令和6年能登半島地震 教内の救援活動 特別編

■2024年3月8日

災害救援ひのきしん隊長野教区隊(大北元慶〈もとよし〉隊長)は、「令和6年能登半島地震」本部隊の第3次隊と第12次隊として出動した。ここでは、教区報『しなの』2月号に掲載された第3次隊の活動報告を紹介する。


1月21日朝、雪から冷たい雨に変わる中、救援物資と生活物資を詰め込んで8時に教務支庁を出発。途中のパーキングで隊員を乗せ、富山県高岡市で夕食や必要物品を買い込み、いざ珠洲市へ。

道路は震源地に近づくほど傷みだし、穴水町辺りから先は急激な段差と崩落の連続。車内からは隊員の悲鳴にも似た驚きの声が漏れ、街灯もない山道を抜けていくと、ようやく街の灯りがポツポツ見えはじめ、電気が通っていることを知る。

冷静なカーナビの道案内が、見える景色とのギャップをより一層引き立たせる。「目的地に着きました」。家々から漏れる明かりはほとんどなく、宿営地の「メルヘン日進堂」に到着したのは午後6時30分。場違いなほど煌めくイルミネーションと、大きなバウムクーヘンのオブジェがライトアップされた洋菓子店兼工場だ。

我々が来るのを駐車場で待っていてくださったのは、メルヘン日進堂社長の石塚愛子さん。「遠いところを来てくださってありがとうございます」との言葉。言葉に出来ないほどの困難に直面しながらも、この場所を提供してくださったのは言わずもがな、被災地における天理教の拠点であるという覚悟を感じ、我々一行は深々と頭を下げるしかなかった。

7時に結隊式を富山教区の災救隊と共に行い、社長の石塚さんからこのたびの被災の経緯と宿営地に提供した思いをお聞きする。

「どのような困難な中も、心明るくお通りくだされた教祖のひながたをたどらせていただくことの有り難さ。正月明けから販売しようと用意したお菓子が大量にあることに気付き、従業員とも話し合って、被災に遭われた方にお配りさせていただこうと決め、私にはまだ人に配る物のあることを考えたら、あらためて教祖のひながたがもったいなくも有り難い」

22日朝5時起床。朝づとめの後、食材を積み込み、我々が担当する炊き出し場所である緑ヶ丘中学校へ移動する。炊事本部から出されたメニューをもとに調理し、さらに支援物資として置いてある食材を生かしたもう一品を加えて、昼食と夕食合わせて300食ほどを提供。併せて給水活動を行う。そして、次の日の仕込みをして午後8時にその日の活動を終えた。

2日目(23日)は朝から冷たい雨が降る中、ひのきしんを開始。昼過ぎには吹雪になる。夕食の提供時、ご飯が炊けないというトラブルが発生。配食を待つ人の行列に、何とかその場を和ませようと、本部隊の田邊主事の求めに応じて教区隊員2人が一発芸を披露すると、外からも聞こえるほどの大きな笑い声が響き渡る。

放っておけば殺伐としてしまう空気の中、さすがの機転と素直に応じる隊員の姿を見せてもらい、安堵させてもらえた。何よりうれしかったのは、自分たちの役割が、単に食事を提供することにとどまらないということを理解し、ここにいる皆さんに喜んでもらいたいとの思いが、それぞれの役割の中で一つになっているということに気づかせてもらえたことだ。周囲を楽しませた隊員2人がMVPの手作りの表彰を受け、隊員一同、同じ思いで受け取った。

3日目(24日)、最終日は折からの最強寒波が到来。本部春季大祭の前ともあって、活動を早めに切り上げる。昼食と同時進行で夕食の準備にかかり、昼食の提供時間が終わるころには、学校の調理教室の掃除と整頓を完了した。

3日間で約900食を提供し、給水活動や屋外の雪寄せなど、避難所の方々や近隣の方々のことをわが事と思い、生かされている感謝の行いを映していければと、できることは何でもさせていただく気持ちで取り組んだ。

当初は、被災された方々に何と声を掛けてよいものやらと逡巡していた隊員たちにとっても、「陽気ぐらし」はどこか遠い未来の誰かがするのではなく、いまここにいる自分たちから、困難に直面したここから始めるんだという気概で、自らの課題に取り組む姿勢を学ばせていただけたと感じる。

状況は日々刻々と変化し、ストレスが溜まり気力を奪っていくこともある。また、「いまはおいしい食事を食べられる時間が一番の慰め」と言う方もおられる。

今後ますますニーズが広がり、長期間の支援が必要なのは明らかで、後援も重要な役割となってくる。行き届かない所も多々出ると思うが、長い目で思いを寄せ、身を寄せていくことが大切だと思わせていただく。

最後に、教区隊の出動に当たり、管内の多くの方から被災地への支援物資や食材を預かりました。ありがとうございました。

災救隊長野教区隊副隊長 星野一男

〔協力=長野教区・須藤代表社友〕

※本文は、長野教区報『しなの』2月号掲載の内容をもとに、一部文字遣い、文脈、表現等を改訂のうえ編集しております(道友社編集部)