天理教の時間

「天理教の時間」家族円満 気づいていますか?身近にある幸せ

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第1356回

低いやさしい心

教会に嫁いで20年、義父の怒った姿を一度も見たことがない。毎日心穏やかでいられる義父を、心から尊敬している。

 低いやさしい心

                    兵庫県在住  旭 和世

 

 

私には「こんな人って本当にいてるんや~」とずっと思っている人がいます。それは嫁ぎ先の父です。

私は主人と結婚して教会に嫁ぎ、両親と同居生活をするようになって約20年近くなりますが、信じられない事に、父が怒った姿をまだ一度も見たことがないのです!

父は本当に温厚で、真面目で優しい人なのです。誰に対しても同じ態度で、イライラしている姿でさえ見る事がありません。こんなに不機嫌にならない人が世の中にいたのか~?と、いまだに衝撃を受け続けています。

 

父は母とはお見合いで結婚したのですが、初めて会った時に父が、「今まで私は怒ったことがありません」と母に言ったそうです。母は怒られたり、怒鳴られたりするのが苦手なので、その言葉を聞いて父との結婚を決めたのです。

父は初対面にして、母に「怒らない宣言」をしてしまった訳で、怒るわけにはいかないという事なんです。それでも人間、毎日を機嫌よく暮らすというのは本当に難しい事。私なんて、「今日もニコニコ過ごそう!」と思っていても、ちょっとした事で心が曇って悪天候になったり、時には嵐がやってくる事も。色々な事が起こってくる毎日の中で、こんなにも心穏やかでいられる父を心から尊敬しています。

 

天理教の教えの一つに、「八つのほこり」があります。人間なら誰しも知らず知らずのうちに溜めてしまう自分中心の心遣いの事です。

「おしい、ほしい、にくい、かわい、うらみ、はらだち、よく、こうまん」と八つある中で、「怒る」というのは「はらだち」にあたります。

 

父がある時こんな事を聞かせてくれました。

「芸人の明石家さんまさんっておるやろ。あの人は人に腹立てないらしいんや。『腹立てる人っていうのは、自分の方が偉いと思ってるから腹が立つんや』って言うてはったわ。天理教で言うたら『こうまん』の心遣いという事やわな。『こうまん』やと、自分は偉いと思うから、人の間違いや意に沿わない事があると腹が立って、怒ってまうんやな~」

 

そして、旭家の先祖が天理教に入信した時の事を教えてくれました。

「うちの初代はリウマチという難病をおたすけ頂く時に、『これからは「よく」と「こうまん」の心をお供えさせて頂きます』と心に定めてたすけて頂いたから、「よく」と「こうまん」の心には気をつけて通らせてもらわんとなぁ」と、信仰の元一日を聞かせてくれたのです。

 

 「よく」と「こうまん」。その父の言葉を聞いて、父は初代の通られた思いを胸に毎日を過ごしているのだと改めて思いました。

というのも、父は偉ぶったり、怒らないというだけでなく、本当に「よく」もない人なのです。「これが欲しい」とか「あれがしたい」とか言っている姿をほとんど見たことがありません。物やお金にも執着のない無欲な人なのです。

 

そんな父ですが、先日、大教会でビンゴ大会があり、なんとその無欲な父が早々にビンゴになったのです! すると、一緒に参加していた中高生の孫たちが「じぃじ~!じぃじ~!」と大騒ぎです。こんなに若い孫達にキャーキャー言われるおじいちゃんも、そうそういないだろうな~、と笑ってしまったのですが、これも父の人徳だなと思うのです。

当の本人は、「そんなにジージージージーいうのはセミくらいや~」と満面の笑みを浮かべています。孫達が父を慕うのも、日頃から穏やかに子供たちを見守ってくれているからこそだと思います。

 

今ではまさに聖人君子のような父ですが、初めからそうであったわけではなく、若いころは色々な経験をして、天理教の教会長をつとめることが決まった時に、初代と同じように、「よく」と「こうまん」の心をお供えしたのだと聞かせてくれました。そのおかげで今の私たち家族の仕合わせな姿があるのだと、いつも両親に感謝しています。

それなのに、私はと言えば、ついつい心に埃をためてしまう毎日です。特に子育てが一番忙しかった頃は、予想以上の大変さになかなか喜べず、埃の心ばかり遣っていた事がありました。

子供は親の思い通りには全く行動してくれません。予想をはるかに超える行動力をもつ息子を追いかけ、おっとりしている長女はほったらかし、次女はいつもおんぶされた状態でバタバタと、子育てを楽しむ余裕なんて到底ありませんでした。

優しいお母さんになるつもりが、全く予定通りにいかない事にジレンマや自己嫌悪を感じる毎日でした。有難いご守護をたくさん頂いていながらも、感謝の心を持てていなかったのです。

 

そんなある日、教祖が梅谷四郎兵衛先生にお聞かせ下さったお言葉を思い出しました。「やさしい心になりなされや。人を救けなされや。癖、性分を取りなされや」。

若い頃、実家の母がよくこのお言葉を聞かせてくれていました。

「人様をおたすけするには、まず『低いやさしい心』になって、人様の事を一生懸命させて頂く中に、だんだんと自分の癖性分を取って頂けるんだよ」と。

それを思い出し、私は「低いやさしい心」になれていない事にはたと気がつきました。自分の思い通りにならないからと、喜べなかったり心がいづんでしまうのは、まさに自分が「こうまん」で、こうであってほしいという「よく」の心の表れだと気づいたのです。

 

これは神様に申し訳ない! 教祖のお言葉通り「低いやさしい心」になるためには、人様をたすける事、つまり「にをいがけ」しかない!と思い当たりました。

教会に嫁ぎながらも、子育てを理由に全くにをいがけが出来ていなかったことを、近くにある教会の同世代の奥さんに打ち明けると、「私も子供が小さいし、なかなか出来ないから、和世ちゃん一緒ににをいがけしない?」と誘って下さいました。

願ってもない提案に「ぜひ!」という事で、お互い子供を連れて、にをいがけに歩かせて頂くことになりました。ドキドキしながら拍子木をたたき、近くの商店街で神名流しをさせて頂きました。久しぶりににをいがけが出来た喜びで胸がいっぱいになった事を、今でも鮮明に思い出します。

 

それからというもの、教祖のお供をさせてもらえている! と思いながらにをいがけに歩かせて頂く度に、自分の埃だらけの心が少しずつ澄んでいくような気がしました。すると、それまで喜べなかった事がとても小さな事に感じられたり、にをいがけで断られるたびに、こうまんだった心を低くして頂いているように思い、有難い、喜びいっぱいの毎日になっていきました。

 

「人たすけたら我が身たすかる」というお言葉通り、にをいがけに歩く事で、自分のこうまんな心に気づかせて頂き、人様のたすかりを願う中に、自分の心もたすけて頂いていると実感しています。

自分の埃だらけの頑固な癖性分はまだまだ取れていませんが、父のような「低いやさしい心」を目指して、少しずつでも歩みを進めていけたらと思っています。


 

父母に連れられて

 

この信仰は、親から子へ、子から孫へと、代々語り継ぐことが大切であると教えられます。このような神様のお言葉があります。

「もう道というは、小さい時から心写さにゃならん。そこえ/\年取れてからどうもならん。世上へ心写し世上からどう渡りたら、この道付き難くい。」(「おさしづ」M33・11・16)

ゆえに、天理教の教会では、個人で参拝するのはもちろん、家族ぐるみで参拝したり、行事に参加したりする姿が多く見受けられます。

 

教祖をめぐって、このような逸話が残されています。

明治十五、六年頃のこと。梅谷四郎兵衛さんが、当時五、六歳の三男・梅次郎さんを連れて、教祖のいらっしゃるお屋敷へ帰らせて頂きました。ところが梅次郎さんは、赤衣を召された教祖のお姿を見て、当時煙草屋の看板に描かれていた姫達磨を思い出したのか、「達磨はん、達磨はん」と言いました。

それに恐縮した四郎兵衛さんは、次にお屋敷へ帰らせて頂いた時、梅次郎さんを連れて行きませんでした。すると教祖は、

「梅次郎さんは、どうしました。道切れるで」

と仰せられました。

このお言葉を頂いてから、梅次郎さんは、毎度両親に連れられて、心楽しくお屋敷へ帰らせて頂いたのでした。(教祖伝逸話篇117「父母に連れられて」)

 

四郎兵衛さんにすれば、たすけて頂いたご恩のある教祖に対して、失礼だという思いが強かったのでしょう。しかし、子供可愛い一条の教祖は、むしろそのような幼子の無邪気な様子を大層お喜びになったのではないでしょうか。そして、親子がこの道の信仰を共にすることの大切さをお諭し下さったのです。

しかしながら、子供に道をつなぐのは容易なことではありません。そのために、各地の教会では、日頃から子供たちに信仰を伝えるべく、様々な少年会活動がさかんに行われています。そして、その総決算として、毎年夏休みには、全国各地から大勢の子供たちが親里に帰り集う「こどもおぢばがえり」が開催されます。

 

子供の素直な心は、この道の宝です。むしろその子供の純真無垢な姿が、親が自身の信仰を見つめ直す契機となることもあるのではないでしょうか。

かつて教祖を「達磨はん、達磨はん」と呼んで親を困惑させた梅次郎さんは、後に海外布教に尽力するなど、道を弘める上で大いに心を尽くしました。(終)

次回の
更新予定

第1357回2025年10月24日配信

おじいちゃんの種

家族円満 旭和世
旭 和世

文:旭 和世

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