(天理教の時間)
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第1280回2024年5月3日配信

そこにある幸せ

山本達則先生 IMG_1557
山本 達則

文:山本 達則

第1259回

金婚式おめでとう

毎年お盆になると家族一同が教会に集まるが、今年はその日に両親の金婚式のお祝いをすることになった。

火と水の調和

 

親神様は、人間が陽気ぐらしをするのを見て共に楽しみたいと、この世界と人間をお造りくだされた、私たち人類の親であります。そして今も昼夜を分かたず、この世界の隅々から私たち一人ひとりの身体に至るまで、一切のご守護をくだされています。

教えでは、この親神様のご守護を十に分け、それぞれに神名をつけて説き分けられていますが、

くにとこたちのみことについては、天にては月、人間身の内の眼うるおい、世界では水の守護の理。をもたりのみことについては、天にては日、すなわち太陽、人間身の内のぬくみ、世界では火の守護の理、とお聞かせ頂いています。

お言葉に、

  このよふのしんぢつの神月日なり
  あとなるわみなどふくなるそや(「おふでさき」六50)

  しかときけこのもとなるとゆうのハな
  くにとこたちにをもたりさまや(「おふでさき」十六12)

 

とあるように、天にては月日と表れるこの二柱こそ、この世界において最も根本的なご守護の理を表すものです。そして、この対照的な働きである「火」と「水」の調和が、私たちの営みにおいて大変重要なことなのです。

たとえば、暑くなると汗をかく、という身体の働きがあります。ぬくみが過剰にならないように汗をかくことで、その蒸発熱によって体温を下げる。これも火と水の働きが調和する姿です。

また、身近な例で言えばお風呂があります。これも火と水のほどよい調和、釣り合いがあってこそ気持ち良く入れるものです。熱すぎればやけどをしてしまい、ぬる過ぎれば風邪をひいてしまいます。

さらにお風呂については、こんな悟りもできるかもしれません。お風呂に気持ち良く入るためには、着ている物を脱がなければならない。つまり、火や水をはじめとする親神様のご守護を十分いただくには、我が身思案や欲の心を捨て、心を裸にすることが必要ではないか。

身に着けている余分な物を捨て、親神様の心にもたれ切ることで、私たちは調和のとれたご守護の世界を存分に味わうことができるのです。

(終)


 

金婚式おめでとう

 奈良県在住  坂口 優子

 

毎年お盆とお正月は、主人のきょうだいとその家族がみんなうちに帰ってきて楽しい一日を過ごします。核家族で育った私にとって、最初はなかなか大変な一日でしたが、年を重ねるにつれ、準備や片付けの大変さも感じることがなくなり、みんなの寄る日が楽しみになりました。

私自身、子ども達が寮生活を始めて離れて暮らすようになると、家族が揃うことにこだわる両親の気持ちが理解できるようになり、その日がもっと好きになっていきました。

今年もお盆が近くなり、その日が訪れようとする頃、きょうだいのグループラインに一件のメッセージが入りました。

「両親の金婚式のお祝いを、815日にしたいと思います」

五人きょうだいの主人の、いちばん上の姉からでした。

その数日後、義父から「そろそろお盆やな。みんなに集まる人数を聞いて、用意してくれるか」と相談されたので、「15日にみんなで金婚式のお祝いをしようと思ってるので、今年は子ども達で全部用意させてもらいます。楽しみにしてて」と伝えると、義母は嬉しさが込み上げたのか、おつとめをつとめながら涙をポロポロと流していました。

普段両親と同居している私たち夫婦にとっても、この企画はとても有り難いものでした。お嫁に来て23年。一緒に暮らしていると、段々と日々の小さな喜びが当たり前になり、感謝の気持ちも忘れてしまいます。だからこそ、きょうだいの力を借りてでも、両親の喜ぶ顔が見られると思うだけで心がワクワクしました。

家族みんなが天理教の教えの中に育ち、親を喜ばせたい気持ちを一番に持っているので、きょうだいそれぞれに意見の違いはあっても、心を譲り合って準備が進んでいきました。

お祝いの当日は、台風の影響で朝から大雨が降り、強い風も吹いていました。ニュースでは、関西圏のスーパーやデパートが営業を休むと報じられていました。注文した食事のことを心配していると、仕出し屋さんとケーキ屋さんから電話がありました。どちらもその日はお店を閉めるそうですが、それでも注文は受けて下さるということでした。

五人の子どもとその連れ合い、そして孫が22人。予定を変更すれば、全員が集まることはおそらく無理で、お店の好意をとても有り難く思いました。

台風が徐々におさまってきて、皆が集まりだし、孫たちが会場の飾りつけを始めたりして賑やかになりました。買い物に行く車の中で、いちばん上の姉がこんな話をしてくれました。

両親にとっては、母方の親だけが夫婦揃って金婚式を迎えられたのですが、両親は都合がつかずに、そのお祝いの席を欠席したのだとか。姉は、その時の両親の悲しそうな姿を側で見ているのがとても辛かったそうで、二人が金婚式を迎えたら、子どもや孫たちみんなで賑やかにお祝いしようと、心に決めていたのだと話してくれました。

姉は、嫁ぎ先の母親を数カ月前に亡くしたばかりで、「夫婦が二人とも元気に金婚式を迎えられるのは、本当に奇跡なんよな」という姉の言葉が心にしみました。

夕方になり、ケーキ屋さんが注文の品を届けてくれました。朝の段階では、「職人さんが台風で来れず、注文のケーキが作れない」とのことでしたが、金婚式と知って、雨がおさまってから職人さんが急遽お店に来て、注文通りのケーキを焼いてくれたのです。「いつもありがとうございます。そして、今日はおめでとうございます」と、心のこもったお祝いの言葉も頂きました。

そして、仕出し屋さんも、「いつもお世話になっているので、お二人のお膳にお祝いの気持ちを添えさせて頂きました。今日は金婚式おめでとうごさいます」と、特別にアワビをつけて下さいました。

台風でお店を閉めている中、わざわざ足を運んでお祝いの気持ちを届けてくださったことに感謝すると共に、長年の教会生活を通じて、地域との絆を大切にしてきた両親の姿が垣間見えた気がしました。

台風が去り、遠方に住む家族たちも遅れることなく到着し、お祝いの会が始まりました。みんなで記念写真を撮影し、乾杯。孫たちからお祝いの品を渡され、両親は満面の笑顔です。

それから、二人の軌跡を振り返るスライドショーを上映しました。結婚式から始まり、五人の子供が生まれ、成長して大人になり、それぞれが結婚して孫が22人生まれた現在までの50年分の思い出が集められ、最後にお祝いのメッセージ動画が添えられた15分間の大作でした。

スクリーンを見つめるみんなの目には、涙があふれていました。家族の思い出が鮮明によみがえり、あらためて温かい親の思いにふれ、このうちに生まれてきたこと、そしてここに嫁いで来たことの幸せを、みんなが心から噛みしめた瞬間でした。

今日の私たちの幸せは、両親が50年の間、どんな日も二人仲良く通ってきてくれたおかげだと、心から感謝しました。これからも、どうかお元気で。私たち夫婦も、二人をお手本に、幸せのバトンを次の世代につないでいきたいと思います。

(終)

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