しいなかでも続ける子が多いクラブになっています。

また、田舎の弱小クラブにとっては、奇跡にも思える出来事がありました。園児の保護者で、世界チャンピオンになったことがある高校のバトン部の出身者が指導者になってくれたのです。結成十一年目の今年、念願の大会に出場することができました。

私は保護者の皆さんと共に、自分の見たかった世界を見て楽しんでいます。「縁の下の力持ち」を自負していますが、実は「縁」の下で大いに楽しんでいるのです。

これまでの学校のイメージは、とかく「指導する」「教え込む」ことが前面に出ていたように思います。習い事や部活動などの指導者で、それを第一に掲げる人も少なくないでしょう。ところが、世の中の空気も変わり、学校や会社などの組織のあり方にも変化が表れています。縁あって集まった人たちを下から支える長となる人は、縁を生かす場づくりを考えていくことが、新しい時代のリーダーシップになるのではと私は思います。

この世界は、陽気ぐらしを見て共に楽しみたいと思われた、親なる神様の思いからできています。その親神様こそ、私たち人間にとって、きっと「縁の下の力持ち」そのものなのでしょう。

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