(天理教の時間)
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第1280回2024年5月3日配信

そこにある幸せ

山本達則先生 IMG_1557
山本 達則

文:山本 達則

第1234回

東京スカイツリーから、こんにちは

子育て広場「かぁかのおうち」に集まるママと子どもたち。スタッフと織りなすワクワク・ドキドキをお伝えします。

御苦労さま

 

天理教教祖・中山みき様「おやさま」をめぐって、次のような逸話が残されています。

 

「教祖程、へだてのない、お慈悲の深い方はなかった。どんな人にお会いなされても、少しもへだて心がない。どんな人がお屋敷へ来ても、可愛い我が子供と思うておいでになる。

どんな偉い人が来ても、

『御苦労さま。』

物もらいが来ても、

『御苦労さま。』

その御態度なり言葉使いが、少しも変わらない。

皆、可愛い我が子と思うておいでになる。それで、どんな人でも皆、一度、教祖にお会いさせてもらうと、教祖の親心に打たれて、一遍に心を入れ替えた。教祖のお慈悲の心に打たれたのであろう。

例えば、取調べに来た警官でも、あるいは又、地方のゴロツキまでも、皆、信仰に入っている。それも、一度で入信し、又は改心している。」

と。これは、高井直吉の懐旧談である。(教祖伝逸話篇195「御苦労さま」)

 

教祖はこの様に、どんな立場の人も一切の隔てなく、同じように声を掛け、温かく迎えられました。

普通、「御苦労さま」とは、仕事をしている人、心や体を使って相手のために何かをしている人に掛ける言葉です。しかし、物もらいは、物を恵んで欲しいと来ているわけで、何もしていないどころか、相手に迷惑をかけようとしている人です。その人にまで、「御苦労さま」と声をお掛けになる。なぜでしょうか。

考えてみれば、好きで物もらいになっている人などいません。もしかしたら、身体が弱くて働けないのかもしれない。うちに帰れば病気で寝ている家族がいるのかもしれない。何か人にはわからない事情があるに違いないのです。

教祖の私たちを慈しむ思いには、何の条件もありません。そこにあるのは、何を成すわけでなくとも、ただいてくれるだけで存在自体が愛おしくてたまらない。そんな一途な親の思いなのです。

この「御苦労さま」というお言葉を噛みしめる時、私たちが考えるべきは、人と人を比較しない、差別をしないということではないでしょうか。お互いは、いちれつきょうだいであるとの思いを胸に、周りの一人ひとりの存在をありのまま認めていく。決して自分の好き嫌いだけで、その人を判断してはなりません。

教祖はいつでも、ありのままの私たちをご覧くだされています。「御苦労さま」とニコニコと微笑みながら。この果てしないご慈愛に気づいた時、私たちは何とも言えない安らぎを感じることができるのです。

 


 

東京スカイツリーから、こんにちは

                  吉永 道子

 

東京スカイツリーのある東京都墨田区。下町の小さな天理教の教会で、かぁかとスタッフたちが、ひろばを利用するママさんと子どもたちと織りなす「わくわく・ドキドキ・うるうる」をお伝えします。

今日は私の孫、小学三年生の「むっちゃん」が、子育てひろば「かぁかのおうち」について書いた作文を紹介します。

 

「わたしのおうちはみんなのおうち」

わたしのおうちでは、おばあちゃんが子育て広場をやっています。そこで、おばあちゃんは「かぁか」と呼ばれています。なので、私のうちのことを「かぁかのおうち」といいます。

「かぁかのおうち」は、赤ちゃんから三歳までの小さい子どもとお母さんが一緒に過ごせる場所で、妊婦さんも利用できます。そこではたくさんのイベントやピラティスレッスン、英語教室、お誕生会などをやっています。夏にはプールがあり、またお昼ごはんを一緒に食べたり、子どもたち同士が仲良くなって一緒に遊んだりしています。

かぁかのおうちを利用している、三歳のゆう君という男の子がいます。ゆう君が初めてかぁかのおうちに来たのは、お父さんとお母さんがお仕事のため、一時預かりをした時でした。

最初はすごく緊張していたので、私は「さつき公園」に行って、鉄棒や三輪車で一緒に遊んであげました。また、一緒にご飯を食べて、お父さんとお母さんがお迎えに来るまで過ごしました。

帰る前には私のことを「むっちゃん、むっちゃん」と呼び、おうちに帰ってからも「むっちゃんはどこ?」と聞いていたそうで、すごくうれしかったです。このことがきっかけで、ゆう君はよくかぁかのおうちを利用してくれるようになりました。また、私もかぁかのおうちにくる子たちと一緒に遊ぶことが増えました。

けいちゃんという4ヶ月の赤ちゃんがいます。けいちゃんはお母さんが大好きなので、お母さんから離れたりお母さんが見えなくなったりすると、すぐ泣いてしまいます。

私はけいちゃんのことが大好きで、ミルクをあげたりお母さんのそばで抱っこしてあげたりします。この繰り返しで、けいちゃんはお母さんのそばにいなくても、少しの間、私と一緒にいられるようになりました。他の子も同じように、私をお姉ちゃんだと思って、「一緒に遊んで」と言ってくれる子が多くなりました。

私のおうちは、家族が住んでいるだけの普通のおうちだったのに、どうしてみんなが集まる場所になったのか、かぁかに聞いてみました。すると、3つのことを教えてくれました。

まず、「お母さんと子どもたちが楽しく遊べる場所にするため」。次に、「安心して子どもを預けられる場所にするため」。最後に、「お母さんたちを応援するため」。

それを聞いて、私はとても良いことだと思いました。かぁかってすごい人なんだなと思いました。私は、初めて会う子同士でも仲良くできたり、一人っ子でもきょうだいがいるように思えるおうちにしていきたいです。

かぁかのおうちに来ている親子は、みんなが家族になっています。

ある日、三歳の男の子と生後二か月の赤ちゃんが「かぁかのおうち」に来ました。三歳のいっくんは自閉症と診断され、初めての場所には絶対に入らないと聞いていました。二か月のあーちゃんは、まだ首が据わっていません。

「おかえりなさい」と声をかけると、いっくんは、さっさと玄関に入り自分で靴を脱ぎました。ママに抱っこされているあーちゃんは、スタッフが抱っこ紐から下ろして預かります。

ママの目には涙があふれています。いっくんがすぐ場所になじみ、あーちゃんがスタッフに抱っこされ、安心したのでしょう。コロナ禍で外出もできずにいた日常の中、どんなにパパが協力してくれても育児は孤独なもの。ママの心と身体は壊れる寸前だったのです。

「かぁかのおうちに来てくれてありがとう」

「みんなでお茶飲もうね」

スタッフが声を掛けると、ママの涙が笑顔に変わりました。

いっくんは、大好きなおもちゃで納得するまで遊びます。がんばって、三輪車に乗ることができるようになりました。あーちゃんも落ち着いておっぱいを飲んでいます。

その後も、開催日には必ず来てくれるようになりました。スタッフの心遣いと優しい気持ちが、ママに届いたのだと感じました。これも神様のお計らいです。

かぁかのおうちに来ると、いっくんは「ただいま~」と言って靴を脱ぎます。みんなでお茶を飲みながら、おしゃべりをして、今日も元気でワクワクします。神様のお引き寄せによって、ママもいっくんもあーちゃんも、かぁかもスタッフも、楽しい、嬉しい時間を過ごしています。

「明日も待ってるからね~!」

かぁかが手を振ります。

「かぁか、バイバーイ!」
いっくんの声が、いつまでも、いつまでも聞こえています。

明日もちゃんと歩いて来れるかな? 神様が連れてきてくださいますように、そして明日も「おかえりなさい」が言えますように。

(終)

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