天理教の考え方がわかる一冊です。天理教に初めてふれる方はもちろん、古くから信仰している方も、一度立ち止まって、信仰のある暮らし方を見つめてみてください。
どんな内容か、気になる方のために、本書の中から、その一部をご紹介します。
教祖(おやさま)は、ある人に「商売人はなあ、高(たこ)う買(こ)うて、安う売るのやで」(「稿本天理教教祖伝逸話篇」165「高う買うて」)と言われました。そんなことをしていると大損する、安く買って高く売るのが商売のコツだと、すぐに言い返したくなるところですが、その意味を考えてみましょう。
物が安いときに、安い産地で仕入れ、それを安く売るという薄利多売は昔からありました。戦後のスーパーマーケットはその実行者ですが、これは商法であって、信仰抜きで成り立ちます。
高い値段で買って生産者を喜ばせ、それを安く売って消費者に満足してもらうことは、容易ではありません。それこそ身を粉にして働き、私生活を正し、社会のために奉仕する「ひのきしん」の態度に徹しなければ、長続きしません。
いわば、信仰実践の場としての商売ということになります。天理教には、この教えにのっとって、自分なりに工夫して実行している人が多くいて、結果的に成功した事業家もあります。
ところで、この教祖のお言葉を物の世界だけに限定せず、人の世界に当てはめると、その応用範囲はにわかに広がります。
たとえば会社の場合、おれは社長だからといって威張ったり、独断専行して従業員の気持ちなど汲みとらずにこき使っていたりするのは、自分の値打ちを高く売り、人の値打ちを安く買っていることになります。こんなことを続けていると、その会社はいつか破綻を見ることでしょう。
能力のある人、恵まれた人、地位のある人は、ややもすると自分の値打ちを高く売りたがり、他人の人格や人権を無視しがちで、これが陽気ぐらしの妨げとなっています。
大国と小国、先進国と途上国の格差や不和・・・。これらも、教祖のお言葉を気長く地道に実行することによって、次第に治まってゆくと思われます。
本書には、こんなお話が100編。天理教の考え方に触れて、ぜひ周りを見つめ直してみてください。