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第1318回2025年1月24日配信

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山本 達則

文:山本 達則

第1315回

おさづけは世界共通 その2

タイに留学中のこと。身上者へのおさづけの取り次ぎを心定めしている時、教授の父親が危険な状態だと分かり…。

おさづけは世界共通 その2

 タイ在住  野口 信也

 

私は22歳でタイへ2年間留学した時に、「もし、病気の方がおられるのを見たり聞いたりしたら、すぐにおさづけを取り次ぐ」ということを心に決め、帰国後も、そして一年後にタイの大学へ再留学する時にもその決心を続けていました。

その時、多くの病気の方と出会いましたが、特に症状の重い方にはできる限り毎日取り次ぎをさせて頂くために、渋滞のひどいバンコクの街をバイクタクシーで移動したり、なかなか回復のご守護を頂けず悶々とする日も多かったことなどが思い出されます。

その頃、大学二回生の時だったと思います。講義の最中、ある女性の教授が、「いま私の父親が入院中で、とても危険な状態です。試験前の大切な時期に申し訳ないのですが、来週はおそらく葬儀で休講になると思います」と話しました。

私は講義の後、先生の所へ行き、「私は天理教という宗教を信仰しています。もし良ければ、お父さんが良くなるようにお祈りをさせて頂きたいのですが」と話しました。

すると、「そんな聞いたこともない宗教に祈られて、父親が地獄に落ちたらどうしてくれるんですか」と、きつく断られました。先生が教え子にそんなことを言うのかと驚きましたが、試験前でもあり、断られて少しホッとしたのも事実です。そこで「では、家でお祈りしたいので、お父さんのお名前と住所、生年月日を教えてください」と言うと、それについては問題なく教えてくれました。

翌週、教授は休まず講義にやって来ました。講義の後、「お父さんはどんな状態ですか?」と恐る恐る尋ねると、意外な返事が返ってきました。

「実は今も意識はなく、苦しそうな顔をして、死ぬに死ねない状態です。それであなたのことを母に話したら、ぜひ来てもらいたいと言います。一度断っておいて申し訳ないのですが、来てもらえないでしょうか」。

おたすけは、話を聞いたらすぐに取り掛かることが大事だと聞かせて頂くので、その日のうちに行くとお伝えし、入院先の警察病院で待ち合わせることになりました。

案内されて病室へ行くと、教授の母親が丁寧にあいさつをして下さり、家族の紹介を受けました。聞くと、会社の社長に弁護士、医師といった社会的地位のある方ばかりでした。少し気後れしましたが、まずは天理教のお話を聞いて頂かなければなりません。

さっそく親神様・教祖についてお話を始めたところ、日本人の私がタイ語を理解できないと思ったのか、「こんな宗教は聞いたこともない。もし本当にたすかるなら、もっと有名なはずだ」と、タイ語でひそひそ話している声が聞こえてきました。

私はそれを聞いて、沸々と熱い感情が込み上げてきて、「お父さんは、いま意識を失っています。この苦しそうな顔は、家族であるあなた方に対する親神様からのメッセージです。天理教では、三日三晩のお願いで必ず結果が出ます。しっかりとお父さんのことを看てあげて下さい」と申し上げました。

そして、一度目のおさづけの取り次ぎにかかりました。病室が静まり返る中、取り次ぎを終え柏手を打つと、父親が付けていた酸素吸入器が「ガタガタ」と音を立てて止まりました。家族の方が「一回のお祈りで死ぬのか」と言い、病室は騒然となりました。教授が急いで看護師を呼ぶと、「自分で呼吸を始めていますから大丈夫です」とのことで、私は少し安心して、「では、また明日来ます」と言ってその場を後にしました。

翌日、病院に行くと、昨日までの苦しそうな顔が嘘のように、穏やかな顔で寝ておられます。意識はないものの、おさづけの最中に、少し薄目を開けてキョロキョロしています。「いい顔になりましたね」と言うと、教授が「はい、あなたのおかげです」とお礼を言って下さいました。

家族の中には、「いや、最初からこんな感じだよ」と、おさづけの効能を信じない方もおられましたが、その日は、父親に二回おさづけを取り次ぎ、会社の社長をしている教授のお兄さんも首と手首、足首が痛いとのことで、おさづけを取り次がせて頂きました。

そうして迎えた三日目、私が「結果が出る」と豪語した日です。家族が見守る中、必死におさづけを取り次ぎました。しかし変化はありません。私は、「これから24時間で結果が出ますから、しっかり看てあげてください」と言うのが精一杯でした。

翌日は26日、ご本部の月次祭の日です。タイ出張所で参拝し、大学で試験を受けましたが、その間もずっと病人さんのことが気がかりで、「今日は何と声を掛ければいいだろう、家族の人に何と言われるだろう」と、そんなことばかり考えていました。

試験の後、病院へ行く前にアパートへ戻ると、受付でメモを渡されました。そこには、「信也さんへ。本日12時頃、家族みんなが見守る中、誰も気がつかないほど穏やかに、父は息を引き取りました。本当にいい顔をしていました。ありがとう。あなたの思いはしっかりと頂きました。葬儀などのことは気にせず、今日からは試験に集中してがんばってください」と書いてありました。

緊張が一気に解けたのか、メモを読みながら、知らないうちに涙がポロポロ流れてきました。おたすけの場面では、迷ったり行き詰まったりすることもありますが、逃げずに通ることで、親神様、教祖がしっかりと受け止めてくださる。そう感じさせて頂いた出来事でした。

その後、教授に呼ばれ、「私は仏教徒なので、あなたの信仰する宗教に入信することは出来ませんが、友人を一人紹介します」と、チュラロンコンという国立大学で勤めている方を紹介してくれました。

この方は後に、大変熱心に信仰され、今ではタイ語の翻訳者として、天理教の教えをタイに広める上で欠かせない人材となっています。教授の父親のおたすけをきっかけに神様が導いて下さった、とても大切な存在です。

 


 

だけど有難い「露見しなければ」

 

ここ数年、建物の耐震強度や食品の消費期限を偽装しては、バレてお詫びをするといったニュースが増えています。誰も相手にしないような会社が嘘をつくことは昔もありましたが、いまは有名な大企業までもが消費者を騙すようになってきました。

考えてみれば、昔は特に信仰していなくても「お天道様が見ておられる。だから悪いことをしてはだめだよ」と言われて育ち、誰も見ていないところでも、すべてを見通している存在があるということを、皆がなんとなく知っていたのです。

最近では、太陽が人間を観察しているわけではないことを誰でも知っているので、バレなかったらいいと思っているのです。しかし実際には、すべて露見するのです。なぜなら、親神様が見ておられるからです。

 

  月日にはどんなところにいるものも
  むねのうちをばしかとみている  (十三 98)

 

と「おふでさき」にあります。結局、隠し通せるものではないのです。

これは何も商売だけの話ではありません。たとえば、大リーガーのバリー・ボンズ選手が、大記録まであと少しというときに、ステロイドを使用していたことが発覚して波紋を投げかけました。ステロイドには疲れを取ったり、筋肉を増強したりするなどの効果がありますが、副作用としてガンや心臓病、肝機能障害を引き起こしたり、生殖機能を喪失させたりする非常に危険な薬物です。

しかし、こうした薬物を使用してでも良い記録を残したいという選手がたくさんいます。自分の体だから多少傷んでも自己責任だと言って、あまり厳しい規制はなかったのです。

オリンピックは、薬物の規制が厳しいことで知られています。健康上の問題、倫理上の問題、スポーツの公平さを保つという観点で、ドーピング検査を以前から行っています。それでも競技者とオリンピック協会は、常にイタチごっこです。新しい規則を作ると、それを破る人が出てくるのです。ステロイドにしても、検出可能な検査法が開発されたので分かるようになったのです。

そうすると次に、それでは検出されない男性ホルモンが使用されるようになります。さらに研究が進んで、それも分かるようになると、また新たな薬を開発する。こんなことを繰り返しているのです。

かつて、アメリカのあるスポーツ誌が、トップ選手を対象にアンケート調査を行いました。内容は、「オリンピックで金メダルを獲れるなら、五年以内に死ぬと分かっていても薬を使うか」というものでした。これに対して、五二パーセントの選手がイエスと答えたということです。

アメリカでは、ステロイドを使用したことのある高校生が百万人を超えたという報告が出ています。日本でもインターネットを通じて簡単に手に入るため、使用する人がかなりいるそうです。スポーツで好成績を残したい人だけでなく、筋肉質の体に憧れて、サプリメントとして使う人が増えているのです。

一番の問題は、「バレなければよい」「自分の体なのだから、他人にとやかく言われる筋合いはない」という考え方です。

私たちは、親神様が見ておられることを知っています。自分がしたことの結果は必ず出るのです。親神様は、その人の心づかいにふさわしい結果をお見せくださいます。

また、「自分の体だから」というのは間違いで、人間からすれば、体は神様からの借りもの、心だけが自分のものなのです。その心一つで、どんな結果も現れてくるのです。素晴らしいご守護を頂ける人生も、どん底に落ち込んでいくような人生も、すべては自分の心次第。人の目がどうこうではないのです。

私たちは、親神様のご存在とご守護を知っています。そして、親神様に受け取っていただく道を教えていただいているのです。どんなことからでも、親神様に喜んでいただける道を歩ませていただきましょう。

(終)

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