おやのことば 5月16日

子供のころ、兄弟のように仲良くしていた友達の口癖は「めんどくさい」でした。

片道4キロほどの道のりを歩いて小学校へ通っていた彼は、家へ帰るのが「めんどくさい」ので、毎日途中にある私の家に立ち寄って、暗くなってから、ようやく家へ帰ります。時には、そのまま泊まっていくこともありました。成績は悪くなく運動能力も高いのに、やる気を見せないので、学校では、いつも”叱られ役”でした。

彼の家は農業を営んでいて、市街地からかなり離れた場所にあったため、家を訪ねた記憶はほとんどありません。ただ、農繁期に一度だけ仕事を手伝いに行ったことがあります。その際、いつものように「めんどくさい」と言いながら、テキパキと仕事をこなす彼の姿に驚きました。

「楽しめば楽しむ理ある。一つ楽しんですれば一粒万倍にも返す理である」

私がビニールハウスを組み立てるパイプを1本運んでいる間に、彼は10本くらい運んでいます。

疲れて休憩を求めても、手を止める気配はありません。「楽しそうだね」と声をかけると、彼はニコニコしながら「めんどくさいよな」と答えていました。

もう20年近く会っていないのですが、いまは素直に働くことを楽しんでいるでしょうか。マンガを読んでいるときよりも楽しそうに働く彼を見て、働くことの楽しさを知った”友達”がいたことを、彼はいまも覚えてくれているでしょうか。(岡)

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