天理教の時間

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第1365回

あるタイ人の若者と天理教の出会い

大学生のK君と出会い、修養科へ導くことが出来た。タイへ戻った彼は勉学に励みながら、出世街道を突き進んでいった。

あるタイ人の若者と天理教の出会い

タイ在住  野口 信也

 

タイにはラームカムヘーン大学という、高校卒業資格を持つタイ人であれば誰でも入学できる大学があり、40万人を超える学生が学んでいます。ただ、入学が簡単で学生数が多いため、講義はモニター越しで行われることがほとんど。やる気のある者には広く門戸を開いて受け入れるが、真剣に学ばない者は卒業できないという、日本にはないタイプの大学です。

ある時、この大学に通っていたK君と知り合いになりました。彼は、私が再留学した時に住んでいたアパートの駐車場にある店舗で雑貨を販売していました。K君はとても気のいい人で、アパートの住人や警備員など、誰とでも気さくに話し、私もすぐに彼と仲良くなりました。

K君は人付き合いが良く、友達も多いのですが、勉強が少し苦手なようで、大学卒業は難しいかな、といった感じでした。

K君は私と仲良くなるにつれ、タイ出張所へ参拝に来たり、子供会などの行事に参加したり、時には友人を誘って参拝に来るなど、次第に天理教に関心を持ってくれるようになりました。そこでK君には、大学を卒業出来なくても、仕事を始める前に、少しでも天理教のことを学んでもらいたいと思うようになりました。

天理教には、人生で本当の幸せをつかむための心の使い方と身の行い方を、人類のふるさと「ぢば」で3カ月間学ぶ「修養科」という所があります。たすかりたいという心から、たすけたいという心、人のために尽くす心に生まれ変わる場所です。

1988年から、修養科にも隔年でタイ語クラスが開催されるようになり、K君にもぜひ修養科に入ってもらいたいと思っていました。しかし、修養科の費用や日本での滞在費、航空券代など、とても当時の彼にはそうした費用は捻出できません。また、私が費用を出してまで行ってもらう意味があるのかどうかと悩んでいました。

そうした時、ある先生から、「子供が成人するまで面倒を見るのが親の役目。費用は親の立場である導いた者が負担させてもらう。そうすることで、導かれた信者さん自身はおぢばで伏せ込んだ徳を頂き、費用を出し導いた者は半分徳を頂くことになります」とのお話を聞きました。それで決心がつき、K君に話をしてみると、大学のことも気にかかっていたようですが、日本へ3か月間行けるという楽しみが勝り、すぐに承諾してくれました。

そうしてK君は、翌年の5月から開催された修養科タイ語クラスに入学しました。一か月が経った頃、K君の関係者から、大学での試験にパスして卒業に必要な単位を取得できたとの連絡があり、K君は涙を流して喜びました。彼にとっては、本当に人生のいい分岐点になったのだなと感じました。

さて、修養科を終えタイへ戻ったK君、次は就職です。悩んだ末、高校時代から付き合っている彼女の勧めで公務員の試験を受けました。9年かかってようやく大学を卒業した彼はすでに29歳、何とかギリギリの点数で採用され、雑用係からのスタートとなりました。

その2年後、タイ出張所で行われた、修養科に志願する人たちの事前研修会でK君に修養科の感想を話してもらいました。彼は、授業はタイ語だったので問題はなかったけれど、生活する詰所ではタイ語が通じなかったことや、日本人の修養科生との共同生活での苦労などを語り、「でも、私の人生にとってはよい経験になりました」と話してくれました。

そして35歳の時、レクリエーション課長に就任した彼は、ようやく高校時代から付き合ってきた彼女と結婚しました。タイ出張所で天理教式の結婚式を挙げ、その後、タイ式結婚式、披露宴と続きました。

K君の田舎から、彼の母親と家族がバンコクへやって来ました。彼は「僕は9番目の子供で、一番の問題児だった。その僕がこんなに盛大な式を挙げられて本当に嬉しい」と話しました。また、K君の奥さんと家族からは、「天理教のおかげで彼は変わりました」と、お礼を言って頂きました。

それもそのはず、就職してからのK君は、何か思うことがあったのか、大学の土曜日、日曜日コースへ通い始め、就職前に取得した経営管理学士の他、政治学士の資格を取得しました。その後、超難関のチュラロンコン大学の法学部も卒業し、バンコク都内の病院の法律顧問を始めたりと、仕事も順調なようでした。

そして2011年、私がタイ出張所へ赴任してからは、修養科の費用やその時の滞在費、航空券代などを返済したいと、私の銀行口座に毎月少しずつ振り込みをしてくれるようになりました。それは、教祖140年祭へ向けてのお供えと併せて、現在も続いています。

その後も彼は時間を惜しんで勉強し、法学修士、政治学修士の資格を取得しました。さらに大学院で環境開発管理博士号を取得、バンコク都庁の広報室長を経て環境局長に就任し、メディアにも登場するようになりました。まさに昇り竜の如き出世です。

異例の速さの昇進で、コネもなく、権力にも興味のないK君自身が不思議がっているほどでした。ただ、一番下っ端の雑用係からスタートした彼は、どの立場の人に対しても気さくに声をかけるなど、優しくて人望があり、それが一つの大きな要因になったのかもしれません。

私がタイ出張所に赴任してから、ひのきしんデーなどの対外行事では、K君は関係者に連絡を取り、適切な場所や人を紹介してくれています。彼が環境局長の時には、天理大学から、国際交流プロジェクトに参加する学生に向けた研修を開きたいとの依頼がありました。早速彼に連絡をすると、バンコクのチャオプラヤー川という大きな川での清掃作業の企画が立ち上がり、26名の学生らに対して、15台の船と約80名ほどのスタッフでサポートしてくれました。

また、20249月、天理教の青年会本部がタイへの布教キャラバン隊派遣を検討するため、真柱継承者の中山大亮様を筆頭に、青年会委員のメンバーが来訪した際には、青年会とタイの天理教信者が共に活動を行えるように尽力してくれました。

この時は、バンコク都内の係官たちも準備段階から快くお手伝い下さり、電車公園という大きな公園で、子供たちの遊具のペンキ塗り作業を約120名の方々と共に行うことが出来ました。

するとその直後、2024101日付で、K君はバンコク都庁事務次官に任命されました。バンコク都庁職員10万人を指揮する最高指導者の数名の中に選ばれたわけですから、一般採用の彼にすれば、ほぼ最高到達点といっても過言ではないでしょう。タイの信者さんたちもそうですが、K君本人が一番驚いたようでした。

K君とは月一回の割合で二人っきりで飲みに行きますが、何よりも一人息子が医者になってくれたことが嬉しいと話してくれます。仕事でも、これまで自分が要職につけたことを大変不思議に感じ、喜んでいるようですが、家族のことが彼にとっては特に嬉しいようです。

彼自身は大きな声で「天理教の信仰のおかげです」とは言わないのですが、言葉や態度の端々に神様への感謝が感じられます。退官後は病気がちな妻と一緒に、もう一度修養科へ行きたい、そう言ってくれています。どんな言葉より彼の信仰に対する思いが伝わってきました。

 


 

これが天理や

 

教祖はよく、お屋敷へやってきた若者と力比べをすることがありました。そうして神の厳然たる力を示されるとともに、信仰の要諦についてお教え下されています。

 

明治12年秋、大阪の中川文吉さんが、突然眼を患い、失明寸前の状態となりました。近所に住む井筒梅治郎さんのおたすけにより、三日のうちに鮮やかな御守護を頂いた文吉さんは、翌明治十三年、お礼詣りに初めてお屋敷へ帰らせて頂きました。

教祖は、文吉さんに親しくお会いになり、「よう親里を尋ねて帰って来なされた。一つ、わしと腕の握り比べをしましょう」と仰せになりました。

日頃から力自慢の文吉さんは、このお言葉に苦笑を禁じ得ませんでしたが、拒むわけにもいかず、たくましい両腕を差し出しました。すると教祖は、静かに文吉さんの左手首を握られ、次いで文吉さんに、右手で教祖ご自身の左手首を力の限り握り締めるようにと、仰せられました。

文吉さんは仰せ通り、力いっぱい教祖の手首を握りました。すると不思議なことに、反対に自分の左手首が折れるかと思うほどの痛みを感じたのです。

文吉さんは、思わず「堪忍して下さい」と叫びました。すると教祖は、

「何もビックリすることはないで。子供の方から力を入れて来たら、親も力を入れてやらにゃならん。これが天理や。分かりましたか」

と仰せになりました。(教祖伝逸話篇75「これが天理や」)

 

スポーツにおけるトレーニングでも、力を入れ、負荷をかけることによって体力はついていきます。信仰において鍛える部分は、唯一自由に使うことを許されている「心」。この信仰は「願い通りの守護」ではなく、「心通りの守護」であると教えられます。子供の方から力を入れるとは、即ち親神様にもたれて精一杯信仰の実践に努めることです。

親神様は、私たちが日常、どれほど真実を尽くし、心を尽くして働いているか、その力の入れ具合をご覧下さっています。「この人はこれだけの基礎体力があるはずなのに、まだまだ出し惜しみ、使い惜しみをしているな」と判断されれば、親神様も力をフッとゆるめてしまわれるかも知れません。

日々、信仰実践によって基礎体力をあげながら、いざという時は、力の限りを総動員して親神様にもたれ切る。その時親神様は、ビックリするほどのご守護をお見せ下さるに違いありません。

(終)

次回の
更新予定

第1366回2025年12月26日配信

心の生活習慣

家族円満 内山真太郎先生
内山 真太朗

文:内山 真太朗

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