ウクライナ避難民に生活面を含めた支援 – 天理大学

■2022年7月7日

発信者:親里ニュース

天理大学(永尾教昭学長)は天理市と連携し、4月から同大卒業生のコベリャンスカ・オクサーナさん(45歳)一家を避難民として受け入れ、生活面を含めた支援を続けている。同大で日本語教育を受けているオクサーナさんの長男アルセーニさん(18歳)には、天理大の日本人学生が「チューター」として日常生活や日本語学習などをサポート。その支援の様子が先ごろ、奈良県の地域情報番組「ならナビ」(NHK奈良放送局)で取り上げられた。また、同大は6月から、オクサーナさんを同大の嘱託職員として採用。7月4日には、オクサーナさんが初めて教壇に立ち、特別講義を行った。


天理大生 日本語学習をサポート

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同大の外交官養成セミナー2期生として、語学や国際情勢について学んでいる吹ケ心さん(外国語学科英米語専攻3年・阿倉川分教会ようぼく)は、「チューター」としてアルセーニさんの生活面でのこまやかな支援を行っている。

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したときから「何かできることはないか」と考えていたという吹ケさん。アルセーニさんが来日後、休み時間にキャンパス内を案内したほか、アルバイト面接の際には通訳として同行し、業務マニュアルの一部を翻訳するなど、献身的にサポートしている。

また6月からは、日本語を初めて学ぶアルセーニさんの授業支援として補講を担当している。

吹ケさんは「彼は私たちには見せない、故郷や現地の友人への思いを抱えながら過ごしている。だからこそ、どんなことでも話せるような友人になれたらとの思いで今は務めている。今後も、より良い生活を送ってもらえるようサポートしていきたい」と話した。

6月24日放送の「ならナビ」では、吹ケさんがアルセーニさんの日本語学習をサポートする様子や、天理駅前で募金活動を行う姿などが紹介された。

こちらから、吹ケさんがアルセーニさんの日本語学習をサポートする様子などを紹介した「ならナビ」の動画を期間限定でご視聴いただけます)

なお同大では、学術交流協定を結んでいるキーウ大学から9人の学生を交換留学生として受け入れる予定。留学生は7月上旬にかけて訪日した後、9月から1年間、天理大国際学部地域文化学科日本研究コースで日本語を修得する講義を受ける。

その間、留学生につき一人ずつ「チューター」が付き、留学生活をサポートする。


嘱託職員のオクサーナさん
学生ら50人に特別講義

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天理大は6月から、オクサーナさんを嘱託職員として採用している。

オクサーナさんは7月4日、同大の宗教学科と地域文化学科の学生ら約50人を対象に、宗教主事特別企画「ウクライナ情勢と平和への祈り」と題して特別講義を行った。

冒頭、松村孝吉・宗教主事が講義開催に至った経緯を説明したうえで、学生らにオクサーナさんを紹介した。

オクサーナさんは、ウクライナの面積や人口、宗教や歴史について詳しく説明した後、人間は自らのアイデンティティーがあるからこそ、生きる意味や幸せが見つけられると前置き。そのうえで「戦時下では、そのアイデンティティーの元となる自分たちの言語、文化、暮らしが脅かされている」「そのような中で、生きる意味や幸せを見つけることは難しい」と指摘。「平和な世界を実現させるためにはどうすればいいか、一人ひとりが考えていかなければ」と語った。

講義の最後に、永尾学長が学生に向けて「私たち一人ひとりが平和の貴重さを考えることが大切。今後、ウクライナから受け入れる留学生と積極的に交わってほしい」と話した。

受講生の一人、佃隆人さん(宗教学科1年・東日分教会ようぼく)は「ウクライナ情勢について関心があったので、当事者から意見を聞くことができて、とても勉強になった。善悪を決めつけず、多角的な理解を深めることが大切だと、あらためて感じた」と話した。


コラム チューター制度

留学生の日常生活や学習を補助する修学支援制度。天理大では、「国際性」「献身性」の建学精神のもと、「チューター制度」を積極的に採用している。「チューター」は留学生の日常生活、日本語学習をサポートすることが主な活動となる。また、「チューター」を務める学生にとっては、語学力を生かす場や異文化交流の貴重な経験となっている。