(天理教の時間)
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第1280回2024年5月3日配信

そこにある幸せ

山本達則先生 IMG_1557
山本 達則

文:山本 達則

第1274回

夢見るダイエット

ダイエット成功の要因となった「引き寄せの法則」。想像したのは「思春期の娘と仲良しの、カッコいい父親」だ。

夢見るダイエット

 埼玉県在住  関根 健一

 

私は若い頃から食べることが大好きで、不摂生を繰り返し、最大で体重が120キロを超えていました。結婚したての頃は食生活について意見してくれていた妻も、言われると不機嫌な態度を取る私にあきれて、次第に何も言わなくなっていきました。

そんな私でしたが、ある日のこと。友人とお酒を飲んだ帰り道、さらに一人で知り合いの焼き肉屋さんに行きました。そのお店に入った所までは覚えているのですが、それからは一切記憶がなく、いつの間にか帰宅していて、翌朝、財布の中のレシートを見ると、一人で大酒を飲み、お肉やご飯をたらふく食べていることが分かりました。

それを見て、「こんなことを繰り返していては死んでしまう」と思い、一念発起でダイエットを始めました。まず初めは集中的に行って半年ほどで15キロ減量し、その後も緩やかに無理のない範囲で続け、40キロ以上減量することができました。それでも、平均体重よりは重いのですが…。

とは言え、40キロと言えば細身の成人女性一人分の体重に匹敵します。昔の私を知る人と久しぶりに会うと、たいへん驚かれます。中には私だと気づかない人もいるぐらいです。

それだけ痩せると、ほとんどの人から「どうやって痩せたの?」と聞かれます。そこでの私の答えは、「食べる量を減らすこと」「お酒の量を減らすこと」「運動すること」。するとそれを聞いた人は皆、ちょっとがっかりしたような表情になります。

私も経験があるので何となく分かるのですが、「どうやって痩せたの?」とたずねる時には、楽に痩せられる秘訣を知りたいと期待しているものです。ところが、私から出てきた答えは至極真っ当なもので、皆「そんな当たり前のことをできるなら苦労しない」と言わんばかりの顔になります。

そこで私は、すかさず「楽なダイエット方法は教えられないけど、モチベーションを保つ秘訣なら教えられるよ」と言って、以下のような話をします。

ダイエットを決意した時、娘たちは小学校低学年でした。まず、娘を持つ父親なら誰もが一度は思い描く「思春期の娘と仲良しの父親」という姿を想像しました。想像の中で娘は大学生になっていて、私と朝の食卓を囲んでいます。

「お父さん、今日はお昼どこで食べる? 授業、午前中で終わるんだ」

「今日は午前中は仕事の打ち合わせがあるんだけど、終わったら学校の近くに行けるかな」

「じゃあ、待ち合わせて一緒にお昼ご飯食べよう!」

「OK。じゃあ12時に駅の改札前で待ち合わせようか」

こんな感じです。さらに想像は先へ進みます。駅の改札前で本を読みながら待つ父親。そこに友達と会話をしながら娘がやって来る。「お父さん、お待たせ!」と父親に声をかけ、「またね!」と友達に手を振る娘。「じゃあ、行こうか」と父親は読んでいた本をしまい、二人は仲良く歩き出す。

こんな場面を、実際にある駅や街の風景を思い浮かべながら想像するのです。父親としては、かなり理想的な像を描きました。そして、その理想に近づくためには、今のような体型でいいのか?もっと言えば、今のような生活を続けて、その頃まで健康を維持できているのか?と自問自答し、行動を変えていきました。

お酒を飲んでいて、「もうちょっと飲みたいな」と思った時。深夜にお腹が空いている時に、お菓子を見つけてしまった時。駅のホームに上がろうとして、エスカレーターの前に立った時。ちょっと甘えてしまいそうな時や、くじけそうになった時に、将来の娘との楽しい時間を想像して、モチベーションを維持することができました。

要するに、ダイエットは「健康のために我慢をして行う辛いもの」と考えるのではなく、「楽しいことを実現するための手段」と前向きに捉えることで成功したのです。

世の中には「引き寄せの法則」というものがあります。「宇宙の法則」「恩恵の法則」など色々な表現がありますが、人は心で思っていることが引き寄せられるという、100年以上前から本に書かれ、広く知られている考え方です。

その法則に従えば、私の場合も「思春期の娘と仲良しでいられるカッコいい父親」を想像したことで、ダイエットの成功が引き寄せられたということになりますが、実際には、想像した姿に近づくために努力を重ねて、望んだ成果を得られたわけです。

こんな話を聞いたことがあります。ミッキーマウスの生みの親として、世界中で知られるウォルト・ディズニー。彼が人生の最後に計画したのが、フロリダのディズニーワールドでしたが、彼自身は建設が始まる前に亡くなってしまい、開園を見ることはできませんでした。

そのディズニーワールドが開園した時、スタッフの一人がウォルト・ディズニーの妻に、「この姿をウォルトさんにも見てもらいたかったですね」と言うと、妻は「いいえ。いちばん最初にウォルトがこの姿を見たからこそ、ディズニーワールドができたんです」と答えたのです。

ウォルト・ディズニーが、心の中に描かなければ完成しなかったディズニーワールド。そこからさらにディズニーの人気が世界に広まっていったのは、多くの人の知るところです。ディズニーの作品には、ところどころに引き寄せの法則を思わせるセリフがある、との分析もされています。

引き寄せの法則については賛否を含めて色々な見方がありますが、私としては、夢を叶えるための前向きな考え方だと捉え、本などを読み、折々に参考にしてきました。

ある時ふと、「引き寄せの法則は、天理教の心定めに似ている」と感じました。心定めとは、人間をたすけたいという親神様の思いに応えて行う信仰的誓いや決意を指します。

厳密な教義とはズレた解釈になるかもしれませんが、天理教の心定めには「夢を叶える力」があるのだと思います。心定めをする時に、たすかりを願う人の幸せな姿を思い浮かべ、その姿を叶えるために自分にできることを積み重ねていく。そんな姿勢の先に、親神様が夢を叶えてくださるのかもしれません。

たとえ辛い病気や事情などに見舞われても、そこを通り抜けた先にある幸せな姿を夢見ながら、精一杯つとめたいと思います。

 


 

てんりわうのみこと

 

朝日が窓辺を明るく照らす頃、さわやかに目が覚める。思い切り腕を伸ばし、新鮮な空気を目いっぱい吸い込んで、今日という一日が始まる。実に平凡な日常生活の一コマです。しかし、これらの動きの中で、私たちが意識して行っていることはどれほどあるでしょう。私たちが意識せずとも、自然に時は刻まれ、世界は動き、身は健やかに新陳代謝を遂げているのです。

お言葉に、

  たん/\となに事にてもこのよふわ
  神のからだやしやんしてみよ (『おふでさき』三 40・135)

とあります。

この世界は親神様の身体であって、世界はその隅々まで親神様の恵みに満ちています。私たち人間は、親神様のご守護によってすべてを与えられ、生かされて生きている。いわば、親神様の懐住まいをしているのです。

  月日にハせかいぢううハみなわが子
  かハいいゝばいこれが一ちよ   (十七 16)

 

月日親神様と私たち人間、それは親と子の間柄です。親神様は溢れんばかりの親心で私たちの行く末を見守ってくださる、実の親です。感謝を込めて呼べば答えて下さり、祈れば聞き入れてくださる親なる神様です。

この親なる神様に向けて、私たちは、朝夕のおつとめで、

  あしきをはらうてたすけたまへ
  てんりわうのみこと

と一心に唱え、お祈り申し上げます。

天理王命とは、親神様の神名、お名前です。お名前を申し上げることは、素朴な祈りの基本とも言えます。ちょうど子供が、なにか事ある度に「お父さん、お母さん」と呼び、親にもたれる姿と同じですね。

  どのよふな事をするにも月日にて
  もたれていればあふなけハない (十一 38)

 

この安心感こそ、親神様の私たちに対する親心の現れに他ならないのです。

(終)

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