(天理教の時間)
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第1313回2024年12月20日配信

神様はある?

伊藤教江先生
伊藤 教江

文:伊藤 教江

第1227回

合力おかえり弁当

息子がコロナに感染し、お弁当の無料配布「おかえり弁当」が大ピンチ。しかし、ピンチの先には大きな喜びが…。

真の幸せとは

 

「人間の本当の幸せとは何ですか?」突然こう聞かれると、答えはすぐには浮かばないものです。そこで幸せのための必要な条件を考えてみますと、まず、何と言っても健康第一という人がいると思います。またある人は、平穏な家庭と言うでしょう。また別の人は、何が何でもお金と財産が必要だ、と言うかもしれません。さらには、生きがいのある仕事を挙げる人もいるでしょう。

もちろん、どれも大切な条件ではありますが、しかし、その四つがすべて揃えば、それで本当に幸せと言えるでしょうか。逆に、その四つが全て揃わなければ、真の幸せには至れないのでしょうか。

例えば、お金がたくさんある人の方が、ない人より幸せかというと、必ずしもそうとは限りません。莫大な財産があるために、家庭内のいざこざが絶えないというのは、よくある話です。また、身体が健康であるに越したことはありませんが、たとえ健康に恵まれていても不平不満の絶えない人もいれば、逆に、病を得て病院のベッドに横たわっている人でも、心一つでいきいきと、今日の日の幸せを味わっている人もいます。

いずれにしても、先に挙げた条件はあくまで二次的なものです。もっと根本的な、人間としての真の幸せのために必要なもの。それは、人間本来のあり方を自覚し、その実現に努めるところにあります。

古代の聖人賢者は、「人間よ、汝自らを知れ」と言いました。人間は、自分自身の本当の姿を知らないで過ごしている場合が極めて多く、ほとんどの人が人間として持っている素晴らしい可能性を眠らせたまま、一生を終えてしまうのです。

例えば、コップは水を汲んで飲むという目的のために作られているのであり、その本来性が実現されてこそ幸せなのです。これは何についても言えることで、時計は時間を知るためにあり、イスは座るために作られたものです。

このように、およそこの世のありとあらゆるものは、それぞれ本来性というものを持っています。

そして、それは究極的には、この世界を造られた元の神・実の神である親神様の無限の働きによって与えられているものです。

では、親神様が私たち人間に与えてくださった本来性、本当のあり方というものは何か。言い換えれば、私たちは何のために、どういう目的のために生きているのでしょうか。

天理教教祖・中山みき様「おやさま」直筆による「おふでさき」に、

  月日にわにんけんはじめかけたのわ
  よふきゆさんがみたいゆへから(十四 25)

とあります。

人間は、陽気ぐらしという目的のために親神様によって造られた。ならば、この実現以外に私たちの人生における真の目的はありません。人間は皆、陽気ぐらしをするための性質、可能性を持ってこの世に生まれてきている。そして、その目的に向かって日々努力する中に、人間の本当の幸せがあるのです。

 


 

合力おかえり弁当

京都府在住  辻 治美

 

日頃、コロナの感染には人一倍気を使っていたのですが、昨年12月、小学6年生の息子が学校で感染し、主人をはじめ我が家にも感染が広がりました。息子は重度の障害があり寝たきりで、呼吸器官も弱く、コロナにかかると重症化するかも…と、家族みんなで気を付けていたのですが…。

息子は予想通り、高熱と肺炎でぐったりしてしまい、かかりつけの大学病院に連絡しました。幸いベッドが空いていて入院することができ、私も付き添いのため、ともに病院で過ごすことになりました。

世間では軽症の方が多くなり、自宅療養で回復される方が増えていますが、息子のように身体に障害があったり、基礎疾患のある方や高齢者にとっては、まだまだ怖い病気だと実感しました。

入院が決まって、息子の心配と同時に、もう一つ心配事がありました。私が料理番をさせて頂いている「おかえり弁当」の開催です。

「おかえり弁当」とは、我が教会で二年前から始めたお弁当の無料配布で、ひとり親家庭やヤングケアラーの家庭を対象に、月二回行っています。食材を提供してくださる団体や、多くのボランティアさんの協力もあり、今は多い時で60食から70食ほど作っています。

そんな「おかえり弁当」の開催を、一週間後に控えた矢先の入院でした。いつも手作りパンを提供してくださる、Sさん夫妻に相談したところ、「お弁当作りますよ!やりましょう!」というお返事が返ってきてびっくりしました。今回は中止せざるを得ないと思っていたので、驚きと共に温かい心に感動しました。

それから一週間、いつも来てくださるボランティアさんに加え、物資の仕分け、お弁当の受け渡しなど、お弁当作り以外の作業をしてくださる方々も現れ、皆さんの行動に感激しながら当日を迎えることとなりました。私は病院で息子の世話をしながら、無事開催されるよう祈ることしかできませんでした。

ボランティアさんは、玄関と駐車場で届いた物資の仕分けをして、受け渡しスペースを設置し、Sさん夫妻はお弁当を作ってくださいました。近所のママ友さんたちがお手伝いに駆けつけてくれて、その間、旦那さんたちが小さいお子さんたちの面倒を見ていたそうです。

皆さん「おかえり弁当」の活動に共感され、ピンチと知って貴重な時間をお弁当作りに費やしてくださいました。

お弁当を作っている様子がスマホに送られてきて、皆さんの素敵な笑顔と美味しそうなお弁当を見て胸がいっぱいになり、涙があふれました。

また、別のボランティアさんが、クリスマスの時期ということでお菓子を寄付してくださり、自らサンタさんのコスチュームに着替えて、お弁当を配ってくださいました。他にも近所のお花屋さんや、ケーキを手作りしてくださる方、学生ボランティアさんなど、多くの方の思いやりが集まった「合力おかえり弁当」となりました。

お弁当を受け取りに来た皆さんは、いつもいる主人と私がおらず、ほぼ「初めまして」の大勢のお出迎えにびっくりしたそうですが、美味しそうなお弁当や、ケーキ、お花、そしてサンタさんからのお菓子に大喜びしたそうです。

いつもはお弁当作りのボランティアさんも、受け渡しの遅い時間まで残ってくださいました。利用者さんと初めてふれ合い、喜ぶ姿を目の当たりにして、本当に良かったと言ってくださいました。

コロナ感染で皆さんにご迷惑をおかけしましたが、終わってみれば、いつもより多くの方が「誰かのために」と惜しみなく協力してくださった、素晴らしい「おかえり弁当」となりました。

困っている時にたすけてもらうことが、どれほど有難いことかを心の底から感じることができました。そして、思いやりの心が集まれば、ピンチも大きな喜びに変わっていくのだと実感しました。神様は、ピンチの先に「思いやり」の心や「たすけ合い」の舞台を用意してくださったのかも知れません。

ピンチの状況を作ってくれた息子はしんどい思いをしましたが、教会で神様にお願いし、「おさづけ」というお祈りを病室で毎日取り次がせて頂きました。おかげで日々回復し、年末に退院して元気にお正月を迎えることができました。息子は多くの気づきと感謝を私たちに与えてくれました。

これからも様々なピンチが訪れるかもしれません。でも、神様がその先に大きな喜びを用意してくださっていると思えば、恐れずに乗り越えられそうな気がします。

(終)

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