おやのことば 9月1日

初めて一人暮らしをしたのは、20代の半ばのことです。

それまでは、親元を離れた後も寮生活などを続けていて、いつも誰かがそばにいる生活をしていました。

一人で暮らすようになって最初に痛感したのは、家はただ帰って寝るためだけの場所ではない、ということです。食事を作れば、食べるだけではなくて、食器や調理用具を片づけなくてはなりません。着替えた服は洗濯し、乾かして畳んでからタンスにしまいます。ごみは決まった日に、決められた場所に出さなくてはなりません。床やテーブルは、掃除をしなければすぐに埃がたまります。

「十五才までは親の心通りの守護と聞かし、十五才以上は皆めん\の心通りや」

このような作業を怠れば、小さな部屋では、あっという間に身動きが取れない状態になってしまいます。

一人暮らしを始めてしばらく経ったある日、台所に食器がいっぱいになって、洗濯物がかごからあふれ出し、ごみ箱がいっぱいになった状態を目の当たりにして、自分がしたことながら愕然としました。それまで、いつも誰かに支えられてきたことを実感するとともに、もっと大人としての自覚を持って暮らさなくてはいけないと、深く反省したのを覚えています。

わが家の息子は、来月から一人暮らしをすることになりました。きっと彼も、家族のありがたみを痛感することでしょう。(岡)

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